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ブラジルでイクラが食べられるか?

サーモンの卵の冷凍を売っているO PESCADOS PAOLAの棚(同社サイトより)

サーモンの卵の冷凍を売っているO PESCADOS PAOLAの棚(同社サイトより)

 昨年の暮れ、思い切って〝冒険〟をしてみた。サンパウロ市のメルカード・ムニシパル(R. Cantareira, 306 – Centro)で「ovas de salmão」(サーモンの卵)の冷凍を買ったのだ。
 何が冒険かというと、100グラム余りなのに140レアルもした。薄給で有名な邦字紙記者だけに、こんな高額な素材を買ったことがない。
 おせちとまではいかないが、何かしらお正月らしい料理を一品でも作ろうと思って、素材をいろいろ探していた。
 たまたまある店でそれを見つけて、「これはイクラになるのでは!」とひらめいた。その瞬間、「清水の舞台から飛び降りる」つもりで、衝動買いをしてしまった。
 でも自宅にかえって、家内に報告したら「失敗したらどうするの?」と呆れられた。
 一晩、冷蔵庫の中で解凍したら、すでに薄皮を取って筋子をほぐしたツブツブの状態だった。ネットで「イクラの醤油漬け」のレシピ(作り方)を探し、さっそく挑戦。
 実は意外と簡単だった。コラム子は「男の手料理」なので、難しいことは分からない。サーモンの卵にミリンを大さじ1杯、醤油大さじ3杯、さらに「麺つゆ」を卵がなみなみつかるぐらいにいれるだけ。あとは、24時間ほど冷蔵庫の中で漬けておいた。冷凍されていたから寄生虫の心配はないが、1週間以内に食べきらないといけない。
 翌日、冷蔵庫から出して恐る恐る見てみると、半透明のキレイなルビー色になっている。「少なくとも、外見はイクラそっくりだ」と少し安心した。夜、さっそく食べてみた。
 スプーンで温かいご飯の上において、臭いをかぐ。これは期待できそうだ。そして、ほおばった。「ああ、これはイクラだ」と脱力、至福の境地になった。〝冒険〟をした甲斐があった。このおかげで、今年の正月は少しだけ日本の気分を味わった。
 ぜひ読者にもこの気分をおすそ分けしようと思い、思い切ってサーモンの卵の冷凍を売っていた店をお教えしたい。
 それは写真にある「O PESCADOS PAOLA」(rua B, Box33)だった。サイト(http://www.pescadospaola.com.br/)もある。冷凍棚の左側中段ぐらいにあった。
 名前がイタリアっぽいと思って調べてみると、やはり同国カラブリア州コゼンツァ県出身のイタリア移民が1983年に創立し、自分が生まれた港町パオラの名を付けた海産物専門店だった。イタリアをハイヒールを履いた足にたとえると、ちょうど足の甲あたり、南から二つ目の州だ。
 ちなみに、つま先にあたる最南端のカラブリア州は、当地で有名な「イングイッサ・カラブレーザ」の故郷だ。南部州は今でも経済振興が遅れた地域として知られ、貧困から逃れようとイタリア移民第一次ブーム期(1876年から1920年)の間に、同州からだけで約10万人が大挙ブラジルへ移住した。
 そして同州出身者が集中して住んでいた聖市ベッシーガ地区で、イタリア移民の肉屋が同郷者の郷愁を癒すために作って販売し始め、今ではブラジルを代表する食材に育った移民起源の食品だ。
 2013年12月4日付エスタード紙パラダール面電子版によれば、イワシやトマト等を使ったパンに付けるペースト「サルデーラ」も同州出身者がブラジルに持ちこんだという。一世紀も前の文化的な痕跡が食材として残っている。
 サーモンの卵の消費が増えて競争が起き、値段が下がることを大いに期待したい。思えば、当地でサーモンの消費量はスゴイ。寿司のネタの代表格といえば、サーモンとマグロだ。それならば、サーモンの卵はたくさんあるはず。
 でもブラジル人は一般にサーモンの卵を食べない。おそらく大量に捨てられているはずだ。本来、それほど高くなる素材ではないはず。本当にもったいない話だ。「売れる」となれば、きっと市場に出回り始めるに違いない。それを期待して今回書くことにした。
 実はおなじパオラ店で、「Ovas de bacalhau」(タラの卵)の冷凍も発見した。しかもこちらは1キロ、28レアルと安い。試しに、これを使って自家製タラコを作ってみた。
 粒が少々小さいが、十分にタラコの味がした。そのまま食べてもいいし、もちろんスパゲッティにも合う。レシピを探したら、同じ素材から明太子が作れることも分かった。
 調べてみると、ブラジル人もマリネにしてツマミにする食材なので、こんなに安いようだ。いずれ明太子に挑戦し、作り方を含めて報告したい。
 ちなみに明太子は、ボンレチーロ区にある韓国移民のスーパー「Otugui Supermercado」(Rua Três Rios, 261 – Bom Retiro)のキムチのコーナーで探したら、輸入物のソウル産「魚卵のキムチ」があった。
 1パック40~50レアルもするが、ほぼ明太子だ。由来を調べたら、「魚卵のキムチ」を日本食化したものが明太子。つまり、明太子の原点といえる味だ。ただし、高額だし、頻繁に売り切れており、なかなか巡り合えないのが難点。
 おそらく本紙読者の皆さんも、「日本人としてブラジルに来た以上、もうこちらでは二度と食べられない」と覚悟した食品が幾つかあるのでは。
 コラム子の場合、それはウナギ、イクラ、タラコだった。九州の人ならタラコより明太子、東北出身の人ならイクラより筋子かも。これらは、日本に行った時に食いだめするしかないと諦めていたのでは。
 でも今回、意外に身近なところに売っていることが分かった。あとは自分で一工夫するだけ。ぜひ読者の皆さんも挑戦し、美味くいった作り方を投稿してほしい。(深)

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