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引っ張るのなら足ではなく手を

 昨年9月のカヌー・スプリント日本選手権で、優勝した小松正治選手がドーピング検査で陽性となって優勝を取り消された事件で、先輩の鈴木康大選手が小松選手の飲み物に薬物を入れた事が判明と、9日に日本カヌー連盟が発表した。小松選手は「自分は薬物なぞ使っていない」と訴え、鈴木選手にも泣きながら相談したというが、その後の調べで、ライバルを陥れようとのスポーツ選手にあるまじき行為があった事が明らかになったのだ▼残念だが、自分より優れた成績を上げたり、成功したりした人を妬み、陥れようとする行為は、相手を助けて高みに上るのを支援しようとする行為よりはるかに多い。ブラジルに住む日本人の間でも、友人や知人が土地や家を買ったとか、事業で成功したという話を聞いた途端、背中を向けるようになったり、成功者の陰口を言いふらし始めたりという話を聞いた事がある▼ブラジルの選挙戦もまた然りで、相手の悪口や批判に終始する討論会には辟易する。「足の引っ張り合い」は本人の印象も悪くするが、先の事件絡みの報道では、鈴木選手は7年位前から他の選手の道具を盗んだりしており、その頃から成績が落ちていたという記事まであった▼相手を陥れる工夫をする時間があれば、練習したり、より優れた対策を練ったりする時間だってあるはずだし、共に高みを目指す事も出来たはず。こう書けば「きれい事過ぎる」と批判される可能性もあるが、相手が倒れたら手を差し伸べて立たせるのが本当のスポーツマン精神ではないだろうか。今年はW杯や統一選挙もある。スポーツに限らず、足を引っ張り合う姿でなく、手を差し伸べあう姿を見たいものだ。(み)

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