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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(181)

 6月14日、午後1時に初めの3人の尋問を始め、その日以降は土、日を除く毎日同時間に起訴書にある名前順に、被告人が3人ずつ尋問を受けるはずだった。大変合理的なやり方といえる。カヴァリァル判事によれば、1週間に15人、1ヵ月に60人、順調にいけばわずか6ヵ月で全ての被告の尋問が終ることになる。
 ところがことは予定通りに運ばなかった。事務的問題が生じ、判事は6月31日からはじめるはずだった尋問を9月25日まで延期せざるをえなくなり、尋問開始が3ヵ月も先になってしまったのだ。
 9月25日、午後1時、検察局から最初に呼び出しを受けた吉迫もんごがカルヴァーリョ判事の前に立った。ところが、尋問を始めることもできなかった。被告人は全くポルトガル語が話せなかったからだ。尋問は27日に延ばされ、通訳にジョゼ・サンターナ・ド・カルモが法廷に呼び出された。4年前、カルドゾ署長が臣道聯盟の会員を調べたとき通訳をした人物だ。
 1950年9月27日、最初の被告人吉迫もんごが裁判を受けた。彼は大分県出身でバロン・デ・ドゥプラット街、119番に住み、臣道聯盟の会員ではなく、暗殺に全く関係ない下宿の主人だった。
 最初の被告人は予定通り尋問を受けたのだが、カヴァリァル判事が計画したように検察局のリストにしたがい、1日に3人尋問するなどとうてい無理だった。執行命令が被告人の住む町に届くのが遅れたり、以前警察の取調べを受けたときの場所から移転していて、第1刑事裁判所が指定した日に出頭できなかったりしたからだ。

 それまで、正輝は法的裁判が行われていることなど全く知らなかった。臣道聯盟との関わりでブラジル当局に検挙され、その後、釈放されて以来、すでに3年も経っている。
 1947年のはじめ、養育しなければならないブラジル生まれの子どもがあるという書類を提出し、国外追放の危険はなくなった。それが警察の最後の要請だった。全て終ったことなのだ。彼自身日本が戦争に負けたこと認めるようになったのだ。何のために法的裁判などという話しに首をつっこむ必要があろうか?


第11章  破れし夢

 日本移民ほどブラジルの生活に順応するのに苦労した移民はいないだろう。体位の差、言葉のちがい、西洋系のものには理解できない文字。習慣も同じように彼らに違和感をあたえ、そのため日本移民は孤立した。
 戦時中は、ブラジルの敵国だったばかりでなく、日本が勝ったという誤った認識をする者が圧倒的に多かった。ために日本人が集中して在住するところでは、人種差別の潜在意識を醸成した。それがオズワルト・クルースの日本人への攻撃という形で現れたのである。幸いこうした事件は他の町に広がることはなかった。
 こんなブラジル社会に順応するむずかしさとともに、正輝のような沖縄人には、内地の者に受け入れられないという困難もあった。県別では沖縄移民がいちばん多いのだが、日本全国からきた移民に比較するとその数は少ない。全ブラジル移民の10~12%にしかならない。いかなる県でも沖縄ほど多くの移民を送り出したところはないが、内地の全移民からみると、ごく少数ないのだ。

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