ホーム | 日系社会ニュース | ブラジル講道館=学校教育に柔道導入を=日本の取組みに協力呼びかけ=「汚職蔓延の今だから柔道が必要」

ブラジル講道館=学校教育に柔道導入を=日本の取組みに協力呼びかけ=「汚職蔓延の今だから柔道が必要」

インスチトゥト・チアゴ・カミロの生徒たち

インスチトゥト・チアゴ・カミロの生徒たち

 「日本企業がこのプロジェクトを知り、支援してほしい」――ブラジル講道館柔道有段者会(関根隆範会長)は、2016年の安倍総理来伯を機に始まった「ブラジル公教育に学校柔道導入」計画への協力を呼び掛けている。これは、日本政府によるスポーツを通じた国際貢献事業「スポーツ・フォー・トゥモロー」プログラムの一環で、東京五輪のある2020年まで継続される予定。

 2016年10月21日、日本の文部科学省とブラジルのスポーツ省がスポーツ・体育教育分野での協力覚書を提携した。「リオ2016から東京2020」への継承を念頭に置いたもので、当地には200万人の柔道人口がすでにある。
 関根会長は「汚職が蔓延する政界にあって、今ほど知育、徳育、体育を並行して伝える日本の柔道が、ブラジルの公教育に求められている時代はない。柔道はブラジルには好適な幼少年指導教育だという識者が全伯にいることを、我々は知っている」と同計画の重要性を強調した。
 開始翌年の17年9月にはブラジルの柔道指導員7人を25日間受入れ、筑波大学で「柔道指導者の倫理」「柔道の科学」などの講義、「投技」「一流選手の技紹介」などの実技、中学校の武道授業や町道場の視察、大会見学などの充実した研修が行われた。

柔道で知育、徳育、体育を身につけた幼少年がブラジルの将来を支えるか

柔道で知育、徳育、体育を身につけた幼少年がブラジルの将来を支えるか

 今年9月にも8人が招聘され、研修を受講した。関根会長は「長年柔道を実践していても訪日は初めてという人ばかり。みなカルチャーショックを受け、感激して日本のファンになって帰って来る」と研修者を代弁した。
 帰伯した研修者の中には日本で覚えたことを広めるべく巡回指導を始めた人もいるという。すでに次の3つの付随したプロジェクトが進行中だ。
 SESI(社会・工業サービス)はサンパウロ市を中心に、主要都市に教育施設を持っており、その一部ではすでに柔道が科目として導入されている。日本政府と同有段者会が協力することで、それを本格化させたいとしている。関根会長は「SESIではバウルー市に柔道専門指導センターを建設準備中で、来年には日本から指導者を招いて、学校柔道指導試験第1号校として開設したいと意気込んでいます」と補足する。
 またミナス・テニス・クラブ柔道部は、五輪メダリストが主任指導者になっており、来年には約30人の青少年を日本へ派遣して研修することを計画中。そのクラブをテコにして州都ベロオリゾンテ市の公立学校に柔道を普及させる計画が検討中だ。

CEUで柔道を学ぶ生徒たち

CEUで柔道を学ぶ生徒たち

 サンパウロ市では、北京五輪銅メダリストのチアゴ・カミロさんが中心になって、市営教育施設CEUの6カ所に道場を設営し、自ら幼少年への柔道指導を行っている。参加生徒数は700人を数える。一昨年に安倍総理から寄付された柔道着100着はこの施設で活用されている。
 チアゴさんは今後5年間で全46カ所のCEU(生徒数12万人)に拡大することを計画中で、そのための企業支援を求めている。
 関根会長は「日本企業の皆さん。日本政府と協力し、ブラジルの未来を支える青少年を柔道で鍛えるのに、ぜひご協力を。この素晴らしいプロジェクトを東京五輪以降も続けて欲しい」と語った。


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 ブラジル講道館柔道有段者会の関根隆範会長は「岡野脩平名誉会長は80歳を目前にして、優れない体調を推して、渾身の努力で学校柔道実現に粉骨砕身している。弊会は柔道の普遍性、教育の価値観を永遠に伝える団体になるために、昨年定款を改正した。日本の魂を、ブラジル生まれの日系人、ブラジル人に伝えましょう。柔道人口が世界最大にまで拡張したこのブラジルで、今こそ柔道の真の目的である教育に焦点を当てようとしている。日本以外の学校の教育の場で、青少年の人材育成に本当に役に立つのか。柔道の普遍性を試す重要な機会だ」と今回のプロジェクトの意義を熱く語った。

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