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《ブラジル》日本文化の継承・普及の戦略立案を=《中》

大半を非日系人が占める200人以上が毎回つめかけたブラジル漫画協会の日本史講座(ポ語)

大半を非日系人が占める200人以上が毎回つめかけたブラジル漫画協会の日本史講座(ポ語)

 日本文化の継承・普及戦略の粗筋を考えるにあたって、日本に関するポ語情報をSNSやインターネット、書籍などの形で大量にばら撒いて若い世代を幅広く惹きつけるのを「序」(空中戦)、ジャパン・ハウスや日本語学校、日本文化講座などの施設で実際に対面しながら学んでもらうのを「破」(地上戦)、ある程度日本文化を学んだ新世代が〃援軍〃となって普及する側に回ってもらうことを「急」最終段階にたとえることは前回説明した。
 もちろん、あくまで比喩だ。
 たとえば米軍の戦略を見ると、まずはミサイルや飛行機による爆撃による「空中戦」で相手国の軍事施設に大きなダメージを与え、すかさず土地勘のある現地国の軍隊と連携した地上部隊が制圧する「地上戦」という手順で、徐々に支配地域を広めている。
 その後、現地国の有能な人材を活かして、民主的な方向性を固定させる後方からの政策をおこなっている。この段階までくれば、その方向性にあった人材が再生産され、時間と共にその傾向が強まる循環が起きるよう意図している。
 日本文化の継承・普及もそのように、各段階でどの団体がどんな役割を担って行くのかを体系的に考えられれば最高だ。
 その方法論に倣ってみると、日本文化普及における「空中戦」というのは、日本文化に関するポ語ニュースや情報をインターネットやSNSなどを通して大量投下することだ。そこで興味を持った人々がさらに詳しく知りたくなったら、日本について書いたポ語の本や雑誌を読む。
 現在最大の問題は、この段階の日本文化や歴史に関するポ語文献が圧倒的に足りないことだ。ここの部分を徹底的に補強する必要がある。
 移民史料館は、基本的な移民史文献のポ語翻訳をどんどん刊行してほしいし、ジャパン・ハウスや外務省、国際交流基金はもっと日本関係の文献の翻訳出版に積極的に助成するべきだろう。毎年30冊ぐらいは刊行されてもいい。
 できれば、日本文化関係の「雑誌」の発行も必要だ。とっつきやすい内容、軽い内容を載せるサイトやブログなどももっと必要だ。そのような媒体が始まったら、日本企業は広告などで積極的に支援してほしい。
 本紙もおよばずながら、バンリンガル本『日本文化』を6巻まで刊行し、同時並行でフェイスブックによる拡散、e―book化、アマゾン販売などを続々と進行させている。これは「空中戦」の一助のためだ。いろいろな出版社、企業、団体が「空中戦」に〃援軍機〃を飛ばしてくれれば心強い。
 知ることで、次は体験したくなる。そこから先が「地上戦」だ。これには2種類ある。局地的な「ゲリラ戦(機動戦)」と、本格的な「陣地戦」だ。
 日本祭り、花祭り、盆踊り、灯ろう流し、柿祭りなどの日系イベントは、一時的な「機動戦」だ。そこで日本文化に興味をもち、より深く知りたくなった人には「陣地戦」(常設施設)へ向ってもらう。
 たとえばリベルダーデの日系商店、日本食レストラン、日伯文化連盟や各日本語学校、茶道教室、生け花教室、日本舞踊教室、漫画アニメ教室などだ。
 ジャパン・ハウスは爆発的な動員力を持つだけに、この二つにまたがった地上戦の〃主砲〃だ。日文連のピニェイロス文化センターと共に、今年を象徴する画期的な施設であり、ブラジル人向けの発信拠点として大いに活躍が期待される。
 地方部においても、各地文協に一肌脱いでもらい、地域の若い日系人やブラジル人向けの文化講座、たとえば日本料理教室などを開設してほしい。
 宮村秀光さんの講座『日系ブラジル人から見た日本史』(ポ語)は突っ込んだ内容だと定評があるし、ブラジル漫画協会(Abrademi、佐藤フランシスコ紀行会長)の『日本の歴史』全10回連続講演会(ポ語)の取組みも素晴らしい。後者にはなんと平均200人以上が学ぶ。この手のポ語による取組みがどんどん広がると将来は明るい。
 つまり、この「地上戦」の部分はすでにかなり充実した陣容が揃っている。
 目下の問題は「空中戦」で投下する日本に関するポ語情報が圧倒的に足りない点だ。110周年の機会に日系主要団体は、この部分を意識しながら記念事業を計画してほしい。(つづく、深)

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