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まさか「蚊の病気」に悩まされるとは

黄熱病の予防接種を待つ人たち(Paulo Pinto/FotosPublicas)

黄熱病の予防接種を待つ人たち(Paulo Pinto/FotosPublicas)

 コラム子が日本からサンパウロ市に越して生活を始めてもうすぐ8年になる。これまで特に生活上で大きく不安になったことはないが、ひとつだけ「こんなことが起きるとは。大丈夫か」と思わされたことがある。それが「蚊のもたらしうる病」だ▼8日、自分の携帯電話のフェイスブックを確認していたら、そこにこんなメッセージが入っていた。「23~25日にロラパルーザに出かける人は、開催10日前までに黄熱病の予防接種を受けるように」。目を疑った。ロラパルーザとはサンパウロ市毎年恒例のロック・フェスティバルのことだが、ここに出かける人にまで、黄熱病予防の勧告通知が出るとは▼本紙でもたびたび報じているが、今年はブラジルでの黄熱病の状況が悪く、最悪の場合、1942年以来となる都市部での感染さえ恐れられている▼この件に関してはかねてから「一体全体、野口英世の時代の病気がなぜ今さら」と思っていた。それがよりによって、コラム子が大好きで毎年欠かさずに行っているイベントにまで恐怖が及ぶとは▼ただ、同時にすごく怖くもなった。もしも、会場のインテルラゴス・サーキットに突然変異化したネッタイシマカが舞い込み、観客や出演者を刺しまくったとしたら…。ロラパルーザは毎年20万人は動員している。「史上最高のラインナップ」と呼ばれる今年は30万人の動員も夢でないとされている。もちろん観客はサンパウロ市だけでなく、ブラジル全体から集まって来る。そんな「熱狂的な音楽の宴」が「死をも引き起こす恐怖の感染場」と化してしまったら…。ましてや出演者はアメリカやイギリスのかなりビッグなバンドも多い。もし大量感染などということになれば、世界的なニュースにもなりかねない▼今日までの時点では、「都市型」の黄熱病の発症の報告はなく、それが起こる可能性も医学的には高くはないと言われてはいる。コラム子としても不安を撒き散らしたいわけではない。とはいえ、予防接種はその数日後に済ませた▼コラム子が蚊の恐怖に見舞われたのはこのときが最初ではない。2016年前半には、同じくネッタイシマカを媒介としたジカ熱が大流行。このとき恐ろしかったのは、ジカ熱に罹患した妊婦たちから大量に小頭症の赤ちゃんが誕生したことだ。それはペルナンブッコ州で特に大量発生し、それが徐々に南下。ついにはリオやサンパウロ市でも小頭症の赤ちゃんが発生する事態に至った▼折りしも、この最悪のタイミングで、コラム子の妻は妊娠した。もっとも、「一番気をつけないとならない」と言われていた妊娠初期段階の時点では、サンパウロ州の症例がなかったので大丈夫だろうとは思っていたが、それでも心配だった。その夏、我が家は蚊が入ってこないようにすべく、窓にネットを厳重に張り巡らし、4月の娘の出産を待った。努力の甲斐もあったか、娘は無事だった▼これが起こったからと言って日本に帰国したいとまでは思わないが、こういう恐怖を感じずに済むよう、国や州にはしっかりした対策を願いたいものだ。(陽)

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