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村上さんに楽書倶楽部大賞=節目の創刊10周年記念

村上尚子さん

村上尚子さん

 日毎叢書企画出版により『楽書倶楽部』第53号が15日付で刊行され、第2回「楽書倶楽部大賞」が発表され、村上尚子さん(しょうこ、81歳・福岡県)が1位に選ばれた。これは2019年に5冊発行された同誌に掲載された全作品から、一番気に入った著者を読者に選んでもらうもの。
 村上さんの作品の中でも、福岡で過ごした女子高校生時代、炭鉱夫が出勤する様子などを描いた「帰ってきなはい」が特に好評だったと、発行者の前園博子さんは報告する。村上さんは「書き始めて7年になるが、ワクワクしながらあっという間に書いたのはこの作品が初めて。その想いが皆に伝わったかと思うと嬉しい」と喜んだ。
 村上さんに文章指導したのは、昨年1位の広川和子さんだった。マッサージ師を生業とする村上さんは「広川さんの文書指導の言葉は、まるでお灸のようにポンとツボに響く。これも運良く素晴らしい指導を頂いたおかげ」と独特の表現で感謝する。
 次の夢を尋ねると、すかさず「小説をもう一冊書くこと」と答え、聖市を舞台にしたディストピア世界の構想を意気揚々と語り始めた。
 今回の大賞は、読者から届いた62通の選考用紙を1月26日に開封した結果、2位は広川和子さん、3位は堀江渚さんだった。本来は、創刊10周年を記念した親睦会が4月26日に開かれて、そこで授賞式となる予定だったが、コロナのために流れた。
 今53号にも33作の読み応えのあるエッセイが掲載されている。例えば「コロナ禍で家からでないと」(伊藤喜代子)では、夫の昔話の聞き役となってパラー州時代の不思議な体験談を綴る。何百万という黒いアリの大群が、虎の子のヒヨコ小屋に迫ってくる恐怖、その後に起きた実に意外な展開が記される。
 また「行きはよいよい帰りは怖いの話」(細井まゆみ)では、リオのポン・デ・アスーカルの手前のウルカの丘に歩いて登る話。行きは調子よく登ったが、帰りに調子にのりすぎ、《「うわぁ!」と言う私の叫び声とママ!!という娘の悲鳴と同時に勢い余ってあわや崖から海の中に!!》という緊迫した場面に。
 同誌に関心のある人は、同企画出版(11・3341・2113)まで連絡を。

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