ホーム | コラム | 特別寄稿 | 苦境アルゼンチンに新大統領=48%の支持得たフェルナンデス氏=聖市在住  駒形 秀雄

苦境アルゼンチンに新大統領=48%の支持得たフェルナンデス氏=聖市在住  駒形 秀雄

アルベルト・フェルナンデス氏(Casa Rosada, Argentina Presidency of the Nation)

 10月27日行われたアルゼンチンの大統領選挙でアルベルト・フェルナンデス氏(60歳)が当選しました。再選を目指していた現職のマクリ大統領(得票40%)を破っての登場です。
 ブラジルではアルゼンチンと言うと、すぐ『サッカーの好敵手』と思い浮かべますが、2国は経済的、文化的に大きなつながりがあり、隣国アルゼンチン(以下亜国)の盛衰は、ブラジルに大きな反応を齎すことになります。と言う事で、以下その状況をチェックしてみましょう。

★重要な隣国アルゼンチン

 亜国とブラジルは相互に重要な貿易相手国(中国、米国などに次ぐ第3位、4位の貿易量)で、この隣国を抜きにして自国の経済を語ることは出来ません。
 今年亜国が経済不振のため、ブラジルからの自動車やその部品の輸出が大きく滞り、ブラジルの自動車生産が停滞する原因となりました。
 一方、ブラジル人は毎日亜国から輸入した小麦のパンを食べていて、旨い肉やリンゴも亜国産です。夏になればブラジル南部諸州には亜国旅行者が満ち溢れ、サンタカタリーナの海岸などは亜国人で一杯になること皆様御存知の通りです。
 そして今後ともMERCOSUL(共同市場)としてヨーロッパ、日本との貿易拡大を狙っていかねばなりません。サッカーでは「ペレか、マラドーナか?」と世界的大選手の名誉を争っても、国同士としては仲良くやっていかねばならない事は明白です。

★フェルナンデス氏はどんな人?

クリスチーナ・キルチネル元大統領(右)と当選を喜ぶフェルナンデス氏(FrenteDeTodos/media)

 新大統領に当選し、12月10日に就任するアルベルト・フェルナンデスさんとはどんな人でしょう?
 彼は首都ブエノス・アイレスで大学(法科)在学中から学生政治活動に参加していました。政治家としては右よりの軍事政権から、左よりのペロン政権に協力し、その時の権力勢に応じて変わり身が早いので『カメレオン』と呼ばれたこともあるほどです。
 今回の選挙では前々回の大統領だったクリスチーナ・キルチネルさんによばれて立候補したため、さては「クリスチーナの操り人形」(マリオネッチ)になるかと思われていました。ですが、「そうではない」と言う見方もあります。
 今は、主義主張は若干異なっても仲間の力を増やし、権力を握ったら徐々に自分の考えを前面に押し出して行くのでないか―と見られています。

亜国のコスプレ業界では「Dyhzy」として有名な、フェルナンデス氏の息子(Reproducao/Instagram)

 ですから、今の段階で「人気とりの左翼」とか、『ペロニスタ』とかレッテルを貼ってしまうのは早計だと思われます。
 面白い付録を言えば、同氏には一人息子(24歳)がいます。彼はコスプレスター〔写真〕として知られた存在だそうです。

★新事態への反応は

 ある程度予想されていた事とは言え、現職大統領の落選、ペロニスム(左翼、人気取り)の勝利は、やはりそれなりのショックを与えました。
 現職マクリ氏の勝利に賭けていたブラジルのボウソナロ大統領は、「新大統領当選にオメデトウをいう気はない。アルゼンチン(人)はまずい選択をした」とコメントしました。左傾化を嫌うアメリカ政府さえ、「新大統領当選おめでとう。よろしくね」と、ちゃんと大人の流儀で外交的挨拶をしています。それに比べると、ブラジルは随分本音まるだしの挨拶をしたものです。
 しかし、個人的にどう思おうとも、今後もブラジルはこの毛色の違う隣人と仲良くして行かざるを得ません。中国も日本も近年中にも首長級が南米を訪問してMERCOSUL(共同体)との交易拡大を意図しております。
 ブラジルとしては亜国を『共産主義カブレの悪党どもは嫌いだ』などと反対側に追いやらず、「ブラジルも亜国もMERCOSULの中核としてガンバロウじゃないか」と手を結ぶ努力をしたいところです。
 それに、希望も見えます。選挙中は激しく争って来たマクリ現大統領とフェルナンデス新大統領は28日早速会談しています。
 「政権移譲をスムーズに行い、経済面での破綻を生じさせない」という目的のためです。
 政変の度にすぐ米ドルを買いに走る亜国人に対しては、「個人による米ドル買いは一人、月200ドルまで」と早速手を打っています。
 まず、政変による人心の混乱を鎮め、亜国人を落ち着かせる施策が求められるところです。
 折りしもフェルナンデス氏当選確定の10月28日はサンジューダス・タデウの聖人の日でした。この聖人は『不可能を可能にしてくれる神様だ』と信じられています。
 アルゼンチンとブラジルも南米諸国も、皆一緒にこの苦境を乗り越え、可能性に満ちた明るい未来を築いて行きたいものです。〔ご意見はこちらへ =〉 hhkomagata@gmail.com

7月4日にクリチーバ連邦警察でルーラ元大統領を慰問し、「ルーラ釈放(Lula Livre)」を意味するLマークをするフェルナンデス氏(Foto: Ricardo Stuckert)

image_print

こちらの記事もどうぞ