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特別寄稿=アブド・ベニテス新政権の発足=世界の95慶祝団に祝われ盛大にパラグァイ在住=坂本邦雄

就任パレードの様子(Foto: Cesar Itiberê/PR)

就任パレードの様子(Foto: Cesar Itiberê/PR)

 この8月15日(水=アスンション市創立481周年記念日に当る)、は憲法の規定(第229条)に従い、マリオ・アブド・ベニテス及びウーゴ・ベラスケス両正副大統領が就任し、晴れてアブド新政権が発足した。

 1844年に、初代カルロス・A・ロペス大統領に始まる、憲政国パラグァイの第57代目、及びストロエスネル独裁政権が、1989年に軍事クーデターで崩壊し、民主化政体に移行してから、歴代9人目の民主大統領である。

 ちょっと複雑なのは、別名マリト新大統領は、35年もの長期間強権を以て、パラグァイを圧制統治した独裁者、元ストロエスネル大統領の忠実な秘書官だった、故マリオ・アブド・ベニテスの次男である事だ。それゆえ、今回全国総選挙で民主的に選出はされたものの、昔の事を忘れない多くの人々は、忌わしいストロニズムの再来だと、非難する一面もあるのは否めない。

 行事は、午前7時30分に、国会上下両院の合同本会議において、オラシオ・カルテス前大統領の、シルビオ・オベラル国会議長(参院議長)に対して大統領の権杖と肩章の返還式に始まり、続いて会議はロペス宮殿(政庁)のアスンション湾岸向き表広場に設営された大会場に移動した。

 しかし、世界各国から95の慶祝使節団が来訪し、かつてなかった、盛大なこの新旧政権の交替には、当のカルテス前大統領と自派のHC=赤党徳義派や、主だった野党反対派議員等の出席は見られなかった。

 かくして、カルテスは政権後半になって、「栄光よりも多くの不名誉」を背負って退陣した格好になった。

 この後、儀式はアスンション大聖堂での荘厳なTe謝恩のDeum礼拝式に移り、次いで政庁に戻り、「独立の大広間」でマリオ・アブド新大統領夫妻は、ベラスケス副大統領とカスティグリオニ外相夫妻と共々、約1時間余りに亘り、外国使節団の慶祝の挨拶を受けた。

 

▼テメル大統領や台湾の蔡英文総統も出席

台湾の蔡英文(さいえいぶん)総統と話をするテメル大統領(Foto Taiwan Presidential Office)

台湾の蔡英文(さいえいぶん)総統と話をするテメル大統領(Foto Taiwan Presidential Office)

 特筆すべきは先ず、ブラジルのテメル大統領と親しく抱擁の上、数分の話しが交わされたのを初めとし、ボリビア、アルゼンチン及びウルグァイの各同僚大統領夫々と、順次親密に話し合うのが見られた。

 なお、これ等メルコスール各国の大統領も然る事ながら、はるばる遠来の台湾の蔡英文(さいえいぶん)総統の来訪も見逃せない。

 同じく、アブド大統領は、アメリカのW・ロッス商務長官を主席とする慶祝団やイギリスのT・メイ首相の親書を持参した特使グロリア・フーパー男爵夫人等とも歓談した。

 ところでこれは余談だが、7月初旬に隣接諸国の大統領歴訪の途上、チリのセバスティアン・ピニェラ大統領を表敬訪問した際に(7月6日付本紙参照)、マリトことアブド・ベニテスが、この就任式に招待したのは知られた事だが、今回それが無かったのを見ると、一つはピニェラの去る3月の就任式に、当方よりカルテス大統領が参加しなかったのと、もう一つは太平洋への出口、アントファガスタ沿海領土挽回の訴訟問題が、和蘭ヘーグ国際司法裁判所で係争中で、長らく正常な国交も無い、ボリビア多民族国のエボ・モラレス大統領とは、顔を合わせたくなくて、この度ピニェラはパラグァイ訪問を遠慮したのではと勘繰るのは、少々邪推の行き過ぎだろうか?

 アブド・ベニテス大統領は昨日就任直後の席上、内閣府の公表済み各新閣僚の発令・宣誓を次の通り行った。

☆フアン・エルネスト・ビリャマジョール内務大臣、

☆ルイス・カスティグリオニ外務大臣、

☆ベニグノ・ロペス大蔵大臣(註、マリトの異父兄弟。IPS・社会保障局長からの横滑り人事)、

☆フリオ・マッソレニ衛生厚生大臣、

☆カルラ・バシガルポ労働大臣(女性)、

☆フリオ・ハビエル・リオス司法大臣、

☆デニス・リッチ農牧大臣、

☆ベルナルディノ・ソト・エスティガリビア国防大臣(註・将官、退役軍人)、

☆エドゥアルド・ペッタ・サンマルティン文部科学大臣、

☆マリオ・バレーラ社会開発大臣(註・旧社会貢献局が昇格した新しい省)、

☆ニルダ・ロメロ婦人大臣(女性)、

☆アーノルド・ウィーンズ公共土木通信大臣(註・新教牧師出身、TV司会者)。

 以上は、大統領就任当日の主だった閣僚人事の発表だが、未だ商工省(女性、リス・ クラメル元観光局長が内定)やIPS・社会保障局、児童青少年保護省(女性検事テレサ・マルティーネスの任命が内定)、新たな環境省と鉱山エネルギー省等、重要な省局、税関、外郭団体の首長選考に当たり慎重を期する、マリトの決断が更に、早急に期待される処である。

 

 

▼憲法改正と「狐と狸の化かし合い」

 

 なお17日は、大統領に最も近いとされる、官房長官職にアスンション市役所のフリオ・ウリョン市議が抜擢、発令されたと、報じられた。

 そして、特にアブド・ベニテス大統領の指示も有って、ビリャマジョール内相は昨日(17日)、任命したフアン・F・ビリャルバ・イドヤガ政治担当副大臣(次官)に対し、可及的速やかに社会問題討議の為の、有識者会議の設置を図り、現行憲法の改正国民議会を招集すべく、その段取りを早急に進める様に命じた。

 同次官は、記者会見で既に1992年来26年も経った、現行憲法が要する修正又は改正箇所の詳細には、もちろん未だ触れはしなかった。だが、社会情勢の変遷が激しい、当世に応じた憲法の修正又は改正は当然な事で、ここは全ての政党政派、実業界、社会全般の正当な意見を反映した、新憲法制定全国大会の招集を急ぎたいと述べた。

 ちなみに、憲法改正と言えば、今の憲法では第229条で、いかなる場合も大統領の再選は厳に禁じている。だが、これまでに、マリトの歴代前任者の中で特にニカノル・ドァルテ・フルトスとオラシオ・カルテス、それにフェルナンド・ルーゴ各前・元大統領は、違憲であるに拘わらず、ゴリ押しにこの度、再選に出馬し様とした。

(先述のごとく、憲法改正を推すマリトも、問題の大統領再選禁止条項を変えて、将来自身の再選合憲化を見据えての、遠謀ではないかと邪推したくなるが、マリトは自分は今期一度限りで、大統領退職後は規定の終身名誉参議員に引き籠ると、前々から宣言しているが、政治は「狐と狸の化かし合い」で、今後は如何なるか予断は許されない)。

 カルテス前大統領に至っては、大統領再任は難しいと見て、今度は(これも不法に)代りに現職に在りながら、国会上院議員に当選し、憲法が定める元大統領の、自動名誉職の「終身参議員」ではなく、発言権及び投票権もある正参院議員就任を狙った。

 しかし、国会でカルテスの参議員就任宣誓を許す必要票数が得られず、結局カルテスは浪人となった。

 これは、先に矢張り政争問題で、フアン・アファラ副大統領が辞任し、上院議員選に当選したので、この空席を埋める為にカルテスは、自分の大統領再選や上院議会進出への道を開くべく、憲法規制の解釈を有利に導いた、最高裁のアリシア・プチェタ裁判官を後釜に据えた(4月25日付本紙参照)。

 そして、カルテスは8月15日に参院議員の就任宣誓が確実となれば、自分は辞職し代りに昇格するプチェタ副大統領が、新旧政権交代の席で、マリトに大統領の権杖と懸章を渡す計算だった。

 全ては「獲らぬ狸の皮算用」で、短期間でもパラグァイ初の女性大統領となり、“有終の美を飾ろう ”とした夢も儚く水泡と化し、一番バカを見たのは最高裁判事の職も棒に振ったアリシア・プチェタ女史である。

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