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金持ちほど税金を払わないブラジル税制の現実

計算方式の変更により、富裕層Aが最大の所得配分を受けていることが明らかになったと報じる17日付エスタード紙

計算方式の変更により、富裕層Aが最大の所得配分を受けていることが明らかになったと報じる17日付エスタード紙

 「富裕層ほど税金が少ない」――という現実を17日付エスタード紙を見て改めて痛感した。最富裕層の3%が総所得の4割近くを握り、貧困層である人口の下半分が13%程度しか得ていないという▼いわくブラジル人口の3・6%の富裕なA層(月収1万4695レアル以上)が総所得の37・4%を得ている。B層(4720レ以上~A層未満)は人口の15%で総所得の26・5%、C層(1957レ以上でB層未満)は人口の28%で総所得の22・6%、D/E層(1957レ~C層未満)は人口の53・5%を占めるが13・6%のみだ▼15年2月24日付iGサイトのロドリゴ・デ・アルメイダのコラム「なぜ金持ちは貧乏人より税金が少ないのか?」はその仕組みを説明している。ブラジル税収の半分は直接税であるIPI(工業製品税)とICMS(商品流通サービス税)が占めている。これは同じ冷蔵庫を買った場合、金持ちでも貧乏人でも同じ税金を払うから、格差是正に役立たないし、むしろ金持ちに有利だ▼先進国のように累進課税が徹底していれば、金持ちほど多く負担するはずの所得税。当地の場合は2最低給までの労働者が全所得税の54%を負担しており、30最低給以上のものは29%しか負担していないのはイビツだ。特に不可解なのは、所得が4664レ以上の場合、所得税率が一律に27・5%になっている点だ▼14年3月14日付BBCブラジルの記事《G20の大半の国より、ブラジルは金持ちに課税していない》によれば、ブラジルは月収5万レの場合は26%が税金にとられるが、G20の他の国では平均32・5%。イタリアは中の上や富裕層の所得の半分が税金でもっていかれ、インド、英国、南アでも40%だと報じる▼ブラジルの所得税でもう一つおかしな点は、免税金額の調整がインフレに連動していないことだ。所得が下がるほど税率は小さくなり、1904レ未満は免税になる。でも常にインフレよりも小幅の調整しかしない▼国税庁会計士協会(Unafisco)サイト1月11日付記事よれば、1996年から2015年の20年間

国税庁会計士協会サイトにある「高インフレで所得税率のユガミがひどくなったきた」と報じる記事

国税庁会計士協会サイトにある「高インフレで所得税率のユガミがひどくなったきた」と報じる記事

でインフレは260%も上昇したが、所得税の課税調整は109%のみ。その分、より貧困な層まで払わされるようになり、金持ちは少ない税率で済む▼しかも今、連邦政府は小切手税(CPMF)復活をもくろんでいる。「違法だ」という法学者もいるぐらいひどい税金だ。一つの財源からの収税は一度が常識だが、小切手税の場合は違う。貧乏人も金持ちも同じように取られ、しかも何度も徴税される。企業が労働者に給与を振り込めば、その時点で1回目。労働者が自分の口座から引き出せば2回目、何かをカードや小切手で買えば3回目という具合に何度でも重複して徴収される。しかも議会で承認を受けていないのに、本年度予算にはその収入が計上されているのもおかしい▼PT政権はボウサ・ファミリアやミーニャ・カーザなどの社会福祉政策で貧困層を優遇して格差是正を進めてきたが、本来なら同時にやるべき「富裕層への増税」には踏み込まなかった。先進国に比べて、べらぼうに格安な相続税もしかり。今の税制なら、貧乏人から税金をしぼり上げて貧困層に還元しているだけ。これで本当の意味の格差是正になるのか。(深)

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