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《記者コラム》最高裁判事が替わる意味

ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏(Instagram)

ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏(Instagram)

 米国で先週、最高裁女性判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が亡くなったことが、国を挙げての大騒ぎとなった。彼女が亡くなった夜には、87歳の高齢で亡くなったにもかかわらず、主に若者たちが最高裁前まで足を運び、彼らの間の呼び名にもなっている「RBG」の死を追悼した。そして「RBGの死はトランプ氏の大統領再選よりも危険だ」とまで言っている。
 日本だと、「最高裁判事」と言われてもピンと来ない人がほとんどだ。一般に全く知名度がなく、いつ誰が就任しているのかさえ知られていないためだ。しかも定年が70歳と早く、判事の就任の際の年齢もほとんどが60代に入ってからの人が多く任期が短い。さらに政治的な判断などもほとんどしないから話題になることも少ない。
 そこへいくと米国の最高裁の事情は大きく違う。最高裁判事は終身職で「定年」という概念が存在しない。従って、生きている限りずっと務められることになる。それが故に人気も極めて長い。RBG自身も25年以上、最高裁に在籍した。その長さたるや、二期務めた大統領(8年)の実に3倍以上だ。
 その任期の長さに加えて、議会や大統領が法律的に正しくないと判断すれば堂々と違憲の判断も下す。そこで大胆な判断をすれば知名度も上がる。
 RBGはそうした司法社会の中で有名になっていた。彼女の判断は80歳を超えた人とは思えないほど保守色が薄く、むしろ保守派の判事が多い同国最高裁で常に弱者側の立場に立った判断をしてきた。そんな姿勢が若者に受けて、ドキュメンタリー映画や伝記映画が作られて人気が盛り上がり、その絶頂のうちに亡くなった。
 だからこそ、彼女の不在を恐れている人が多い。RBGに代わる判事を選ぶのはトランプ大統領。世界の極右大統領のリーダーだ。トランプ氏はもう早速、後任に「中絶違法」を主張する女性判事を本命にしているとか。「そんな保守的な人が、大統領が何人変わろうが、数10年も国の大事な決定に関わっていくとしたら」。そう考えると、怖いものでもある。
 そして伯国でも最高裁がひとつの転機を迎える。2人の高齢判事が向こう1年で定年を迎えるためだ。ひとりがセウソ・デ・メロ判事で今年の11月、もうひとりがマルコ・アウレ―リオ・メロ判事で来年7月の退任となる。
 伯国の場合、終身職ではないが定年が75歳と長く、判事就任年齢も若い場合が多いため、セウソ氏は31年、アウレ―リオ氏は30年の任期で終えることとなる。
 その2人がRBGのような人気を誇ったなどという話はないが、2人共にボルソナロ大統領への物言いや判断は厳しいことで知られていた。その2人の後任をボルソナロ氏が選出することになる。
 これまで最高裁に味方がいなかったことで知られているボルソナロ氏だが、来るべき判事に関して「とびっきりの福音派を選びたい」「まずは新判事とはビールでも一杯やりたい」などと、早速、自分の仲間を作る気分でいる。「一体、どんな判事が就くのやら。長い間、国民の大多数に不人気な判断をするような人でなければ良いが」と願う気持ちは、RBGの後任待ちをする米国民の気持ちとあまり変わらない。(陽)

 

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