ホーム | 日系社会ニュース | 《ブラジル》和太鼓ショーに演劇的演出=和段『神々の響き』公演=観客総立ちで大歓声贈る

《ブラジル》和太鼓ショーに演劇的演出=和段『神々の響き』公演=観客総立ちで大歓声贈る

目隠しをして演奏する様子

目隠しをして演奏する様子

 ブラジル人を魅惑するプロの和太鼓への第一歩――和太鼓グループ「WADAN(和段)」はサンパウロ市の有名ショッピングセンターで、120レアルの入場料をとって公演「神々の響き(Ecos Divinos)―太鼓新世代―」を繰り広げた。アチバイアの川筋清流太鼓出身の和太鼓奏者9人によるこの新しい試みは15日夜、ショッピン・エルドウラード内の劇場で行われた。当日は約700人(関係者発表)が来場し、現代的な演劇表現を加えた和太鼓ショーを楽しんだ。

 大小さまざまな和太鼓の輪の中で、白装束に目隠しをした8人の男女が呼吸に合わせて花の開閉のような動きを繰り返している。
 会場が異様な雰囲気に包まれる中、床に倒れ伏せた8人が太鼓まで這っていき、ペタペタと皮を撫で始め、誰からともなく手や肘でリズムを奏ではじめた。
 突然、中央の女性が鋭い掛け声を上げ、大太鼓を鉢で力強く叩き始めた。他の団員も加わり、目隠しをした集団の動きと音が激しさを増していく。和太鼓の力強い響きに演劇的な振り付けが加わり、半分以上が非日系の観客は一気にひきつけられた。
 太鼓の演奏から笛の旋律を聞かせる曲まで幅広い演奏が披露された。手持ちの打楽器、肩から提げた太鼓を大きな動作で叩きながら、足でステップを踏むなどの動きのある演出が多い。
 客席に降りた演者が客を巻き込みながら笑いを取り、奏者の魅力にも惹き込まれていく。約1時間の公演だが、曲間を取らず息つぐ間もなく次々に演目が披露された。

公演を終えた和段メンバー

公演を終えた和段メンバー

 集中が途切れることなく最後の曲を叩き終え、メンバーが横一列に並ぶと「ありがとうございました!」と元気よく礼をした。観客は総立ちとなり、拍手と歓声で会場が包まれた。
 約2年半前から和段の演出を担当するブラジル人演出家、舞台女優シンチア・バストスさんは「和太鼓を大事にしつつ、普通の和太鼓演奏ではやらない大きな動きを加えたり、演奏曲や構成にサンバやジャズを彷彿とさせるような新しい要素を組み入れた」と説明した。
 例えば、観客に手拍子でリズムを叩かせ一緒に演奏したり、演劇的な動きで笑いを取ったりすることだ。演奏に合わせて、丈の短い浴衣でモダンバレエのような舞が披露されるなど、伝統的な和太鼓演奏に現代的な演出を混ぜた。
 メンバーは元々サンパウロ州アチバイア市の川筋清流太鼓で太鼓を始めた。10年ほど同グループに所属した後、プロを志す9人が5年前に和段を結成した。
 メンバーの小林・青山・明奈・シンチアさん(31、二世)は公演後、「もう本当にわくわくドキドキしました! 初めての試みばかりで今までの公演と全く違う」と笑顔を見せた。
 バストスさんが入ったことで客観的な視点から指導が入り、和段の公演がさらに良くなったという。「これからもブラジル文化をはじめ色々な要素を取り入れながら和太鼓をさらに広めたい」と展望を語った。
 来場した鈴木正美さん(31、三世)は「太鼓演奏に踊りを加えたり、客席に降りて演奏するなど楽しい演出がたくさん。太鼓の音も力強く、迫力があった」と興奮冷めやらぬ様子で語った。


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 和段の名前の由来は和太鼓の「和」、「段」には「一段ずつ階段を上るようにグループを良くしていきたい」という想いが込められているとか。さらに「ブラジル中で演奏すること、いつかは世界を舞台にする」という夢を持ち「ワールド(世界)」の「ワ」も含まれている。先月には公演の広報のためにパウリスタ大通りで演奏するなど、一般社会向けに精力的に広報している。ブラジル文化を取り入れ、ブラジル人にも受けるような演奏は「和太鼓ブラジレイロ」とも言えるかも。コロニア出身の和段の今後の活躍に注目したいところだ。

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