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どこから来たの=大門千夏=(66)

 しかし不思議とこの高さ二八㎝の泥人形は、どこに置いても見劣りがしないのだ。どんな物のそばにおいてもしっかり自己主張している。
 おかしなもので物というものには「位」があって、いい加減なものは本物のそばに置くととたんに見劣りがしてくるし、見あきてくる。しかし本物はどこに並べおいても風格がある。
 これはやっぱり本ものに違いない…一人悦にいってニンマリとする時もある。
 それから二〇年くらい経った頃、田舎の友人宅で、我が家にあるテラコッタ人形の写真が出ている本を見つけた! まったく同じ! エッ! 我が家の人形とおなじではないか!
 そこにはこんなことが書いてあった(ゼカーリア・シッチン著「謎の第十二惑星」)。
 一九〇三年から一九一四年、考古学者はアッシリアの首都(アッシュル)にあるイシュタルの寺院でイシュタル女神像を発見した。これは破損していたが様々な奇妙な仕掛けが胸や背中に付けられていた。
 一九三四年、ユーフラテス河中流にある古都マリを発掘していた考古学者は、美しい女神・イシュタルの像を発見した。この発掘された女神像は、今から四〇〇〇年前に作られたと推定されている。
 メソポタミアにあった古代都市アッシュルやマリは、チグリス、ユーフラテスの両河畔に広がる山岳の一帯で文明発祥の地である。ここに栄えたシュメール王朝の文献によると、この女神はイシュタルと呼ばれ、我々の知らない天体とこの地上とを行き来できる「空飛ぶ女神さま」で、それでこのような飛行服をきているのだという。
*頭にかぶっているものは、私たちがヘルメットと呼んでいる物に近いようで「シュ・ガル・ラ」と呼ばれ、これを直訳すると「宇宙はるか遠くに行かせるもの」。
*両耳にぴったりとかぶさっているものは飛行士が使うイヤホーンに似ている。または私たちが音楽を聴くときに用いるヘッドホーンを連想する。しかしこれは「計測用ペンダント」。
*首と胸の上部には何連にもなる首飾りをしている…これは小さな青い色の石のついた鎖。
*両手で太い円筒状の物をもっている…これは金の円筒。
*像の後ろ側を見ると長方形の箱が首の後ろにある。二つの肩パットがこれを支えている(この箱はよほど重いものに違いない)。
*洋服はたくさんの襞のついた長いワンピースを着ている…これは「バラ服」と呼ばれて「支配者の服」という意味。
 四〇〇〇年昔の女神さまの像に宇宙飛行士の姿があるということは何を意味するのだろうか?
 それはともかく、私にとってこのテラコッタの人形はこの世とあの世を行き来できる女神さまだという解釈ができた。
 今まで無造作に置かれ、埃までかぶっていたけれど、現金なもので途端に扱いがすっかり変わり、今では美しい家具に入れられて、観音様とガンダーラの石像と一緒に並べて飾ってある。三体ともそれぞれ個性があって、じっと見ていると何か「エネルギー」を感じるのは気のせいだろうか。
 毎日、「お願いです。私が倒れましたらすぐに来てまっすぐあの世にお連れ下さい。お願いします。一刻も猶予しないでくださいね」とダメ押しまでして真面目にお祈りする。イシュタル様は聞いてか聞かずか眼は天空のほうを向いて、私の顔を見ようとはなさらない。それでもお祈りをすると願いが叶えられるような気分がして安心する。…これで長患いはしない。大丈夫!

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