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人文研調査=全伯で日本祭り88、盆踊り138=「会館拠点に日本精神発信」=地域社会で親日感情を醸成

(左から)細川コーディネーター、宇都宮さん

(左から)細川コーディネーター、宇都宮さん

 【既報関連】「日系社会が消滅するという言説があるが、日本精神の灯は守られている。世界もブラジルも変容する中で日系社会も変化し続けるが、決して消滅することはないと信ずる」――サンパウロ人文科学研究所が実施した「日系社会実態調査」の第二回報告会(ポ語のみ)が14日に県連会議室で催され、宇都宮スエリさんはこう総括した。全伯で「日本祭り」的イベントは88、盆踊りは138もあることが分かり、日系団体が地域社会から高い評価をえて影響力を及ぼしている様子が浮かび上がった。

集合写真

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 昨年11月にジャパンハウスで開催された第1回報告会は日本語中心だったが、今回はポ語中心でより分析が進んだ内容が発表された。

 全伯各地の文化体育協会436団体が対象となったこの調査で、約2千人以上を動員する日系団体主催の「日本祭り」的イベントだけで、全伯では88件に上ることが分かった。うち市の公式行事に認定されているのが約3割。会場の多くは日系団体の会館だ。宇都宮さんは「地方では会館は地域住民全体にとって、唯一の娯楽イベントの場所となっていることが多い」と分析する。

 なお、全伯で開催される盆踊りだけで138件もあり、地域の非日系人も参加する場合が多い。

 イベントが日系団体の存在感につながっていることを裏付けるデータとして、1328人の非日系人に対する街頭調査結果を公表。「居住する町に日系社会があるか」との質問に75%が「はい」と回答。「日系イベントに参加する、もしくは参加した経験があるか」との質問に対しても、同等の「はい」が75%を占めた。日系社会の印象については、99・4%が好意的で、「日本食が好きか」との質問には「はい」との回答が8割に上った。

 「市や近隣の人から、日系社会ならではという賞賛を受けたことがありますか」との問いに、93%の日系人が「はい」と回答。全伯各地の会館によるイベント等を通じ、親日感情の醸成に寄与してきたことが浮き彫りとなった。

 今調査の結果報告書は完成したら、人文研サイト(https://www.cenb.org.br/)で公表される。調査対象となった団体を地図上で示し、ポイントすると基礎情報が表示される「日系社会マップ」(http://nw.org.br/sistema/ctr_APIGoogleMaps_filtro/)は、すでに公開中。収集した情報はデータバンクとして保存され、各種データ抽出の依頼も受けている。問合せは人文研(pesquisanikkei@gmail.com)まで。

 最後に、宇都宮さんは「会館は日本精神の発信拠点。それを保つことができたのもブラジルが多文化に寛大であるがゆえ。日系、非日系人を問わず、日本の価値観が賞賛されている」と締め括った。

 

 

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    ◎

 人文研の日系団体実態調査では、調査員18人が2年半がかりで500カ所を訪問し、142項目に及ぶ聞き取り調査を実施した。団体の活動状況については「大変活発」「活発」「普通」が約6割を占める一方、残り約4割は課題を抱え、活動継続に危機感を募らせている。特に、地方では後継者不足が深刻化していると見られ、青年部を有する団体は22%に留まった。一方、02~18年の間に新たに23団体が発足したという明るい兆候も。これは日本移民百周年(08年)の影響と見られる。また、過去5年間で施設の新設、増築、改装をした団体は62%で、一世が建てた会館が二世の代になっても大事に使われていることが明らかになった。ここを拠点に繰り返し日系イベントが行なわれることで、全伯で親日派ブラジル人が醸成されているようだ。

 

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