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伯国でもっとアジア映画を見るチャンスを!

パルムドールを手にする是枝監督

パルムドールを手にする是枝監督

 さる19日、フランスの権威あるカンヌ映画祭で、日本の是枝裕和監督の「万引き家族」が、大賞に相当するパルムドールを受賞した。日本の作品としては21年ぶりの快挙となった▼伯国に住む日本人としては、是枝氏の受賞自体も嬉しいものの、「ああ、これでこの映画も伯国に上陸するな」という安堵感も正直ある。というのも、それくらい、ここ伯国では本当に、日本、ならびにアジア映画を見る機会に恵まれないからだ▼是枝監督は、伯国の映画界でも「誰も知らない」や「そして父になる」が評価されていることもあり、現在、北野武以外の日本人監督の作品としては唯一、新作映画がほぼ見れる監督となっている。カンヌのパルムドールまで受賞したとなると、その座は揺らぐこともなくなるだろう。だが、「では、是枝氏に続く存在はいるか?」となると、そこははなはだ疑問だ▼聖市にはかなりマニアックな映画ファンが存在し、古い名画の特集上映もよくあるが、たいていヨーロッパの古典映画で、日本やアジアは弱い。日本ものだと、黒澤明、小津安二郎、溝口健二の50年代からの「御三家」には詳しいが、是枝に続く日本の現在の精鋭、黒沢清や園子温あたりになると知られているかどうかは怪しい。それこそ彼らがカンヌやヴェネツィアなどの権威ある映画賞を取りでもしないと劇場公開までこぎつけるのは難しいだろう。7年ほど前に三池崇の特集上映は一度やられていたが、その彼とて今も新作が公開されることはそう多くない▼そしてこれは日本映画に限ったことではない。パク・チャヌク、ポン・ジュノなどハリウッドにも進出した監督を持つ韓国映画も、他の国で公開されているほどこちらでは積極的に公開されてはいない▼さらに言えば、日本で一部ブームにさえなっている「ボリウッド」こと、インド映画に関して言えば、もうお手上げ状態。ブラジル銀行文化センター(CCBB)でごくたまに特集上映される程度だ。インド映画は昨今、世界各国に移民文化を築いていることもあり、今やアメリカでさえも「インドで人気ナンバーワン」の触れ込みの映画が興行収入ベストテンに入ることさえ珍しくない。日本でも大河アクション映画「バーフバリ」がヒットして話題になっている。だが、残念なことに、伯国ではインド移民が他の国ほど多くないことから「需要がない」と見なされるからなのか、一般公開される予感さえない▼伯国の場合、どのショッピング・センターにも確実に入っているシネマ・コンプレックス(シネコン)で上映される映画は決まってハリウッドか国内のメジャー映画のみ。外国映画の新作となると、サンパウロならパウリスタ大通りにある名門映画館レゼルヴァ・クルツラルや2館あるイタウ・シネマ、カイシャ・ベラス・アルチスなどで、せいぜい数館と数が限られる。その枠をフランスやイタリア、アルゼンチンやチリの映画と争わなくてはならないから、必然的に数が限られてしまうのだ▼1950~70年代のリベルダーデ地区のような「日本映画専門館」3館を再現しろとまでは言わない。だが、せいぜい、「アジア映画に強い映画館」みたいなマニア好みする単館の映画館がひとつでもあればいいのだが。(陽)

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