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抗議の〝火力〟は種火から弱火にアップ

パウリスタ大通りを埋めた参加者。どう見ても「1万5千人」には見えない

パウリスタ大通りを埋めた参加者。どう見ても「1万5千人」には見えない

 「レナン、辞めろ!」「次はお前だ、レナン」―4日の聖市パウリスタ大通りの抗議行動で最も標的とされていたのは、文句なしにレナン上院議長だった。その次に多いメッセージは「ラヴァ・ジャット作戦のモーロ判事やデルタン連邦検察官を徹底的に応援する」というもの。レナンの次に攻撃されていたのはマイア下院議長、ルーラもまだ存在感を残していた。ただし前回までの主役だったジウマ、クーニャは完全に姿を消した▼ここで分かったのは、まだテメルを標的にした批判は少なく、今の流動化した事態をなんとか彼に治めてほしいという期待が残っている―ことだ。でも事態が悪化して、テメルのコントロールが完全に効かない状態になった時は、テメル罷免を訴える段階になるだろう▼一番多く集まっていたMASP横の街宣車は「Vem Pra Rua」。写真を撮ろうとその上に登った時は、両側500メートルは完全に人で埋まって見え、「これは久々の人出だ」と確信した。軍警の1万5千人は何かの間違いとしか思えない。主催者団体発表の20万人が大目だとすれば、15万人ぐらいが実際ではないか。前回7月31日のデモの時は、今回よりもはるかに少なかった。でもジウマ罷免直前という緊迫感があり、人数こそ少なかったが志が熱い少数精鋭の雰囲気が漂っていた。今回はもっと家族連れの一般化した雰囲気になっており、その分、冷静に呼びかける感じだ▼前回が〝種火〟状態だったのに比べると、今回は〝弱火〟ぐらいだ。〝強火〟だったのは、最も多かった3月13日の140万人(パウリスタ大通り周辺、軍警発表)だろう▼ちなみに日本で「史上空前の市民の抗議行動」といわれているのは、1960年6月15日に起きた「60年安保」デモだ。国会周辺を埋めたデモ隊の数は主催者発表で33万人、警視庁発表で13万人だった。あの日本で33万人集まるというのは、国民性から考えれば、ブラジルの140万人に匹敵する勢いだろう。ここ2、3年で、この種の一般市民参加型の意思表示が、政治家への直接的な不満感の表明として定着してきた。しかもその呼びかけはインターネットを通して行なわれ、メディアは通らない。この「街頭の声」が政治家にとっては最も怖い存在になってきた▼でも、けっして危険な雰囲気はない。基本的に家族連れで、黄色や緑のTシャツを着て、ブラジル国旗をマントの様につけている人が多い。犬の散歩を兼ねて参加する人、付近のショッピングセンターのレストラン街までがそんな格好の人でいっぱいだ▼今回、街宣車の数が少な目で、呼びかけ団体が少なかったのに対して、「軍事介入(クーデター)」擁護派の街宣車が2台も出ていたのは不気味な感じを覚えた。やはり、南米には軍部を〝最後の守護神〟と信奉する勢力が一定数いるのだ▼実際、今回の流動化が最悪の状態までいったら、それしかない。連邦議会が「街頭の声」を無視して次々に司法厳罰法案を通し、ラヴァ・ジャット作戦を妨害。司法は反発して感情的になり、大統領はそれをコントロールする力がない状態になったら…。しかも、さらに財政が悪化して失業率もどんどん上がり、インフレ再燃、経済成長率はさらに下降という最悪状態になった時には、軍部が出動して「今の憲法では国を統治できない。新しい憲法を作りなおすまで軍政を敷いて出直し」となるのが〝切り札〟だと一部の人は考えている▼想像したくはないが、ヴェネズエラぐらいの国ならまだしも、世界第9位の経済大国ブラジルがそれをやったら、どうなるのだろう…。(深)

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