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サンパウロ市=使用済みの油で石鹸作り=環境保護と収益増の試み

使用済みの油で作った石鹸と油の回収を呼びかけるステッカー(6月28日付G1サイトの記事の一部)

 サンパウロ市極南部のジャルジン・サンルイス区で、使用済みの食用油で石鹸を作ったり、環境保護などに関する講習会を行ったりしている団体がある。同地区出身のレナト・ロッシャ氏が代表を務めるコレティヴォ・デッド・ヴェルデだ。
 下水や川に流れ込んだ食用油は、環境汚染の主要因の一つ。サンパウロ州水道公社によると、食用油1リットルを捨てると、2万リットルの水を汚染するという。
 同団体のオレオ・ヴィヴォ(生きている油)計画は、揚げ物などをした後の食用油を手作り石鹸と交換したり、講習会やワークショップを行ったりして、環境汚染防止にも務めるというものだ。
 ジャルジン・サンルイスなどの極南部は、通勤通学にも時間がかかり、仕事から帰って来るのが遅くなる主婦の多くは、手早く調理出来るという意味で、揚げ物をよくするという。だが、揚げ物をした油を流しやトイレに捨てれば、配水管を詰まらせたり、川や貯水池を汚染したりする。
 竹を使った建設などについて学ぶ機会もあったレナト氏は、環境保護や持続可能な生活形態などに興味を持ち始め、リサイクル資材を用いた建設などにも挑戦した。
 だが、都市郊外に住む人々の日々の生活と持続可能性とを結び付けられないかと考えた時、目にとまったのが、各家庭で出る、捨てるばかりの食用油だった。廃油を捨てる方法や再利用の仕方を考えていた時に思い出したのは、レナト氏が子供の頃、近所にいたマリアと呼ばれる婦人が石鹸作りをしていた事だ。
 捨てるだけだと思っていた油を石鹸や知識という別の価値を持つものと交換する習慣の存在に気づいたレナト氏は、食用油で石鹸を作る習慣や文化は「郊外の人達の間の大衆無形文化財」で、関心を持った人達が持ってくる植物油での石鹸作りや講習会、ワークショップ実施は「物々交換による経済活動」だという。
 地元で行われているプロジェクトの事を調べろと言われた子供40人が活動の事を教えてくれと頼んできた時は、子供達が持参した食用油280リットルと交換に、環境などに関する講義とワークショップを行った。
 ワークショップでは石鹸も作ったりするが、こういった働きを通して、ソーダなどの化学薬品を使う時もゴム手袋などの安全用具を使わない人が多い事に気づき、住民を指導した事もある。

コレティヴォ・デッド・ヴェルデで働く婦人達と同団体の畑(6月28日付G1サイトの記事の一部)

コレティヴォ・デッド・ヴェルデで働く婦人達と同団体の畑(6月28日付G1サイトの記事の一部)

 地域の人が持ってくる食用油(約100リットル/月)は、石鹸を作ったり、バイオディーゼルの製造工場に売ったりする。石鹸や油を売って得た収益は、活動費や畑の維持費、住民の石鹸作りや環境保護の支援などに用いている。
 コレティヴォ・デッド・ヴェルデで石鹸作りを担当する婦人3人は北東部などの出身で、同団体の活動を通して収入を得るが出来るようになった事に感謝すると共に、自分達の活動が、孫達が自分の年になっても、近くの貯水池の水質や水量が保たれ、飲み水に困らずにすむ事を助けるはずと信じて疑わない。
 手に職をつけ、郷里にいた頃の夢だった勉学の機会も与えられたフランシスカ・ドス・サントス氏は、石鹸工場の成長、他の人に石鹸作りを教える事などを新たな夢とし始めている。(6月28日付G1サイトより)