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日本移民と邦字紙の絆=日系メディア百年史(12)

『聖州新報』1927年10月7日付け(日本移民史料館所蔵)

『聖州新報』1927年10月7日付け(日本移民史料館所蔵)

 もう一つの新聞は伯剌西爾時報で、これは海外興業の出資でまかなわれ、黒石清作社長は同社より移民の教育係の名を頂戴(中略)両紙とも移植民新聞ではなく、移植民支配階級の対移民御要達(編註ママ、「用達」のこと)告示であり、移民蔑視の臭気がただよった紙面であった。都会から来たものには実際森林伐採にたずさわるものの風ぼうは野蛮人としかうつらないものがあった。(中略)。都人からみればたしかに退化一路を辿る群像であったんだろう。だが、この群像の日々の戦いについての経験なくして両紙の社長さん達はこの群像をさげすんだ。彼等の旅行記はだんなの旅行記で移植民共には無関係なほがらかな旅行記であり、移民の実体を遠くはなれたものしか伝えなかった。
 最初はジンコ版(亜鉛版)刷、週1回4頁で、その年の暮れには発行部数は270部になっていた。紙型はオ・エスタード紙の4分の1型、その4頁が週1回発行、1頁は7段だった。日伯・時報の年購読料が30ミルだったので、聖報は半額の15ミル・レイスにした。
 最初に邦字紙創刊のアイデアを持ったが遅々として実現しない金子の有様をみかねて、過去のハワイでの経験から星名が先陣をきり、それに刺激されて金子が創刊に踏み切った。その2紙の批判的論調に不安を感じて、移民会社が自前の機関紙を持とうとするという連鎖反応によって、わずか1年半のうちに3紙が相次いで聖市に創刊した。
 さらにその都会的論調に温度差を感じ、日本移民が激増したノロエステ勢が独自に言論機関を持とうとして生まれたのが『聖州新報』という流れであった。

日本への通信

 邦字紙は同胞社会内での影響力という限定性があったが、そこで働く記者等には日本の新聞社の通信員も兼ねている人物もおり、日本への情報発信も行っていた。海外特派員がいなかった当時、このような現地通信は日本国内で外国事情を知る数少ない手段であり、邦字紙記者個人の力は小さかったが、現地通信の発信者という意味では、日本に対して大きな影響力を行使していた。
 例えば、1914年8月に第一次世界大戦が勃発し、大阪朝日新聞のブラジル通信員だった香山はサンパウロの状況を記した通信文を送った。黎明期には三浦鑿、鈴木南樹らも日本の新聞にブラジル事情を送り、原稿料をえていた。
 邦字紙とは関係ないが、中には〝世界徒歩旅行家〟の肩書きを自称し、1900年代初めに北米、ハワイ、欧州、中南米を30年かけて旅行し、南米の事情を日本の新聞に寄稿した岡田芳太郎のような存在もあった。笠戸丸以前の1906年にブラジルに入国、南米各地を歩き、1933年に聖州レジストロで客死している。彼もまたコスモポリタンの一人であった。
 1932年から『聖州新報』記者のちに編集長となった藤井卓治は、1937年から同盟通信(現・共同通信)のサンパウロ通信員になっている。1926年から『聖州新報』のリオ通信員をした椎野豊は、1936年から同盟通信ブラジル通信員をした。(敬称略、つづく、深沢正雪記者)

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