ホーム | コラム | 特別寄稿 | どうなってるの? ブラジル政治=半年過ぎたボウソナロ政権=聖市在住 駒形 秀雄

どうなってるの? ブラジル政治=半年過ぎたボウソナロ政権=聖市在住 駒形 秀雄

 上を見上げれば、今日も抜けるような青い空。気温は快適。さて一仕事しようか、という様な良い陽気です。
 それで何か面白い話しでもないかと街に出てみますが、良い話はどこへ行ったのか、さっぱり聞こえて来ない。
 「腕が痛くて上げられなくなった」「こっちは金欠で首が回らないよ」と昔の勇士達が冴えない顔で話しています。
 これもそれも、長引く不況を招いた政治のせいじゃないのか? 「不正や汚職を追放して清く正しい社会を造る」と宣言していたボウソナロはどうしているんだ。期待の政権が誕生して6カ月にもなるのに、「一体何をしているのか、我々にはさっぱりわからない」。その効き目が見えて来ていない。
 でも、そうグチを言ってみても何も良くなりません。自分の利益ばかりを目指している悪党政治家どもの話には全く呆れるばかりですが、これも自分達が生活しているブラジルの現実なんです。仕方がない。それはそれなりに理解して、自分で生活の方策をたてねばなりません。
 と言う事で今回は「ブラジルの面白い話」と半年経過した「ボルソナロ政権の業績(?)」などを皆様と一緒に検証してみましょう。

服役者が高級リゾートで休暇?

 日本では連れ合いのいる議員が一寸浮気をしたというだけで、「議員の品格を汚した」と議員辞職に追いやられますが、ここブラジルでは有罪判決を受けた後でも「議員職」を続けられるようで、日本とは〃常識〃が違うようです。

服役中なのにカリブの高級リゾートで休暇をとろうとした上議(Foto: Rodrigo Viana/Senado Federal)

 ブラジル北部、ロライマ州選出のセナドール(上院議員)のアシル・グルガク被告(PDT)は「公共資金の不正操作」という罪名で、ブラジリア連邦地裁から4年6カ月の有罪判決を受けました。
 しかし、それが手続をへて「自宅服役」と言う方式になったのです。「自宅服役」の場合、夜は所定の住所(自宅でOK)に帰って寝るというだけ、昼は自分の仕事が出来ます。
 このセナドールは「アマゾナス銀行」(株式の大半を連邦政府が所有)から提供された資金(52万5千レアル)を自分の経営するバス会社に使ってしまい、これが有罪(公金横領?)とされたのです。ですが、その判決後も上院議員として登院、活動を続けているのです。
 なるほど、刑務所が足りないこの国では「人材活用」のよい方式かも知れませんが、服役中の者が昼は上院議員の仕事をしているとは、日本人には考えられないことですね。

上議が泊まる予定だったカリブ海の高級リゾートホテル(en:User:Op. Deo [Public domain])

 この話まだ、続きがあります。このセナドールは相当話の上手い人らしく、担当の裁判官に話して国外旅行の許可を得ていました。時期は7月半ばから8月上旬まで。行く先は高級リゾート地として知られるカリブ海の島です。
 この島のホテルは一泊4千レアルもするのです。「え、服役中の身で家族揃ってカリブ海で休暇?」。これを知った周りが騒ぎ出しました。
 ついには検事が請求をして、この休暇旅行の許可は取り消しとなりました。計画中止で憮然となったセナドールの言葉は、「我が家ではカリブ海の休暇は恒例行事なんだ。国の金ではない。自分の金で行くのに何がまずいのかな。第一わしは、これに関して法に触れるようなことは何もしていないんだよ」というもの。
 なるほど、セナドールともなると、私共とは〃常識〃が違うのかもしれません。

大統領機に大量のコカインが

 セナドールのニュースが流れた同じ日、もう一つBOMBA(爆弾)、驚きのニュースが流れました。

噂の大統領専用機(Isac Nobrega/PR)

 ボウソナロ大統領専用機の予備機乗員(空軍パイロット)が大量のコカインを隠し持っていたとして、スペインの警察に身柄拘束されたのです。
 この男はブラジル空軍の軍曹で、大統領専用機の乗り組員として働いて来ていました。コカインは小分けにされていたが、全部で39キロもあり、個人用なんかではないのは明白です。
 日本へ行く途中だったボウソナロ大統領は激怒して「厳正な取調べと処罰を」と指示しました。ですが、醜態は覆い隠せません。
 丁度G―20で各国首脳の動静に注目が集っていた時期でもあり、ニュースは世界中に流されました。外交的配慮もあってか、細部は公表されていませんが、同軍曹がブラジル出国する際は何のチェックも受けた様子がなく、量が多いこともあって、どうも「これが初めてでは無いのでは?」とすら疑われています。
 大統領はG―20会合を終えて日本を出国する際、この件について聞かれ、「言語同断、国や栄光ある空軍の名誉を大きく傷つけた。男はスペインでなく、インドネシアの警察に逮捕されればよかった」と語っています。
 インドネシアでは麻薬持込は厳重禁止で死刑もあります。先年、ブラジル人の青年がやはりコカイン持ち込みで現地警察に逮捕され、ブラジル政府の助命嘆願もむなしく、死刑執行された例があったのです。
 この件もブラジル公務員(兵士)のモラルの低さを示しているようですが、他方、「この様な行為を永年にわたり許すような環境、職場のたるみがあったのでないか」と指摘されるところです。日本だったら当然、上司の「監督責任」が問われるところですよね。

アマゾンの自然保護か開発か

 ボウソナロ大統領は選挙運動中から「アマゾンを開発する。広大なジャングルを放って置くのでなく、これを農地に変え所得を増やす。自然保護区にある鉱物資源も採掘活用しなくてはならない」と唱えていました。
 一方、自然環境保護グループは「地球の肺、生命の源たる水を生むアマゾンの自然を守り、人類の生活を守ろう」と運動を続けており、ノルウエー、ドイツなどは「アマゾン基金」に相当額の出資をして、援助をしていました。
 その一環として、ブラジルの自然破壊行為にも意見を述べて来たのですが、ボウソナロはこれが気に障ります。
 「アマゾンはブラジルの国土だ。その活用について他国からの干渉は受けない。(俺のものを俺が処理するのに何処が悪い、口をだすな)」と主張します。
 口だけなら良いのですが、実際に自然保護機関を縮小したり、予算を減らしたりし、逆に樹を切り、牧場を広げるような政策を実行しました。EUなどヨーロッパ諸国はこれに大いに気を揉み「フランスが暑いのもそのせいでないか」と抗議してます。

G―20前にはメディアを通して環境問題で言い合いをしていたマクロン仏大統領が隣に座り、神妙な顔で水を注いでもらうボウソナロ大統領(Frederico Mellado/ARG)

 日本で開かれたG―20会合の際、ブラジルのボウソナロはフランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相の間に並ぶことになり、その顔が見ものでした。ですが、そこはみんな大人同士、「自然は保護しましょう。秩序ある資源活用は認めましょう」という風にその場は切り抜けたようです。
 そのせいかどうか、EU(欧州連合体)とメルコスール(ブラジル、アルゼンチンなど)との相互貿易協定も合意でまとまり、後は各国議会の批准を待つだけとなりました。経済危機で困っているアルゼンチンには、この合意は「救いの神」大きな期待が寄せられています。

ボウソナロ政権の評判は

 さて、そんなこんなで早くも半年が過ぎたのですが、小さな波風は立ったものの、大きな改革は何も出来ていません。
 前政権からの鳴り物入りの「年金改革」は未だに連邦議会の票決にすら掛けられず、へたしたら来月になりそうです。
 教育省や内閣府の人事を変えたり、議会が「ノー」と言った銃器所持緩和法を、またもや大統領令で実施させようとしたり、この内閣は一体何をやりたいのか、一般国民には見えてこない状況です。
 「どうもパッとしないな」と思う国民の気持ちは6月19日発表の世論調査にも表れています。(表参照)
★ボルソナロ内閣支持率は、50%近くから32%に下がり、逆に支持しない層が11%が32%に上がりました。
★ボルソナロ自身への信頼度についても「信頼する/信頼しない」がほぼ半々、中々厳しい評価が下されています。
 国民の不満は「金の回りが悪い」「仕事がない」「病気になったら困る」などに集約されています。
 揺れるボウソナロ政権。このまま支持率が下がり続けて行くのか、はたまた何とか新施策で国民の信頼を取り戻せるのか? その境目に立たされている様です。

力強いブラジル、政治を

 ブラジルには世界の強国になれる基礎条件は揃っています。初めに述べたなじみやすい気候、広い国土、豊富な天然資源などなどです。これを生かし、経済を活性化し、2億1千万の国民にやる気を起こさせるのです。
 ボウソナロが尊敬すると言うアメリカのトランプは「グレート アメリカ」を作ろうと声を張り上げています。支持者は「そうだ!」と熱狂します。ボウソナロにもこのような基本線、大きな政治の方向付けが期待されます。
 ここで一つ、コロニアの長老、古川さんのご意見を聞いてみましょう。
 「ブラジルの政治にもこの様に、よくも悪しくも国民を一つの方向に引っ張って行くリーダーシップが求められる。戦争の廃墟の中から立ち上がった日本。貧しい人間ばかりがひしめいていた国を『経済発展』でまとめ上げた中国。いずれも政治が上手く機能して他国に一目も二目もおかれる強国になった。各自てんでんバラバラで方向が定まらないブラジルの手本だ」。
 『アマゾンの樹を切って牛を育てる』とか『F―1レースをリオでやろう』とか突飛な言動で注目を集めるだけでなく、もっと国の基本に関わるような大号令をかけねばならない。
 『力強いブラジル』を作ろう=『Vamos Criar BRASIL FORTE』とか『ヴァーモス ブラジル』とか、スローガンを掲げて国民の力をその目的に向かわせるんだ。
 大規模農業は既に各企業がやっていて力がある。政府としては、中小規模の家族経営農家に支援、振興策を取れば良い。工業については、ここ数年の不況のため技術革新に取り残された部分がある。これを充実させるんだ。
 こうして今1300万人もいると言う失業者に職を与え、国民の多くに『働くことの喜び』を感じさせるんだ。若者に仕事と希望を与えて、『仕事は無い、金も無い、後は悪の道しかない』と言う層を無くするんだ。そうすれば、この国は必ず良くなる」
 さすが苦しい時期を生き抜いた長老・古川さん、力強いブラジル=BRASIL FORTEの方向明示でした。(感想、ご意見などは此方へ==〉hhkomagata@gmail.com

image_print

こちらの記事もどうぞ