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ブラジルの基本金利は分水嶺を超えたか?

基本金利の動向を報じる記事(http://cooperativismodecredito.coop.br/より)

基本金利の動向を報じる記事(http://cooperativismodecredito.coop.br/より)

 ブラジルと日本は地理的以外にも、国民性を含めて色々な点で両極端な存在であることは、当地在住者なら日々痛感している。経済の面でそれが一番顕著なのは「金利」だ。この1月、日本はマイナス金利を発表して世界を驚かせ、ブラジルのSelic(基本金利)は世界最高水準の14・25%を維持した▼「安い金利で借りて高金利で運用する」のが金融の常識だから、日本で調達した資金を、危険性を伴うが高利回りのブラジル国債で運用する向きも多い。三京証券サイトのブラジル国内債の頁には《日本の個人投資家は概算で1兆円(日本円換算)程度を保有》と書いてある▼ブラジル国債の売れ具合は、1月4日付ブラジル通信が《中銀は400億レアル分の国債を発行したと財務省に通知した》と報じた記事からも分かる。《中銀は金利を上げる時は国債を売り出し、下げる時は逆に国債を買い上げて市場に出回る通過量を減らす調整をする》と書かれている。昨年はインフレ率11%超で、年頭に国債を大量発行したから、この時点で金融市場は利上げを期待していた▼ところが「金利を上げすぎると不景気が深刻化する」との連邦政府の圧力に中銀が屈し、1月の通貨政策委員会で金利維持が決まったと報道された。これは〃政府〃というよりはブラデスコ銀行のトラブッコ社長らが昨年8月から《今のブラジルの経済危機は、経済的理由より政治的だ》と公に発言しながら批判してきた点でもある。同社長は14年末に財相就任を懇請されたが断り、代わりに専務レヴィを送り込んだ人物だ▼1月22日付エスタード通信によれば昨年、ブラジル人家庭で借金があるのは61・1%で、14年の61・9%よりわずかに減った。全家庭の6割超が借金というのは銀行には絶好のビジネス環境だ。だが借金を返す見込みが立たない人は6・3%(14年)から7・7%に増えた。返せない人がクレジットカード等の底なし沼に沈み始めた。返せないなら貸したくない―その段階が昨年始まっていた▼1月22日付エザメ誌電子版は、世界の政財界リーダーが集うダヴォス会議で、トラブッコ社長は金利維持に関し《中銀の判断はバランスが取れている》と珍しく評価した。28日付ヴァロル紙電子版によれば、鳴り物入りの経済社会開発審議会で最初に発言したのは、やはりトラブッコ社長で《不況では皆が損失をかぶる》と昨年の財政政策を批判した▼ところが同日同紙の別ニュースは、同行はそんな15年第4四半期にも関わらず40億レアル以上の利益を上げた。前年同期比9%増だ。金利上昇は銀行にとって利益率を上げる好条件だが、上がり過ぎると金を借りる人がいなくなり、返せなくなる人が増える。今はその最終段階の状況だ▼元中銀広報タイス・ヘレージア氏がG1サイトのブログに、ブラデスコのエコノミストが今後の通貨政策委員会の動向を予測し、顧客企業幹部向けの特別レポートに《中銀は今後金利を下げ基調。6カ月以内にそれが現れ、年末には13・25%周辺まで下がる予測》と書いた▼このブログは1月31日朝閲覧したが、その日の午後には削除された。専務を財相に〃出向〃させるぐらいの金融機関だから、内部事情には詳しいのだろう。この高インフレ下で本当に下げ基調に入るなら、経済の分水嶺であり、様々な点に影響が出るだろう。(深)

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