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デジタル取引になった銀行の世界=「お金は怖い」でも離れて暮らせない=サンパウロ市在住 駒形 秀雄

 この世の中、大抵のことは『お金』があれば望みがかなえられるようになり、お金で立派な屋敷に住んだり、元ミス何とかを夫人にする人も居ます。でも他方では、金欲しさに手を出した事業に失敗したり、つい不正な道に足を踏み入れてしまい、まともな道から脱落する人もいます。
 このブラジルでも鉱山、地域開発などでたちまち財をなし、一時は世界大富豪番付に名を載せたような人が、その後、不正金融操作などで罪に問われ急落、現在では一犯罪者として、不自由に暮らしている人がいます。
 お金はあれば便利ですが、反面怖いものでもあります。しかし、怖いからと言って、それと縁を切って暮らすことも出来ません。毎日これと付き合っていく、いや、これを積極的に活用して自身の生活をより豊かに、また、楽しくして行かねばならないのです。
 では、AI技術の進化した私達の日常生活で、どの様なお金関連の怖さ、リスクがあるのか?
 最近の例などを見ながら、「何とか変な話に引っかからないようにするには、どうしたらいいか」、そして「万一、事故に合った場合どう対処したらよいのか?」などを愛読者の皆さんと一寸考えて見ましょう。

★銀行界はAI―デジタル・シフト

 金融銀行業界はずっと前から業務の電子化を進めており、一昔前の「銀行にGERENTEを訪ねてカフェーなど飲みながら金の話しが出来た」ような〃懐かし〃の風景は、もうありません。
 銀行の通知は全部、コンピューターやスマホなどで送られ、当然ポ語。お金の受け取りや支払いに銀行まで行く必要はありません。水道、税金、電気代も自動振込みですから、昔の様に銀行へ行く用事が無くなったのです。
 しかし、これで弱ったのは私ども日系熟年者です。余りパソコンなどは得意でないし、全部ポ語で書いてある文書は一寸読む気がしません。それに銀行の文書と言うのは我々のような一般庶民(POVO)が分かる言葉でなく、上品かつ、隙が無くキチンと書かれているのです。
 普段使うお金にしても、本当は現金の札束を持ち、自分の実力を実感したいのですが、今はそれも皆機械(ATM)。これでは銀行の係と話す必要もなく、銀行と客のつながりは薄れます。
 「あんた最近、小切手を発行してるか?」――最近、銀行から電話がありました。私、高額ならもちろん記録がありますが、小額の場合、詳しくは覚えていません。「既に決済済みの小切手が再度『支払い請求』で銀行に来ている」と言うのです。

★突然出てきた同じ番号の小切手2枚

同じ番号の小切手が2枚

 電話で分かる話でないので、早速出かけました。
 担当(GERENTE)は話をしてから、私名義の2枚の小切手(COPY)を見せました。こういうのはボタンを押せば、ただちに出てくるのです。
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 一つが、写真の下にある9月27日付けで100レアルの小切手(A)。もう一つは写真の上にある1月3日付で4200レアルの小切手(B)。既に引出し、決済済みです。
 両方とも銀行の正式な小切手(紙)で、日付やサインも私のものに見えます。ただ、おかしいのは2枚の小切手の番号が全く同一だと言う事です。
 GERENTEは「Bが正しくて、後から来たAが怪しいんじゃないか」と言います。
 Aの方は確かに私が書いたもので、受取人の記名もあります。Bの方は金額の数字、金額のポ語表記とも私の筆跡でなく、受取人の名前もありません。
 私も銀行相手だから、相当キチンとした証拠を揃えて話さねばと思い、その日はそれで引き下がりました。その後色々調べてみましたが、その辺の管理がキチンと出来ておらず、分かりません。
 決済からもう10カ月も過ぎているのに、こりゃ無理か、と気は沈みます。翌日銀行のそういう部門ともやり取りしてBの方が偽造詐取されたものとの判断に至り、損害は銀行が保障するとなりました。
 それにしても「犯人はどうやって、本人がまだ使ってもいない小切手の印刷物(紙)を手に入れたのか?」「どうやって私のサインと日付けを、この偽小切手に記入出来たのか?」。疑問は解明されて居ません。
 話を聞いたブラジル人によると「こういう不正は情報が分かる内部の人がからんで居る。また、今は精巧な機械があり、小切手の再生(偽物)などはお茶の子サイサイなのだ」とのことでした。
 不正引出しに気付かなかったのもまずいが、取る方が一枚上手。「何ともはや」のお話でした。
 皆様もたかが紙一枚―小切手と侮らず、御用心、御用心。

★見知らぬ人にも御用心

 10月に入って先週のことでした。私はリベルダーデ・メトロ駅の階段を下りていました。そこへ反対に階段を登って来る中年のブラジル人が声を掛けて来ました。「オー ジャポネース トードベン?」。私は一見したが知っている人ではないので無視して先を急ぎました。
 翌日、メトロ・サンジョアキンで降りてヴェルゲイロ通りを歩いていると、このときも反対側から来た男が「オー、コモヴァイ、あれは上手くいったかい?」と微笑んで来ます。これを無視して次の角を曲がったら、又別の男が同じように話し掛けて来ます。いかにも親しげに話したそうに見えました。
 このことを後で他の人に話したら、「今そういう人が増えている。話し掛けられても『誰だったかな?』などと立ち止まって相手してはいけない。特に目を向けてくるから、相手の目を見てはいけない。そういう人は催眠術(HIPINOTIZAR)のような手を使って相手を自分の側に引き込んで来る」のだそうです。
 事実、日系の熟年婦人はこういうのに引っ掛かり、「気が付いたらしらない事務所の中に入っていた」と言います。そこで、はっと我に返りスキを見て逃げ出したので被害には遭わなかった、と言いますが、これまた、危ない話ですね。

★何でも電子化で不安な老人

コンピューター取引が一般化して、だんだん姿を消す紙幣(Foto: Marcos Santos/USP Imagens)

 銀行の業務などは何でも電子化され、銀行には好都合でしょうが、私のような前世紀人は難儀をしています。銀行からの通知などは、昔は印刷されて来ていたから、大事なことは読んでいます。今はメールで通知されるので見落とすことがあります。銀行のお金の出入り、カードでの買い物の中身などは、今は印刷された通知は無く、自分でパソコンなどで見ないとなりません。
 以下、サンパウロ在住の日本人、古田さんの話です。古田さんには年金が重要な収入源で、銀行口座自動振込みになっています。
 「年金は国(INSS)がやっているのだから、金額や日時も間違いなく振り込まれる。いちいちチェックしなくて良い」と安心して、その金を利用していました。
 しかしある時から口座の残高が低くなったようで、「何かの入金が遅れているのかな?」位に思っていました。しかし、更に1カ月後くらいになっても年金の入金がないようなので、『誰か他者の口座に振り込まれてる? それとも、どこかで消えてるのか? ここはブラジルだからな』と心配になりました。
 古田さんは銀行へ行き、担当(GERENTE)と話しました。担当者曰く、「あ、それは本人が間違いなく生きていて年金を受け取っている、と言う証明が必要なんだ」とのこと。
 「こちらで手配して置く」と言われました。こっちは頼みのつなの年金が止まっている。何処かへ行っているのかと心配しているのに、他人事扱いして、いとも簡単に応対する銀行担当を見て、古田さんは自分でINSSと話をしよう、と思いました。
 INSS年金支所は問題を抱えたような人で溢れており、長い待ち時間がありましたが、ついに直接係りと話すことが出来ました。
 「貴方の年金は受取人がハッキリしないと戻されて来ている」と言われ、「ギョッ」としました。「俺は年は取っているが、間違いなく生きている」。結局、溜まっていた分も含め支払いを正常化することで了解、決着しました(有り難や、有り難や!)。
 年金受給者は「間違いなく本人が年金を受給していると年に1回とか証明せねばならない」のですが、その通知が何らのことで届かなかったか何かで、このようなトラブルが起きたのでしょう。いずれにしてもボンヤリしていては、虎の子の年金までどこかへ行ってしまうような話ですね。

★ユーザーに優しい対応を

 現今の世の中、色々なことが目まぐるしく変わって行きます。お金を扱う方もデジタル化でカード、暗証番号などと変化します。一方、他人のお金を狙う方も、精密なコピー技術、心理学に基づく対人接触などドンドン進化していくようです。

★銀行、年金局などに対する要望

(1)お客に対する通知などはDIGITAL利用はOKだが、ポ語の他にボタンを押せば日本語も出るような仕組みを採用願いたい。機械の説明書などこの方式にしている。特別なことではない。
(2)各窓口で日本語は無理だから、どこかサービスセンターを置き、そこへ電話すれば日本語で応対するスタッフを置く様にできないか?(ある病院では患者のために、医師の言葉を通訳するスタッフを置いているところがある)
 親愛なる日系友人の皆様、「お金は怖い、でも縁を切って暮らすことも出来ない」のです。昔の元気を出して、トラブルが起きても正面きって解決して行きたいものですね。(お便りはこちらまで。メール=hhkomagata@gmail.com

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