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県連故郷巡りカリフォルニア=150周年、満砂那(マンザナー)に平和を祈る=《2》=「保険入れず、金も借りれず」

全米日系博物館で山田ロッキーさんから白熱した説明を聞く一行

全米日系人博物館で山田ロッキーさんから白熱した説明を聞く一行

 ロスの全米日系人博物館で、ガイドの山田ロッキーさんは「まず日系人の定義を確認します。日本から離れて住んでいる日本人およびその子孫です。僕も日系人です」というと、一行からは「一世は日本人、二世からが日系人では」との異論が飛び、「ダニエル井上もそう言っていましたが、ここではそう定義しています」と繰り返した。
 「アメリカ日系人はハワイでは六世、本土では五世が生まれ育っている時代です」との説明に、一行からは「ブラジルでは2008年に六世が生まれていた。どうして早く移住が始まったアメリカの方が、世代が若いのか?」との質問が飛ぶと、「五世世代が中心になっているという意味です」とのこと。最初から伯米比較問答が興味深い展開となった。
 1868年にハワイへ渡った元年者を先頭に、1880年代はシアトルの鉄道工事に多くの日本移民が従事した。その後日本移民は南下してサンフランシスコで農場労働、さらにロスへ移動してここが全米で一番日系人が多い場所となったそう。日系人口は25万人前後もいるという。ロッキーさんによれば「駐在員は4万人あまり、留学生と永住者は1万人いないぐらい」とのこと。ブラジルとは比較にならないぐらい駐在員が多い。
 「アメリカには神社をカルト(異端的宗教)だと考える人々がいる。だから、本土には非常に少ない。シアトルの椿神社ぐらい。ハワイには金毘羅神社もある。だからロスにぜひ大宰府天満宮を作りたいと思っています」と語ると拍手が湧いた。天皇陛下をトップとする皇軍と戦ったアメリカとしては、そのような歴史的な遺恨が残っているようだ。
 アメリカ椿大神社は、ワシントン州にある神社で、1987年に戦後北米初の神社としてカリフォルニア州ストックトンに創建され、2001年からワシントン州シアトル近郊のグラナイトフォールズに移転したという。ちなみにブラジルには記録上11の神社、さらに靖国講がある。
 アングロサクソンからの人種偏見を受け、米国の日本移民は互助組織を作った。「その一つが県人会。42都道府県人会がある。古いものは1890年ぐらいからある。私が属している福岡県人会も600世帯が会員。昔、日本人は健康保険に入れてくれなかったし、銀行も金を貸してくれなかった。だから県人会が頼母子講をやってお互いに助け合った」と興味深い歴史をふりかえった。
 ロッキーさんは「1941年12月7日朝、真珠湾攻撃が起きました。日本では8日だと言われていますが現地時間は7日です。アメリカでは今も闇討ち攻撃だったと思われています。2001年までは、ことある毎に『リメンバー・パールハーバー』という言葉を聞かされてきた。それが911以降は、イスラム教徒になっている。矛先がアラブ人に向かっている」と現在の米国の政治の在り方に警鐘を鳴らした。(深沢正雪記者)

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