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法治民主制の枠組内で改革を=穏健な政権への成熟に期待=ポルト・アレグレ在住 杉村士朗

6日に連邦議会で行なわれた憲法制定30周年記念の慶祝議会に、憲法を手に参加したボウソナロ次期大統領(José Cruz/Agencia Brasil)

6日に連邦議会で行なわれた憲法制定30周年記念の慶祝議会に、憲法を手に参加したボウソナロ次期大統領(José Cruz/Agencia Brasil)

 10月28日、大統領選挙決選投票が行なわれ、保守派ボウソナロ候補者が時期大統領に選ばれた。
 13年間にわたるPT(労働者党)政権の腐敗と欺瞞に国民は怒り、軍政賛美など過激な発言をする未知数の元軍人候補者に変革を信託した。
 10月7日、第1回投票でPTハダジ候補者と無名小党PSLボウソナロ候補者の2人が決選投票に残った。10月10日付週刊誌「ヴェージャ」は、ボウソナロ候補者を「暗闇への跳躍」、ハダジ候補者を「PTの冬」と形容した。そして、両者の対決は「無差別の対決」であり、それぞれブラジル後退のリスク要因である、と解説した。
 PT候補者次期大統領当選は、ブラジル社会後退のリスク要因になるとする同誌の見方に私は同感する。
 しかし、ボウソナロ次期大統領は、ブラジル社会後退のリスク要因にならない、と私は考える。
 ブラジルは、周近平の中国でも、プーチンのロシアでもない。ブラジルは日本と同じく、国民主権に立脚した法治民主国家である。そもそも、次期大統領政権が、軍部を背景に国会閉鎖や憲法停止といった妄想をするほど、無知無能集団であると私は考えない。
 それに、第1回投票結果後、ボウソナロ候補者とハダジ候補者の2人は、ブラジル報道協会が作成提起した「連邦憲法を尊重する誓約書」に署名した。
 同文書は、同憲法第5条が定める「生命の権利」「平等の権利」「安全保障の権利」「所有の権利」等の国民の基本権の不可侵性に言及すると共に、「知る権利」と「表現の自由」、その帰結としての「報道の自由」を保障する誓約条項を設定した。
 ボウソナロ次期大統領は、国民の期待する変革を法治民主制の枠組内で行なうだろう。過激な発言は、政権就任に伴い、穏健な政権提言へと成熟するだろう。ブラジルの「現実を変革」するには、それ以外に「現実の道」はない。

クリチーバ連邦警察の留置所で、ルーラ容疑者を見舞ったハダジ氏(左)とグレイシ・ホフマンPT党首(18年6月29日、Ricardo Stuckert)

クリチーバ連邦警察の留置所で、ルーラ容疑者を見舞ったハダジ氏(左)とグレイシ・ホフマンPT党首(18年6月29日、Ricardo Stuckert)

 選挙戦では政策論争が不在だったが、それは当然の結果である。なぜなら、PTの真の候補者は監獄内のルーラ大統領であり、ハダジ候補者はその操り人形にすぎないと、誰もが知っているからである。
 国境を問わず、すべての法治民主国家の主権者である国民が望むのは、「自由で公正で連帯した社会」の建設である。しかし、その内容と、それをどのように実現するかという方法には、様々な考え方がある。そこに、「知る権利」と「表現の自由」、その帰結としての「報道の自由」は必要不可欠なものだ。
 はたして、ボウソナロ新政権がこれまでの「負の遺産」を清算し、「公正で連帯した社会」の建設に向け第一歩を踏み出せるか否か、私にはわからない。
 ボウソナロ新政権は、「PT(労働者党)の悪事と決まりを阻止」(側近の言葉)するために誕生した。ボウソナロ新政権誕生は、ブラジル民主化後のPT政権誕生と同次元の画期的政治現象である。
 皮肉にも、ボウソナロ現象生みの親は、「政治迫害される貧困救世主」と自己演出する、PTカリスマ指導者ルーラ元大統領にほかならない。
 そのような文脈において、大統領選第1回投票の直後に出た10月10日付週刊誌『ヴェージャ』の「PTの冬」と題された解説を、以下、仮訳して紹介したい。

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