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「でも、ブラジルは良い国です!!!」=サンパウロ難民移民座談会=大浦智子 <第8回>=実は厳しいドイツの難民生活

ドイツのアブドゥルさんのお姉さん家族(左下が著者)

ドイツのアブドゥルさんのお姉さん家族(左下が著者)

――皆さんの欧米の印象はどのようなものですか? 例えば、アブドゥルさんのお姉さんはドイツにいますが、お姉さんがドイツに行く前のドイツのイメージ、そして、お姉さんが実際にドイツで直面した現実などを教えてください。
【アブドゥル】シリア戦争が始まってから、シリア人はドイツに行くことに集中しました。ドイツのメルケル首相が難民にとても同情し、共感している認識がありました。実際、彼女は難民を受け入れ、シリア人はドイツの主な難民となりました。姉や友人、知人がドイツにいるので、私はドイツで何が起こっているかを知っています。ドイツは難民をサポートしていますが、末端の真実まで明かされていません。

シリア最大の都市アレッポ(約170万人)の近郊にあるイドリブで街を空爆され、怪我人を運び出す救助隊(Foto: Civil Defense Idlib)

シリア最大の都市アレッポ(約170万人)の近郊にあるイドリブで街を空爆され、怪我人を運び出す救助隊(Foto: Civil Defense Idlib)

――お姉さんはドイツでどの様に過ごされてきましたか?
【アブドゥル】姉(36歳)はシリア戦争の中、車を運転中に爆弾が直撃し、片足に重傷を負いました。夫は戦争中に亡くなりました。怪我の治療と爆撃で荒廃するアレッポを脱し、一旦トルコに移り、そこから身重の状態でギリシア、スロベニアやオーストリアを経てドイツのミュンヘンに到着しました。

 途中、3人の子どもたちと生き別れ、自殺を考えました。しかし、無事に再会でき、ドイツに到着後、双子を出産しましたが一人は死産でした。重傷の片足は切断し、義足になりました。2015年から2016年にかけてのことです。
 ミュンヘンに暮らしていた時は難民キャンプで生活し、支援も受けられましたが、2年ほど前にミュンヘンから電車で40分ほど離れた町に移動させられ、完全に自立した生活を求められました。近くにシリア人の友人もいません。

アブドゥルさんの自宅にあるアレッポ城遺跡の写真

アブドゥルさんの自宅にあるアレッポ城遺跡の写真

 ドイツに到着した時、甥と姪は13歳、12歳、10歳で、完全に大人ではないため、苦しんでいるのを見ました。

 ドイツ政府からの補助金があると聞いても、申請するドイツ語ができません。ドイツ語を学ぶ時間も持てず、身近に支援してくれるドイツ人も皆無のままです。
 町の教会では支援対象となる難民として登録されていますが、そこの世話人のドイツ人女性は、姉が相談に行くと、目の前で書類の紙を破って丸めて顔に投げつけました。身体障害者で4人の子どものいる母子家庭を想像してください。とても悲しいです。ホスト国とは思えません。
――メルケル首相の難民受け入れには称賛の声がありましたが、現実の難民の生活は想像以上に困難な人がいると言うことですね。

 

イラク人などアラブ人の商店が立ち並ぶミュンヘンの中心街

イラク人などアラブ人の商店が立ち並ぶミュンヘンの中心街

【アブドゥル】一般にドイツやヨーロッパで何とか生き延びてきたのは、20歳以上の青年です。もし、私が22歳でドイツにいれば、自分の頭を使って一人で行動します。働くこともできるし、様々な組織に出向いて情報を得て、自分の足で立つこともできます。しかし、姉は身体障害者で4人の子供を持つシングルマザーです。
 残念ながら、姉はこれまで近隣のドイツ人から温かく迎えられませんでした。今も母子で孤立状態です。この2年間、3歳の甥の服も買えず、その事情を知って7月に食料や衣服などの寄付をしてくれたのはドイツと日本に暮らす日本人女性たちでした。姉も私も心から感謝しています。しかし、ドイツでシリア人を助けるのが、どうして日本人なのですか?
――難民受け入れ国の例としてよく挙げられるドイツですが、影の部分はあまり語られていませんね。

【アブドゥル】ドイツは強力で、技術があり、混沌の歴史のイメージで語られます。全てのドイツ人とは言いませんが、歴史的に見てもドイツには偏見があります。人々を心から受け入れる歴史がありません。ドイツ人にとって避難民はドイツ領土の侵略者です。姉も言いますが、私たちが知る限り、ヨーロッパ人は笑顔を向けても反応がなく、ドライです。

2018年にドイツのベルリンで開催された第15回国際サッカー映画祭でアブドゥルさんが出演したドキュメンタリー映像「Copa dos refugiados」(11分/2016年)が受賞。現在、Vimeo onlineで9月20日まで無料視聴が可能。

 ドイツは難民を無料で受け入れたのではなく、欧州連合(EU)がドイツに出資しています。それはドイツが難民と移民に投資していることを意味します。例えば、トルコには350万人のシリア人がいて、難民1人を受け入れるために支援金を受け取っています。その支援金がなければ、トルコは国境を開き、難民はギリシャを経由してヨーロッパに逃がします。難民を数字として見なし、心で受け入れていません。(続く)

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