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「ブラジルには人種差別はない」?

異なった肌の色の人が乗るバスはブラジルの縮図の一つ(Divulgacao)

異なった肌の色の人が乗るバスはブラジルの縮図の一つ(Divulgacao)

 19日夜、リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレで起きた黒人のジョアン・アルベルト(通称ベト)・フレイタス氏死亡事件は、国内外に衝撃を与えたが、正副大統領は揃って「ブラジルには人種差別はない」とのたもうた。
 米国は「人種のサラダボウル」(多種共存状態)と言われることが多いが、ブラジルはまさしく「人種のるつぼ」(混血状態)であり、当地の人種の多様性や混交の歴史は、風土や文化を豊かにしている。
 だが、「多様性が豊かな文化を生んだ」=「国民が真の意味で一体化し、人種差別がない」ではないし、「黒人の友人がいる」=「全ての黒人を尊敬している」でもない。
 征服者として入って来た白人と追いやられた先住民、奴隷として連れてこられ、自由獲得後も底辺から這い上がる事を余儀なくされた黒人という図式はブラジルだけのものではない。肌の色や性別、学歴などが格差や偏見、差別を生んでいる事は多くの人が感じている。
 サンパウロ市での調査では、黒人への人種差別は10年間で増えた又は同水準との答えが83%に達し、昨年の70%から急増しているのに、ボルソナロ大統領は、「人種差別はない」「国外から入って来た考え」と語ったのだ。
 18年選挙では大衆の心を掴んだが、現在は庶民との感覚の差や独りよがりな言動が目立ち、少なくとも一部の国民の心が離れ始めた。その事は、統一地方選で推薦候補の大半が落選した事にも表れたが、本人は過小評価している。
 国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏は24日、ジョアン・ベト氏の件を「嘆かわしい事件」とし、「同件は極端な例だが、ブラジルでは黒人への暴力は頻発している」との見解を表明。人権系非政府団体も、「構造的な人種差別は労働市場への黒人参入を妨げる最大の障壁」と語っている。
 国内外の声や常識を無視する姿勢はバイデン米国次期大統領への祝辞を述べていない事でも明らかだが、船頭が波や海図を読み損なえば難破事故も起きかねない。(み)

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