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《ブラジル》保健省=無償薬の製造契約打ち切る=がん患者や臓器移植者に不安=全国で3千万人以上に影響

無償薬製造中の研究所(16日付エスタード紙の記事の一部)

 保健省が6月の下旬以降、国内の七つの公立研究所との間で結んでいた無償配布の薬(以下、無償薬)製造に関する契約を停止したと16日付現地紙が報じた。
 製造停止となるのは統一医療保健システム(SUS)で提供する無償薬19種で、公立研究所を代表する協会によると、無償薬製造停止で公立研究所の製薬部門が蒙る損失は最低でも年間10億レアルに上るという。
 製造が停止される無償薬は、肺がんや乳がんの治療に使うベヴァシズマベや、前立腺がんや乳がんのコントロールに使うゴセレリナ、腎臓や心臓の移植を受けた患者に使うエヴェロリモ、1型糖尿病患者全員と2型患者の多くが使うインスリン、C型肝炎治療薬のソフェスブヴィルなどだ。これらの薬は皆、生産性向上のためのパートナーシップ計画(PDP)の一部として製造されており、市場価格より約3割安い価格でSUSに提供されていた。これらの薬を使用する患者は、全国に3千万人以上いる。
 契約停止の対象となった公立研究所は、ビオマンギーニョス、ブタンタン、バイアファルマ、テクパル、ファルマンギーニョス、フルプなど。だが、薬剤製造は2~3の研究所が共同で行うのが普通で、公立研究所と技術提携していた八つの国際的な研究所や、国内の私立研究所も影響を免れられないという。
 保健省は、6月下旬に送付した文書は各々の研究所に関する情報を集めるまでの一時的なものだというが、エスタード紙が入手した保健省の文書は、研究所側の意向を表明する事を認めるとする一方でパートナーシップ解消を明言している。
 バイアファルマの所長でブラジル公的研究所協会会長のロナウド・ジアス氏は、「これほど一方的にパートナーシップ解消を切り出した例は1度もなかった」と語った。
 研究所側は、文書送付前に製造していた薬の納入は続くため、即座に薬の供給が止まる事はないというが、多くの資材を投じ、長年かけて研究してきた事が水泡に帰すのは事実で、「公立研究所に対する過去最大のクーデター」とも表現。今回の契約停止は、保健・医療の分野と、経済面、司法面で、種々の問題を引き起こすと見ている。
 PDPは薬の市場価格をコントロールしていた部分があり、PDP解消により、医薬品価格が急騰する可能性がある。また、保健省が医薬品を購入するための手続きは、平均で11カ月かかるため、SUSによる薬の供給が止まり、治療が継続出来ない患者が出て来る懸念も払拭できない。

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