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「無効と間接選挙」=ポルト・アレグレ在住 杉村士朗

2015年8月当時のジウマ氏(右)とテメル氏(Lula Marques/AGPT)

2015年8月当時のジウマ氏(右)とテメル氏(Lula Marques/AGPT)

 3月9日付リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレ市発行の日刊紙「ゼロ・オーラ」の寄稿頁欄に「無効と間接選挙」と題された弁護士・選挙法教授アントニオ・アウグスト・マイエル・ドス・サントス氏の寄稿文が掲載された。
 我々の正しいブラジル理解への一助として、その仮訳を紹介したい。

 よく知られているように、2014年大統領選挙で当選した正副大統領は厳しい異議申立の対象となっており、選挙高等裁判所が当選を無効にすることがあるかしれない。
 現在、同裁判所では、ブラジル社会民主党(PSDB)が、ジウマ・ルセフとミシェル・テメルを相手に起こした①選挙司法捜査請求訴訟、②当選無効請求訴訟を審理中である。
 実質的には、両訴訟とも刑事上の行為を問わない、選挙民事訴訟である。罰則として、①の訴訟では、正副大統領職と被選挙権資格の喪失、②の訴訟では、たんなる正副大統領職の喪失が規定されている。いずれも同裁判所で確定された判例に根拠する。
 法理上、ジウマが大統領を罷免され、テメルが大統領に就任した事実は、裁判継続を妨げない。
 しかしながら一部裁判官は、特殊事情(大統領罷免)によって正副大統領選挙一括候補者名簿(シャッパ)が不存在となった今、なお審理を進めることが可能か否か異論を唱えるかもしれない。もう一つの重要な争点は、選挙運動資金に関する個別化についてである。
 これまで同裁判所は一貫して一括候補者名簿は唯一であり、分離不可能との見解を保持してきた。
 だが、争点を見直し、大統領選挙運動資金総額のうち、正副別の選挙運動資金比率を測定し、2人の行為を個別に評価するかもしれない。
 また、次のような裁判結果も想定される。
<1>1件が有罪、他の1件が無罪。
<2>2件とも有罪、ないしは無罪。
<3>ジウマとテメルの2人とも無罪。
<4>2人のうちどちらか1人が無罪。結局のところ、大統領選挙運動では、2人は各自独立している。
 選挙無効の場合、同裁判所は、ミシェル・テメルの大統領離任と追加選挙召集のため、下院議長の大統領就任を決定する。ないしは、偶発的上訴を連邦最高裁判所が判断するまで、テメル大統領の留任を決定する。
 もし、新たな大統領選挙が開始される場合には、国会による間接選挙が行われる。
 しかしながら、ひとつの危険な細目が存在する。それは間接選挙を律する法を、国が有していない事実である。
 これまで国会は、間接選挙を施行する法案について一度も論議したことはないし、ましてや、採決を行ったことなどない。
 一例を挙げれば、誰が大統領候補者になれ、誰が候補者になれないのか、誰にもわからない。「国会議員のみなのか?」「元大統領なのか?」「誰でもか?」
 国会のこのような怠慢は、詭弁が通用するリスクを発生可能にする。マクナイーマの国の無用物捨て場へ置き去りにされた法例の、さらなるひとつである。

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