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大耳小耳

 1938年に創刊した短歌誌『椰子樹』(椰子樹社、多田邦治代表)の第380号が3月に刊行された。イビウナの瀬尾正弘さんの「元祖となりぬ」10作の先頭には《それぞれに大望いだき移住せしコチア青年二千五百人》。たしかに子孫からすれば、一世は全員元祖だ。《移民老い縦書読者消え失せてついに倒産日語新聞》《亡くなれば貴重な蔵書贈与され盛んになりゆく古本市は》(神林義明)は、『椰子樹』や本紙にとっても他所事でない内容。《ブラジルのメトロよきかな混み合うも必ず席を譲る人あり》(峰村正威)にも納得。《昼の月寝ぼけた色に西の空あの裏側に探査機着きしと》(住谷久)。言われてみれば確かに、一見いつもの寝ぼけた色の月に見えるが、裏側に中国の探査機が着陸していると思えば、なにか不穏な雰囲気が漂うかも。

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