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ブラジルの外出自粛措置は本当に大げさなのか?

24日の政見放送でのボウソナロ大統領(Isac Nóbrega/PR)

 「州知事たちが出した外出自粛措置(クアレンテーナ)を、大統領がひとりでのたうちまわるような形で阻止しようとしている」。新型コロナウイルス(以下コロナ)が猛威を振るいはじめたという大変な時期に、ブラジルでは州知事と大統領が対立するという異様な事態が起きている。
 もともと「ひとつにまとまる」ことがあまり得意でないブラジルだが、今回ばかりは国民の73%がクアレンテーナ実施に賛成している珍しい現象が起き、54%が州知事たちのクアレンテーナ対策に満足している。
 それに対して、ボウソナロ氏の対策は35%の国民しか満足していない。つまり、前者が大幅に上回っている(いずれも3月のダッタフォーリャの調査より)。
 「ボウソナロ氏自身の対策」と言っても、基本的にルイス・エンリケ・マンデッタ保健相に丸投げという印象が強い。「コロナなんてグリピーニャ(軽い風邪)」と言い放っているボウソナロ氏本人の具体的な対策案など何も見えてこない。
 「ブラジルのマスコミや知事たちの騒ぎは大げさだ」。そうボウソナロ氏は主張する。では、それが本当に大げさなものか。諸々のデータで検証してみよう。
 25日現在、全世界においてコロナの罹患者数でブラジルは18位で、死者数で14位。現在、悲惨なまでの流行地帯となっているイタリア、スペイン、米国に比べれば、罹患者も死者もまだ10分の1にも満たない数だ。
 だが、そうした「不幸な先例」というものを先に知っていたからこそ、幸いにもブラジルは対策を打つことができた。
 例えばイタリアでコンテ首相が、同国でのウイルス震源地となったロンバルディア州全土に非常事態宣言を出した8日、同国での罹患者数は7375人で、死者366人。スペインでペドロ・サンチェス首相が同国に対して非常事態宣言を出した時、同国の罹患者数は5232人で死亡者は133人。
 19日に米国でカリフォルニア州が最初の非常事態宣言を出した時の罹患者数は1万2018人で、死者は174人だった。それが今や、いずれも罹患者が5万人を超える事態だ。
 それと比較すると、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事が20日に州非常事態宣言を出した時、ブラジルの罹患者は904人で死者は11人だった。上記3例に比べるとかなり早いタイミングで出していることがわかる。さらに翌21日に問題の州外出自粛令を出した。
 イタリアやスペインの当初のそれよりも厳しい基準ではじまっているが、ブラジルは25日現在で罹患者2555人の死者59人と、かなり苦しんでいる。
 それでも、5日経ってもまだ、現在のワースト3国の非常事態宣言発表時の数字よりはだいぶ少ないのだから、早く手を打った効果は出ていると思う。
 ただ、せっかく、こうやって効果を出して抑制できそうだったものが、大統領が無理矢理に外出自粛を辞めさせようと発言することで、恐れていた悪い例に近づいていかないか。コラム子は今、それを恐れている。
 もちろん、大統領の言う通り、商業活動を止めてしまうことで、経済活動の停滞や失業増加は起こりうることだとは思う。だが、その議論を行うのは、せめて1カ月が過ぎた頃ではないか。
 それくらいは、クアレンテーナに賛同している国民も同様の気持ちだと思うのだが。(陽)

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