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大統領弾劾に王手、その次は?

下院本会議場で17日、大統領罷免投票をする様子(Foto: Nilson Bastian/Camara dos Deputados)

下院本会議場で17日、大統領罷免投票をする様子(Foto: Nilson Bastian/Camara dos Deputados)

 4月17日はブラジルの歴史に残る日となった。2度目の大統領弾劾に王手を指したからだ。パウリスタ大通りにも弾劾支持者25万人が押し掛けて、連邦議会の投票を見守った。暴力的な事件は起きず、「ブラジルの民主主義の成熟」を感じさせる一日になった▼100万人とも言われる3月13日に比べれば、今回は〃大人しい〃もの。集まっている人にも、すでに「勝負はついた」という落ち着いた感じ。今までの抗議行動に比べると、演説の内容やプラカードにもトゲが少なかった。下院の投票を「見守るためにきた」という雰囲気が濃厚な感じだった。もちろん日系3連邦下議はしっかりと罷免賛成に投票した▼それにしても500人あまりの下議たちは、一生に一度の大舞台、ほぼ全テレビ局とラジオが生中継していることを意識して、投票時の10秒演説で、ここぞとばかりに家族の名前を列挙して感謝していたのを聞き、心底ガッカリした。「あんたたちは家族を代表して議会に出ているのか。有権者のことはどうでもいいのか」と▼今後、大統領罷免請求の最大の問題は、一気に動きが遅くなることだ。下院ではクーニャ議長の指揮下、土日週末もない24時間〃突貫工事〃で審議が進められた。まるで余命1カ月と医者に宣告された人が、生き急ぐかのような急ぎ具合だった▼でも上院はまったく違う。クーニャ下院議長から罷免請求報告書が18日にレナン上院議長に渡される。その先、上院特別委員会が組織され、これを受理するかどうかの投票が5月10、11日頃行われる予定。受理されれば、ジウマ大統領は「180日間の一時離職」となり、テーメル副大統領が昇格する。つまり、それまでの3週間、ジウマは連邦議会から致命的に突き放され、首都は政治的に機能停止に陥る。たった1日で世界経済が激変することもありえる現在、3週間も権力不在というか、中途半端な状態が続くのはいかがなものか▼クーニャ氏は17日夜の投票のすぐあと、《上院で決議するのが遅れれば遅れるほど、状況は悪化する。マキナ(政治機構)は明日(18日)から停止する。だから、結果がどうであれ、最大限の素早さでこのプロセスの結論を出すことが何より大事だ。我々はそれを果たした》とアジェンシア・ブラジル(18日付電子版)にコメントした▼同電子版によれば、クーニャ氏はさらに《ブラジルはさまざまな難関にぶち当たり、大統領はしばらく前から政権の運営能力を失っていた。(罷免反対の)票を買うために役職を〃大売出し〃する試みなどは、(威信が)地の底に落ちたことを示している。今、ブラジルは底から這い上がらなければならない。この状況を政治的に素早く解決する必要がある》と警告している▼工事が遅れに遅れているリオ五輪前の大事な3週間。首都が機能不全のまま過ぎ去ることで、どんな悪影響が起きるのか――。昨年1月からスポーツ大臣だったジョルジ・ヒルトンは、所属するブラジル共和党(PRB)が与党離脱した3月末に辞任した。それを受け、一度の下議経験もない若干44歳のリカルド・レイセル(ブラジル共産党)が〃大売出し〃で急きょ就任した▼この罷免請求が上院で受理されれば政権が変わり、別のスポーツ大臣が誕生する。つまり、リオ五輪時の責任者が誰だか、それまで分からない。日曜の投票時、リオ五輪の準備状況を心配する演説はほぼ皆無だった。これで本当に大丈夫だろうか…。(深)

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