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どうなる?! 大統領選挙=ルーラ有罪で政局はどう動く=親ガメこければ小ガメも?=橘かおる

 ルーラ元大統領に二審裁判所(TRF―4)から有罪の判決が下りました。この審判は政治関係者だけでなく、全国民が注目していました。そこで、3裁判官全員一致で一審(クリチバ)の判決よりも重い12年1カ月の刑が下されたので、「やっぱりブラジルの裁判所は正しい判断をしてくれた」と多くの人たちは賛同の拍手を送りました。さて、この判決を受けて、ブラジルの政局は今後どう動くのでしょうか?

★(1)PT(労働者党)内の予想される動き
★(2)他党の動きとその背景――という二つ分けて拙速ですが調べてみましょう。
 なお、このレポートは前回、本紙1月17日5面掲載の大統領選記事の続き、補完するものとなります。

▼汚職政治家には鉄槌

 第二審(TRF―4)の有罪判決はルーラおよび100人以上と言われる脛に傷持つ政治家には大打撃です。
 ルーラ弁護団は直ちに声明を発表し、「これは皆検察側のデッチアゲだ。ルーラやPTを政界から締め出そうとする奴らの策謀じゃないか。何の証拠も無いのに有罪だと決め付けている」と全面反発しています。
 現在検察の捜査を受けている汚職政治家(容疑者)達は、「これまでは親分と数を頼りに何とか罪を逃れようと動いて来たが、『親ガメこければ子ガメもこける』だ。今は頼る親分に鉄槌が下され『どうしたものか?』と思案投げ首」というところでしょう。
 今日現在、ルーラは有罪でフィッシャ・リンパ法により選挙に立候補は出来ません。ですが、何とかこれを覆そうと上級裁判所に『判決不服』の上告をし、少なくとも刑の執行を遅らせる動きをするでしょう。
 更にまた、この様な国内手続きのほか、ルーラ側は国連などの海外の機関にまで判決の不当を訴えるとしております。あれがダメならこの手があるさ、日本人にはない発想の豊かさには全く感心(?)させられますね。
 ただね、国連などの海外機関が声明などを出したところで、これでブラジル国内の決定を覆す効力はないこと、皆様先刻ご承知のところです。

▼それでもルーラで行くPT

「ルーラの替え玉」とも噂されるアダジ元サンパウロ市長(By Henrique Boney, via Wikimedia Commons)

「ルーラの替え玉」とも噂されるアダジ元サンパウロ市長(By Henrique Boney, via Wikimedia Commons)

 「では大統領候補をどうするか?」という点ですが、PT(労働者党)では引き続きルーラを前面に押し立てて選挙準備運動を続けます。世論調査などで衰えてないルーラの人気を活かし、一般労働者層、庶民階層の支持結束を固めたいのでしょう。
 でも、最終的にまた、法的にルーラの立候補が不可能になった場合をも想定して代案も考えています。
 それは前、サンパウロ市長だったアダッジ(FERNANDO HADDAD)をルーラの代わりに立て、選挙戦を戦うのです。この方針の下、ルーラが選挙区各地を回って政治活動をする間、アダッジも常に同行し、演壇にも立って、その名前と顔を売り込むのです。
 アダッジは55歳、サンパウロ市長や大臣の経験もあり、若くて学識もありますから、新生PTのカンバンに立てるには打ってつけだ、とも言えそうです。

シーロ・ゴメス候補(By Roosewelt Pinheiro/ABr (Agencia Brasil), via Wikimedia Commons)

シーロ・ゴメス候補(By Roosewelt Pinheiro/ABr (Agencia Brasil), via Wikimedia Commons)

 ただ、アダッヂは連邦級の政治駆け引きには経験が不十分で、海千山千の他の中小政党を自陣に引き込み、支持を取り付けるには困難も予想されます。その場合には政界に顔も利き、バイア州知事の実績もある老練ワグネル(JAQUES WAGNER)を起用する代案も囁かれています。
 この様にPT(労働者党)はルーラ本命で運動する方針ですが、これには大きな懸念材料もあります。それは裁判所が有罪人ルーラを直ちに収監する(刑務所に収容する)場合です。
 こうなったら人寄せカンバンのルーラが直接運動出来なくなり、方針の実現が出来ません。公党がどこかの組織の様に『刑務所の中から指揮を採る』訳にもいかず、やはり、代役の登板を早めるしか方策はないでしょうね。

▼敵の失点・味方の得点

ジャッキス・ワギネル候補(By Senado Federal, via Wikimedia Commons)

ジャッキス・ワギネル候補(By Senado Federal, via Wikimedia Commons)

 ルーラ有罪の判決が出たら元気づいた様に思えるのは、その競合者たる他の政党です。前回の記事にもあったアルキミン(サンパウロ州知事)、マリナ(上院議員)、ボルソナロ(下院議員)、など他の多くの政治家(PRESIDENCIAVEIS)がもう立候補予定の声明を出しています(正式の立候補は7月ー8月に選挙委員会に届けが済んでからになります。それまでは正式の選挙運動は出来ません)。
 ルーラが戦線から抜けるとどうなるか? ルーラの支持者だった東北地方の票の20%位は同じ庶民代表のマリナに流れると見られるし、セアラ州を基盤とするゴメス(Carlos Gomes)にも相当の票が行くと見られています。サンパウロ州を基盤として、全国的な大衆人気はいまひとつだったアルキミンはトップ候補になる可能性が出てきました。
 コロール元大統領、リッシャ元パラナ州知事、マナウス市長、共産党の女性議員なども立候補を表明しており、更に全く下馬評外の新人が出てくる可能性もあります。
 ブラジルでは無所属の立候補は認められていないので、所属政党を確定する4月にはこれら候補の顔ぶれがはっきりするでしょう。いずれにしても大統領選挙には今まで以上の多数の候補者が立ち、10月28日の決戦投票にまでずれ込むことはほぼ間違いないでしょう。

▼出るだけ得の大選挙

 ところで何で皆がこんなに大統領選挙に出ようとするのでしょうか? それには色々と理由はあるでしょうが、一つにはブラジルの選挙には公的の大きな便宜が図られていることもあります。
 選挙には政府から『政党交付金』が出ます。このお金で自分や自分の党の主張を宣伝、公示出来るのですから、有難い話です。更に、各企業やスポンサーにも公に資金援助、寄付などを御願いすることも出来るので、候補者にはメリットです。
 更に、選挙運動時期になると公的負担のテレビ宣伝番組があり、ここの時間が貰えます。国の負担で自分(党)の宣伝をして貰える。これは有難いですね。
 当選の見込みは少なくても、『選挙には出るだけ得さ』と考える人がいても不思議はありませんね。
 もう一つ別の面もあります。ブラジルの総選挙は大統領だけを選ぶのでなく、各州知事、各議員をも同時に選ぶのです。
 大統領候補は自党の州知事候補や議員候補と組んで宣伝、選挙運動をします。各候補者はお互いの支持者をクロスさして得票数を高めるわけです。
 大統領候補の選挙キャンペーンなどに多くの議員などが同行しているのもこの様な相乗効果を期待している面もある訳です。
 大統領、知事、議員の候補者たちはこのような同じ党という糸(紐?)で結ばれている訳です。
 つまり、大統領候補の居ない党では議員は孤独の戦いを強いられ、当選が難しくなります。子ガメは親ガメが必要なのです。弱小党でも、当選の見込みが低くても、大統領候補者が出てくる理由が理解されますね。

▼ちまたの声を聞く

 以上、今回の判決に絡んで政界の情勢を調べてみましたが、ではこの人たちを選ぶ選挙民、ちまたの人たちの声はどうなのでしょう。本当の国の主、人たちの意見を一部ですが、ご紹介してみましょう。
 まず、県人会の山形さんです。「大体ブラジルは悪事に寛容すぎる。金持ちは刑務所に入っても差し入れを受けて、高級ホテル並みの生活をしているし、愛人に会える。刑期にしても5年とか8年とか定められたはずなのに1―2年もしたら、もう自宅服務とか言って、ム所から出てくる。一体、罪に対する罰はどうなっているんだ。罰は罰でキチント償って貰おう」。
 次は主婦代表のノブ子さんです。「汚職やワイロで巻き上げた金は何百万レアルとかでしょ。どっかの知事の夫人は現金が使い切れなくて、宝石や貴金属をワンサと買ったんでしょう。うちのダンナなんか真面目一方で指輪ひとつもやっとなのに、何さ。全部国民に返して貰いたい。いや、不正者の財産なんか全部没収にして―悪いことしても合わない―を悟らさすればよいのよ。そうでしょう」
 なるほど、そうですよね。最後にご隠居の野口さんが纏めました。
 「いずれにしても今回の選挙は新旧入り乱れて賑やかなものになるね。こういう動きを見ていると人間のサガのようなものが見えて退屈しないで済むな。ま、ブラジルは恵まれた国なんだから、この地上に住む人間どもがバタバタ乱さすに、老人でも安心して暮らせるような国にして欲しいね」(完)

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