ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》サマルコ社鉱滓ダム崩壊事故裁判=15年発生の未曾有の環境破壊事故で刑事訴訟手続き中断=証拠に不正有りと弁護団=被害者側は司法に憤慨

《ブラジル》サマルコ社鉱滓ダム崩壊事故裁判=15年発生の未曾有の環境破壊事故で刑事訴訟手続き中断=証拠に不正有りと弁護団=被害者側は司法に憤慨

鉱滓ダム決壊事故で荒廃したベント・ロドリゲス地区(Flávio Ribeiro/Portal VERTICES)

鉱滓ダム決壊事故で荒廃したベント・ロドリゲス地区(Flávio Ribeiro/Portal VERTICES)

 ミナス州ポンテ・ノーヴァ市の連邦地裁は7日、2015年11月5日に発生した、ミナス州マリアナ市の鉱山採掘会社サマルコ社の鉱滓ダム決壊事故に関する刑事訴訟手続きを中断したと、8日付現地各紙が報じた。
 サマルコ社の鉱滓ダム決壊事故はブラジル史上最大の環境破壊事故で、19人の死者を出した上に、近隣地域は泥に埋もれた。有害物質も含む大量の汚泥はドッセ川にも流れ込み、同川流域はおろか、河口から大西洋にまで達した。
 検察は、サマルコ社やサマルコ社の親会社のVale社とBHPビリトン社の幹部ら21人を、殺人容疑、洪水、建物の倒壊を引き起こした容疑、多数の被害者に重症を追わせた容疑(全て「未必の故意」による加重量刑付き)で、Vog―BR社とその技師1人をダム強度検査証偽造容疑で告発した。また、先の21人はサマルコ社、Vale社、BHP社と共に環境破壊罪でも告発されている。
 この告発は昨年11月18日に受理され、刑事訴訟が始まった。だが、事故当時のサマルコ社社長リカルド・ヴェスコーヴィ被告と、サマルコ社元幹部クレーベル・テーラ被告の弁護士は、検察が告発のベースとした電話の通話記録と音声データ、メールの中には、司法が許可した期間以外のものがあると主張。ジャッキス・フェレイラ判事はその主張を採用し、刑事訴訟を中断した。
 今回の刑事訴訟中断の決定は、汚染された環境の回復と、被害者への補償などを扱う民事訴訟には影響しない。
 検察側は、「弁護側の主張する『司法が許可した期間を超えた範囲の容疑者たちの通話記録』は、告発の証拠として採用してさえいない。よって刑事訴訟手続きの中断は正当ではない」と主張している。
 検察は電話会社に対し、電話会社はいつの容疑者たちの通話を検察に公開したのか、明らかにするように求めた。
 フェレイラ判事は検察の要請を受け入れたが、結果次第で、告発の根拠そのものが揺らぐ可能性があるため、刑事訴訟手続きは中断されなければならないとした。
 今回の刑事訴訟手続き中断の決定は、企業の責任追及を求める活動家や、事故の被害者たちを大いに憤慨させた。
 全国でダム被害者運動(MAB)を展開しているジョセリー・アンドリオリ氏は、「司法は国民を小馬鹿にしている。司法が全く機能していないことには驚愕させられ通しだ。司法は近年、大企業が犯す環境的、または社会的犯罪に非常に甘い傾向がある」と憤慨。検察側の証拠は被告断罪に十分なはずで、「事故再発を防ぐためにも裁判再開を望む」とも語った。

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