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《ブラジル》自然と繋がる神職者=沖縄伝統のかみんちゅ=「あなたを探しに来た」=石を通して神と対話

長浜さん

長浜さん

 沖縄県伝統の神職者「かみんちゅ(神人)」がサンパウロ市で活動している。2000年に沖縄県の神人に呼ばれ、修行を積んだ長浜ベアトリスさん(49、三世)だ。現在はブラジルをはじめペルーやボリビアなど他南米諸国の人々に「拝み」のやり方を教えたり、人生相談を受けている。

 長浜さんは神人になる以前、家族と共に子供服専門店を経営していた。そこに沖縄の神人が「あなたを探しに来た」と突然単身でブラジルに渡ってきたという。長浜さんと家族は驚きつつも納得してしまったそうだ。
 生まれた頃から誰もいない場所を「誰かいる」と指差したり、理由もなく突発的に怒り、泣き出す長浜さんに手を焼いていた母は、様々な宗教団体の祈祷師の元に連れて行った。ほとんどの祈祷師が「この子供には神への道がある」と長浜さんを診断したそうだ。
 神職者に関する知識がなく、困り果てた母親は「普通の子になるように」とカトリックの教会に通わせた。
 年を重ねるごとに原因不明の行動が少なくなり、仕事、結婚と順調に人生を歩んでいった。でも、親族や知人の体調不良を言い当てるなどの能力は健在だったそう。「神からの影響はいつでもあったさね」と長浜さんはふり返る。
 長浜さんが「先生」と呼ぶ神人に呼ばれた後、二人一緒に沖縄県に渡り聖地訪問や先生のウガン(拝み、御願い)に同行して経験を積んだ。
 長浜さんが一度、ユタと神人の違いがわからず『ユタ』を自称した際、先生に『あなたはユタではなく神人だ』と叱られた。「ユタ」と「神人」が一緒にされることがあるが「ユタは霊媒師、神人は神職者」と中身は全く違うらしい。
 「ユタ」を自称する人には霊能力を持たないのに仕事を受け、多額の報酬を受け取る詐欺を働くケースもあり、扱いが難しい話題らしい。「本物は報酬を要求せず、客からのお布施で活動をしている」とのこと。
 長浜さんが仕事で使用する仏壇には、沖縄県で購入した丸鏡やペルー、ブラジルなど日本国外の天然石が置かれている。「さんみん」(神との対話)を行うために鏡や天然石などを通して各地の神と繋がり、彼らの声を聞くことがあるそうだ。
 例えば「急に体調や気分が優れなくなった」という人が長浜さんを訪ねて来たことがある。さんみんを行うと、その人はカランジル区(かつて南米最大の凶悪犯向け刑務所があった場所)を訪問した際、同地の「悪いエネルギー」を持って帰っていたことがわかった。
 長浜さんは「たくさんの血が沁みこんだ土地には悪いエネルギーがある。時間が経ちそのエネルギーが落ち着いてくる場合もあるが、悪いエネルギーを磁石のように取り込んでしまう人もいる」と説明した。
 長浜さんによるとそれぞれの土地や国に神がいる。「各個人だけじゃなく自然の中、国の神もいる。その土地に行けば神様の顔やパワーが伝わる」と説明した。
 日本とブラジルの神様の特徴について尋ねると「戦争や天災を経験している日本の神様は厳しい。歴史的にも正反対のブラジルの神は大らかで静か」と特徴を比べた。
 長浜さんはブラジル人の環境や人に対する軽率な考えや行動が目立つことに触れ、歴史の浅さを理由として挙げた。「祖先や自然を尊重することが少ないのが原因。自然をはじめあらゆる神と対話する神職者として、人々の人生を示し自然や祖先崇拝の重要性を伝えていきたい」と神人としての役割を語った。


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 長浜さんによると、沖縄県では家の入り口の側に仏壇を置くが、ブラジルの沖縄県系民は家の奥に仏壇を設置するそうだ。日本人が移民した当時カトリックの布教が熱心に行われ、仏壇は「異教徒のもの」と受け入れられなかった。また、戦争時に日本のものが禁止された時には、仏壇を隠すため家の奥に仕舞った。こういった歴史から、ブラジル沖縄県系民への文化の伝わり方は少々変っているそう。長浜さんは「仏壇購入」や「拝み」をしようとしてもその方法や目的を知らない沖縄県系日系人が多い。長浜さんは自身のブログで沖縄の文化や風習をポ語で紹介している。興味がある人はブログ(okinawaspiritual.blogspot.com.br)まで。

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