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クモの糸を上る難民たち

 お釈迦様が下ろしたクモの糸を掴んだカンダタは、血の池から極楽を目指した。しかし自分の後におびただしい数の罪人が蟻のように這い上がるのを見て、「糸は俺のものだ」と叫ぶと途端に糸は切れ、地獄へと舞い戻った―▼中東やアフリカから欧州に、かつてないほどの移民が流入している。今年に入って急増し、36万人を超えた。「お前らの居場所はない」と蹴落とすか、「皆で助かろう」と手を差し伸べるのか、経済的〃楽土〃にいる先進各国が決断を迫られている▼英仏両国は2万人規模でシリア難民を受け入れると発表し、ドイツは難民受け入れのために約8千億円相当の拠出をする方針という。移民大国ブラジルもすでに2千人超を受け入れており、ビザの数では南欧を上回るなど主要な受入国の一つとなっている▼法的に受け入れ基盤が整い、経済的地盤も固い国へと難民も目指す。約17万3千人が移住を申請しているドイツには到底及ばないが、日本も5千人で世界22位と対岸の火事とはいえない状況だ。デンマークのようにお荷物の受け入れに難色を示す国も中にはある。国が器を試され、国境が揺らいでいる▼「この国に行けば生き延びられる」という一縷の望みはクモの糸だ。「平等」「博愛」といった先進国が掲げる価値が試されている。東日本大震災で世界の賛美を買った日本の「助け合い」精神は、どちらに揺れるのだろうか▼ブラジルへの日本移民は過去の出来事であるかに見られがちだが、世界情勢に目をやれば「移民」は刻下の国際門題だ。人類が極楽に向かう〃精神的進化の関門〃を通過できるか否かを、お釈迦様は蓮池のふちで静観しているに違いない。(阿)

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