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アマゾン90年目の肖像=「緑の地獄」を「故郷」に=(9)=90周年でチョコレート生産開始

90周年のロゴが入った組合の帽子

 1929年に南米拓殖株式会社がアマゾン開拓に乗り出した時、最初の営農作物はカカオに設定していた。だが当時カカオ栽培は失敗し、主軸となる商品作物を探して入植者は苦闘の歴史を重ねた。あれから90年、今年トメアスーはカカオ特産地に指定された。グルリと一周回って原点に還ったようだ。
 CAMTAでは、トメアスーの入植者の生活を左右した胡椒とカカオを主に取り扱う。カカオは10年前に株式会社フルッタフルッタを通じて、初めて日本の明治製菓株式会社に輸出した。
 当初は苦戦する時期もあったものの、今では総生産量の6割を同社へ輸出。輸出したカカオは、同社の「アグロフォレストリーチョコレート」や「THE Chocolate」シリーズ製品の原料となっている。カカオの注文の数は年々増加しており、「出荷している3倍の注文がありますが、今の組合員だと生産量が追い付いていない状況です」と乙幡理事長は語る。
 現在の組合員数176人のうち一世が3分の1を占めるが、70歳以上の高齢者だ。残りの3分の2は、二世・三世と非日系人がそれぞれ半数ずつ。理事会では「今までの動きとは確実に変わっていく」と見ている。
 日本人が始めた組合の体質は、一般組合員からの理解を得るのが難しくなってきている。乙幡理事長は「非日系人は文化的に個人主義が多く、組合精神をもたない人が多い。もちろん、世代を経るにつれて日系人もそうなっていく可能性が高い。組合方針を今後どうするか、今が大きな転換期です」という。
 また、世界的な視点も重要だ。グローバル化した今の時代、競争相手は国内ではなく国外にいる。ブラジルの農業はベトナムやタイよりも賃金が高く、コストがかかる。この問題への対応策も考える必要がある。
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 今年の90周年に向けて、CAMTAでは新製品を発売するという。その一つが90周年のチョコレートだ。カカオ含有量が55%、70%、80%のチョコレートをそれぞれ開発。乙幡理事長は「サンプルは出来ている」とし、「90周年の式典の時には、お客さんが購入できるように販売する予定」だという。
 また、90周年のロゴがついた組合の帽子、Tシャツ、キーホルダー、箸、温度計等を制作。既にCAMTAの事務所で販売しており、土産として購入を勧めている。その他、現在のジャム瓶の形を丸く変えて見栄えを良くすることも検討している。
 90周年事業以外に今後力を入れていきたい製品として乙幡理事長が挙げるのが、カップアイス「WAW!」だ。米国では既に販売しており、アサイとクプアスー2種類の味が楽しめる。

眞子さま直筆の署名を写したご来伯記念プレート

 この「WAW!」は、昨年眞子さまが訪れた際に召し上がったもの。眞子さまは特にクプアス―とアサイを合わせたアイスの味を気に入り、「これを『WAW!プリンセス』と商品化して売りたい」と意気込む。
 すでにフルッタフルッタ社の長澤誠社長にも試食してもらい、反応は悪くなかった様子。今後の販売に期待したいところだ。

眞子さまも味を気に入ったカップアイス「WAW!」

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 CAMTAで乙幡理事長から説明を聞いた後、実際にジュース工場を見学させてもらった。本部から車で移動して5分ほどの場所にある。ちょうど稼働時期ではなかったため、工場に人は少ない。入口には昨年眞子さまがご訪問した際の記念プレートが掛けられており、中に置いてある記帳には眞子さま直筆の名前が書かれている。
 続いて外の保管冷凍倉庫の中に入ると、ヒヤリとした寒さに息が詰まった。外が30度以上の暑さだったのに対して、中は冷下18度以下だ。ここは3千トン分の冷凍能力がある巨大な保管冷凍倉庫で、ちょうど製品が出荷されるところだった。ここから船に積まれた加工製品が日本や米国へ輸出されていく。
 今年組合は伯国公認の産業組合となってから70周年を迎えた。前身のアカラ野菜組合から数えると88年間トメアスー移住地の経済を支え続けた。パラー州で最も古い農業団体の一つと言えるだろう。「あれは日本へ出荷される荷物ですよ」と移動する荷物を指さされ、どこか感慨深いものがあった。(つづく、有馬亜季子記者)

CAMTAのジュース工場


□関連コラム□大耳小耳

 CAMTAの乙幡理事長は「今年は雨が多くて、カカオの出来は良くないね。収穫に影響が出てしまっています」と肩を落とす。今年は各地で同様の声を聞いており、農業従事者には厳しい年だ。ピメンタも同様に2012、13年に1キロ30レアルだったのが、3年前から相場が下がり今年は1キロ6・5レアル。ここまで価格の振れ幅が大きいと賭博的な農業だと感じてしまう。ピメンタ一本で営農は難しいから、熱帯フルーツを多品種生産してバランスをとるのが、アマゾン流の農業のようだ。CAMTAの製品を聖市でも日常的に買えるように、ぜひ販路を切り開いてほしいものだ。

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