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復興する福島を海外に伝える=移住者子弟の受入研修=(3)=震災を乗り越えた鈴木酒造

コミュタンで記念の集合写真

 農業総合センターを後にし、一行は福島県環境創造センター交流棟(通称・コミュタン福島)へ向かった。環境創造センターは2016年7月に開所し、県民が将来にわたって安心して生活できる環境を創造するための総合的な拠点となっている。


 その中でコミュタン福島は、県内外の人が放射線や環境問題を身近な視点から理解し、環境の回復と創造への意識を深めてもらう役割を担う。施設には、放射線や環境の現状に関する展示の他、360度全球型シアターも設置されている。

福島第一原子力発電所の事故直後を再現した模型の説明を聞く様子

 施設を案内してくれたのは、スタッフの菊地栄子さん。まずは『ふくしまの3・11から』の展示エリアで、東京電力の福島第一原子力発電所の事故直後を再現した模型を見ながら当時の状況の説明を受けた。

3・11クロック

 『ふくしまの環境のいま』のエリアに移動すると、『3・11クロック』が目に入る。福島県が震災後から環境の回復と創造に費やしてきた時間が、生々しく感じられる展示だ。
 その先が『放射線ラボ』のエリアだ。目に見えない放射線に関する知識を、5つのコーナーで学ぶことができる。

『霧箱』の中で放射線が空気中を飛んでいる様子

 特に一行が関心を寄せたのは、『知るラボ』にある『霧箱』装置で、放射線が空気中を飛んだ跡が肉眼で見えるようになっている。菊地さんが「放射線は意外と身近な存在で、空気中にもあるんですよ」と説明すると、一行はじっくりと見入っていた。
 次の環境創造シアターは球体型スクリーン全面に360度の映像を映し出すもので、東京の国立科学博物館に次いで世界で2例目の施設だ。
 『福島ルネッサンス』と題したオリジナル作品が上映され、全方向に広がる福島の豊かな自然や文化を紹介する映像を、一行は食い入るように見ていた。米国シアトルから参加した熊坂パノス・アキオさん(22、四世)は、「高度な技術や放射能について勉強になった」と感心しながら頷いていた。

    ☆
 福島といえば、バター味の生地にミルク味の餡が詰まった焼き菓子『ままどおる』が定番土産として有名。だが、国際課の中村友徳主任主査は「福島県には特産品がもっとたくさんある」とにこやかに語る。
 そこで研修生がホームステイ中の25日午前、記者はJR福島駅西口から徒歩3分の場所にある福島県観光物産館を訪問した。2017年12月に改装開店した同館には、福島県中の特産品が置いてあるという。
 この日は相双地方観光物産展『そうそう美食フェア』の開催と重なって混雑し、売り切れ品も続出していた。その館内で忙しそうに走り回っていたのが、櫻田武館長(50、福島市)だ。

福島県観光物産館の櫻田館長

 櫻田館長は東京で20年以上勤務し、改装開店と共に同市に戻ってきた。情熱的な仕事ぶりは有名で、物産館の売上を震災前年度の2億7千万円から、今年度予想を7億2千万円、約2・5倍にまで導いている。
 「福島は実は果物大国で、特に桃が有名。100種類以上の品種があるんですよ」。館長の説明通り、桃ゼリーやアイス、桃大福、桃ジュースなどの様々な桃製品が並び、その多くには品種名が書かれている。

桃の王様で皇室献上桃の「あかつき」

 主力品種は『あかつき』で糖度が高く肉厚で果汁も多い。特に桑折町(こおりまち)の桃は、皇室に26年連続で届ける『献上桃の郷』として知られているという。「ベストシーズンは7~8月。ぜひオリンピックで日本にいらっしゃる際に味わってください」。
 福島県の特産品で外せないのは何と言っても日本酒だ。日本酒の出来栄えを競う『全国新酒鑑評会』では、22銘柄が金賞に選ばれ、7年連続で金賞受賞数『1位』に輝いた。
 「この2種類は一押しです」。櫻田館長は、金賞に選ばれた22銘柄のうちの一つ、松崎酒造の『廣戸川』と、相双地方観光物産展『そうそう美食フェア』で販売されていた鈴木酒造の『磐城壽』を紹介してくれた。

福島の桃は甘みもとろみもあり、肉厚で果汁たっぷり

 ここでは、その鈴木莊司さんに話を聞かせてもらった。江戸時代末期に浪江町で創業した鈴木酒造は、震災の時に津波で酒蔵が流され、原発事故から避難せざる負えなかった。「酒も全部流された」と絶望したが、奇跡的にも「県の試験場に酵母が残っていた」。現在は山形県長井市で酒造りを行っているという。
 「元々漁師が食べる干物に負けない、料理に寄り添った酒を造っている。塩気が強いシュラスコにも良く合いますよ」。そう言って進めてくれたのは、『磐城壽 純米あかがねラベル』。口当たりは柔らかいが、スモーキーで存在感がある。

桃の品種ごとにジュースが並ぶ

 「しっかりと強い味がお好みならこれです」と勧めてくれたのは、『磐城壽 季造りしぼりたて 生酒』。飲み心地が良く、ほんのりと甘い。こちらも料理に合いそうだ。
 「いつか浪江町に戻りたいが、今の山形県の酒造で引き継いだお酒もある。どちらの酒蔵も残せるように人材育成に力を入れているところです」と鈴木さんは力強く語った。(つづく、有馬亜季子記者)

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