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トラック・ストが示すテメル政権の末期症状

歴史研究家のマルコ・アントニオ・ビラのフェイスブック投稿

歴史研究家のマルコ・アントニオ・ビラのフェイスブック投稿

 29日付け本紙が、ちゃんと読者の手元に届くか心配だ――。28日(月)早朝、聖市アクリマソン区のスーパー・エストラをのぞいたら野菜コーナーはガラガラ…。周辺のガソリン・スタンドはみなロープが張られて閉鎖され、従業員が暇そうにあくびをしていた。
 トラック運転手の全国ストは国民の移動、郵便、治安、医療、食糧などの一番生活に密着した部分に大打撃を与え、しかもまだ続いている。一時は空港の飛行機燃料が足りなくなって欠航する便が相次ぐなど、国際的な問題に発展しかねない状況にまでなった。
 27日(日)午後9時半、テメル大統領が直々にスト回避を巡る丸一日の交渉結果として記者会見した。「これで解決した!」といわんばかりの様子だったが、翌朝まだストが続いていた。大統領の面目は丸つぶれだ。
 28日朝CBNラジオで経済評論家のカルロス・アルベルト・サルネンベルキは《ワッツザップで各地域の自営業運転手のリーダーたちが直接に連絡を取り合ってストを継続させている。トラック組合や運輸企業などの自称〃代表者〃は実際には代弁者ではない。2013年6月に突然始まったマニフェスタソンに似た同時多発ストになっている》と分析した。
 歴史研究家のマルコ・アントニオ・ビラは《テメルは弱い! ブラジルをこの10年で最悪の権威低落を招いた。テメルは現実に同調していない。演説では鶏(!)の心配をしている。病院、治安、経済、国民の生活はどうなった? 一体いつまでテメルを大統領にしておくことに我慢すればいいのか?》という激烈な動画をフェイスブックに25日晩に放ち、翌朝(14時間)までに6万8千回も再生され、7304人が「いいね」ボタンを押した。
 国民の不満が猛烈に高まっている。
 トラック業界にスト気運が高まっているとの事前情報が昨年末からあったのに、テメルは見逃した。自分への告発第3弾回避が気になって、ほかの事に気を配る力がないのかも。
 本来なら、昨年6月に社会保障改革を実現する勢いだった。だがJBSショックでぶっ飛び、2度の大統領告発を回避するために、彼が持つ全ての政治的な資源(権限、権力)を使い尽くした。権限を使い尽くした大統領は、抜け殻も同様だ。連邦議会で票を集める力がないから、社会保障改革はお蔵入りし、次期政権に預けられた。
 テメルが大統領の座に居続けられるのは「いま罷免して新大統領を選んでも任期が短いから誰もやりたがらない。しかも罷免手続きには何カ月もかかって面倒。選挙があるから、そんなことやっていられない。だから置いておけ」という現実的判断からだと多くの政治評論家が指摘する。
 スト回避のためにテメルが27日晩に発表した、ディーゼル油を60日間46センターボ値下げするなどの緊急対策を実現するには、国庫から少なくとも135億レアルを支出する必要があると報道された。ちなみに連邦政府の2017年度の教育予算総額が625億レアルだから、その約4分の1という貴重な金額だ。
 USP経済学部のラウラ・カルバーリョ教授は24日晩のジョルナル・ダ・クルツーラで《このストは恐喝だ。一見すると自営業の運転手が自分のためにやっているように見えるが、実は(税金の軽減などは)トラック業界の企業家が主に恩恵を受ける。その恐喝に政府は屈した。ペトロブラス(PB)が石油の国際価格に合わせて国内卸売り価格を日々変動させる方針を維持すれば、今ストが終っても、数カ月後にはディーゼル油価格には同じことが起きる。燃料は産業の基盤なんだから、国際燃料価格が急激に上がっても直に市価に反映しない国策が必要だ》と鋭く指摘した。
 リカルド・セネスUSP国際政治学教授も同番組で25日、《PT政権の間、インフレをムリヤリ抑えるために、PBに強権的に命じて国内の燃料価格を上げさせなかった。そのせいで国際価格の上昇を国内価格に転嫁できずPBは大損害を被った。その反省からPBはテメル政権になってから日々変動させる政策に変えたが、振り子が逆方向に振れ過ぎて、今回の事態になった。1年間で50%近くもディーゼル油が上昇したら困る業界がたくさん出ることは予想できた。両極端に陥らず、燃料価格をある程度、政策的に安定させるのは国の仕事のはずだ》とコメントした。
 トラック運転手は「1年で50%近く値上がりした」と抗議しているが、28日付けエスタード紙によれば、ストが開始された21日のディーゼル油価格は3・60レアルで、世界平均価格3・94レアルより安かった。つまり、それ以前にPT政権が余りにも安く抑えすぎていた価格を、ペトロブラスは回復しようとしていただけだ。
 TVクルツーラ報道によれば「国内輸送の61%がトラックに依存」する。だから、トラック輸送が止まるとあらゆる面に影響が出る。「鉄道や川船による輸送ルート」という選択肢を充実させておけば、トラックが止まってもこれほど大問題にはならなかった。
 ストの「痛み」を抑えるためだけの対処療法に135億レアルもの巨額な費用を使うのはもったいない。どうして事前に同額を他の輸送ルート設置という「根本治療」に投資できなかったか。
 この騒動で、先週だけでペトロブラス株は23%も下げた。それに引っ張られてIbovespaも先週5・04%も下げ、1月10日の株価水準まで後退し、残酷なまでに経済の脆弱性が露呈された。
 さらに便乗ストや便乗値上げまで起きている。これがインフレ要因となり、それを抑えるためにいずれ金利も上がり、企業活動に支障が生まれて失業率をさらに引き上げる悪循環につながる可能性がある。今回のストが、再び景気を悪化させ、PIBを下げる引き金になれば最悪だ。
 少なくとも、今回のストによって損害を受けた全伯の企業は、それを取り返すために将来的に商品価格に上乗せする。また政府は税金として徴収することが予想される。今回起きていることの全ての損害は、最終的に国民が負担することになるだろう。
 テメルがスト潰しに軍まで動員させたのは、まことに政権の末期症状だ。今回のストでテメルは政治的に致命的な痛手を負った。もう選挙で大きくでる余地はない。おそらくMDBは他党候補を裏からひっそり支えるしかないだろう。(深)

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