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共感と反発、複雑な反応=映画『Silencio roto. 16 Nikkeis』=失踪者は「殉教者か、犯罪者か」

アドリアノ・ジオゴ氏と大城エウザさん

アドリアノ・ジオゴ氏と大城エウザさん

 アルゼンチン軍事独裁政権時代(1976~82年)に政治活動をしていて「失踪」した日系人16人を描いたドキュメンタリー映画『Silencio roto. 16 Nikkeis(破られた沈黙 16人の日系人)』(パブロ・モヤマ監督、スペイン語、2015年)が14日夜、サンパウロ市の沖縄県人会で上映された。「失踪」した16人の大半が沖縄系だったこともあり、約40人が集まった。当日は「日系亜人失踪者家族会」の大城エウザさん(二世、62)と観客の間で熱心な質疑応答も行われた。

 上映会の最初に、与那嶺信次元県人会会長は「ブラジルの日系人にも軍政に殺されたり、行方不明になったものが十何人もいる。この映画で語られていることは決して他人ごとではない」と共感を寄せた。
 映画は、失踪者家族会の会議の様子から始まり、息子がなぜ政治活動に入っていったか、失踪した空白を家族はどう感じているのかが淡々と語られていく。失踪者の多くは18~20歳過ぎ。中には妊娠8カ月で警察に連行された女性も。
 「失踪に触れるたびに母の悲しみがぶり返すから、家族はもうそのことを話さなくなっている」「兄は突然連れて行かれた。貧困問題などに心を痛め、ゲバラに感化されただけなのに。何が起こっているのか、当時誰にも分からなかった」

複雑な反応を見せた観客の皆さん

複雑な反応を見せた観客の皆さん

 「兄は人様に恥ずかしいことをしたのか、兄は犯罪者だったのか。そんな雰囲気があった。だから誰にもしゃべらなかった。この会ができて初めて痛みを分かち合えるようになった」。そんな痛々しいコメントが次々に映画の中で語られた。
 上映会の後の質疑応答では、「アルゼンチンの日系社会では、軍政時代に政府に殺された政治活動家はどう思われているんだ? 彼らは殉教者か、それとも犯罪者か? 何を目的にこの活動をしているのだ。賠償金か謝罪か」などと厳しい質問も飛び出た。
 冒頭の質問に関し、大城さんの隣に座ったアドリアノ・ジオゴ氏(サンパウロ州真実究明委員会委員長)は「私が代わりにこたえる」と割って入り、「彼女たちは賠償金を求めて活動しているのではない。ただジュスチッサ(正義、正当な罰)が欲しいだけだ。人権侵害にはそれに相応しい刑罰を」とのべた。
 亜国全体で失踪者は3万人にのぼる。多くは「死の飛行」によって、飛行機に載せられラプラタ河上空から投げ捨てられたと言われ、死体も出てこない。日系は氷山の一角に過ぎない。
 若い女性の観客からは「とても考えさせられた。これは政治目的の映画ではなく、人間の姿を描いたドキュメンタリーだと思う」との意見も。翌15日、フレイカネカショッピング・センター内映画館の上映会には250人が集まった。

らぷらた報知=映画『Silencio Roto – 16 nikkeis』を見て=軍政に殺された16人の日系人=当時学生だった者の所感=アルゼンチン 生垣 彬
https://www.nikkeyshimbun.jp/2015/150507-61colonia.html


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 民主主義の時代に日系大臣はごく珍しいが、軍政時代の21年間に3人も重用されるなど、実は日系人と〝相性〟が良い部分がある。反政府活動をしていた日系活動家に関する評価も、保守的な空気が強いコロニア内では、今でも議論が分かれる。だから被害者家族に対して「失踪者は殉教者か、犯罪者か」という厳しい質問まで飛び出た。ブラジルでも警官隊との撃ちあいで死んだフランシスコ・セイコ・オクマ、3週間の拷問の末に殺された平田スイス、アラグアイアで殺されたとみられるスエリ―など当時の邦字紙では「テロリスト」として扱われていた。冷静な歴史の見直しが必要な時代のようだ。

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