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日本文化という特権的な遺産=国際日系デー記念の講演会=(下)=「若者はまず日本を体験すべき」

 今講演会は、昨年ハワイであった「第59回海外日系人大会」で6月20日を「国際日系デー」に制定したことから、第1回記念イベントとして開催された。企画はブラジル日本青年会議所(和田ルドルフ理事長)とSBGC(Sociedade Brasileira de Gestao e Conhecimento)。
 冒頭、司会の西村リカルドさん(青年会議所)は昨年6月、サンパウロ新聞主催の「日伯懸け橋プロジェクト」(協賛:竹内運輸工業、ワールドリンクス)により、日系若者15人と共にハワイの海外日系人大会に出席した際の経験を話した。「ハワイでは八、九世の世代になり、日本人の顔ではなくなっても日本の文化遺産を持っていた。それを見て、どうしたら我々も文化が維持できるのかと自問し、そのための取組みをはじめた」と講演会の開始動機を説明した。

クロヴィス・デ・バロス・フィリョ教授

 USPコミュニケーション美術学部のクロヴィス・デ・バロス・フィリョ教授は講演で「皆さまコンバンワ! 私は40年前、ここで日本語を勉強しました」といきなり日本語で語りかけ、聴衆を驚かせた。
 倫理学を教えて世界各地を講演旅行で飛び回る中、特別な体験をしたのが東京―北京間の飛行機だった。
 「離陸したすぐ後、前の座席の日本人が私に向かって『背もたれを倒していいか?』と許可を求めてきたことに、心底驚いた。世界中を飛び回っているが、初めての体験だった。倫理を教えている私ですら、問答無用に座席を寝かせる。その言葉に相手を思いやる気持ちを感じ、『これが日本人の哲学だ』と感動して本を書いた。日本は『親切の精神』を世界に輸出しなくてはいけない」と昨年6月に刊行した『Shinsetsu: O poder da gentileza』(eBook Kindle)の説明をした。
 「あなた方の祖先が、世界の他のどこでもないブラジルへ来たことは幸せだった」と日系社会を称賛した。
 質疑応答で、ゴメス氏は両国の共通点は何かとの質問に対し、「日伯はあまりに対照的過ぎる。共通点より、違いが目立つ。学校での掃除もそうだが、そのままブラジルに持って来てもダメ。適応させる工夫が重要だ」と解説。「日系人の若者は、まずあの国を実際に見て、体験し、文化的な価値を確認すべきだ。それが最初に一歩になるはず」と薦めた。

「マガジネ・ルイザ」経営者ルイザ・ヘレナ・トラジャノさん

 最後に、年商16億レアルの巨大スーパー網「マガジネ・ルイザ」を経営するルイザ・ヘレナ・トラジャノさんがマイクを握り、「日本には2回行った。文化の美しさを痛感し、勤勉さを学んだ。皆が小声で話をしており、教育レベルの高さを感じた。私もブラジルで真似しようとしたが1カ月と持たず、すぐに声を張り上げた」と会場を笑わせた。
 「日伯は文化的に対極にある存在だが、共感しあえる部分がある。日系人が謙虚で控えめであることを尊敬している。ブラジル人は日本文化を愛している」と宣言した。
 来場者の上原初江さん(66、沖縄県)に感想を聞くと「日本で生れてブラジルへ来てよかったと思える話が聞けた。日本人に生れて良かったとしみじみ思えた」と感動した様子で語った。

リカルド・ミグリアッチさん

 来場者のリカルド・ミグリアッチさん(31)は「知っている話が多かった」というので、日本文化との関わりを尋ねると「三味線を弾いている」という。海藤三味線グループで習い始め、9年前から丹下セツコ太鼓道場に所属している。日系文化団体に所属する非日系人には、今回の講演会で聞くような話は当たり前のことのようだ。改めて、このような団体の日常的な活動の重要さが伺われた。(終わり)


□関連コラム□大耳小耳

 USPのクロヴィス・デ・バロス・フィリョ教授は講演の最後に、「実は今日の昼、妻が倒れて入院し、今ごろ手術を受けているはず。本当はすぐに病院へ駆け付けたかったが、皆さんとの約束を果たすために今ここにいる。だが私の講演が終わったら、病院に行かせてもらう」と足早に舞台から降りると拍手が送られた。妻が倒れても、律儀に約束を守ろうとする辺りは、ある意味、「日本人以上に日本人」なブラジル人といえそう?!

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