茶道裏千家ブラジルセンター(林宗一代表)は「初点・初釜(はつだて・はつがま)新年会」を17日11時から、ブラジル日本文化福祉協会の貴賓室で開催した。今年はコロナ禍のため会員限定で60人ほどが参加した。貴賓室の舞台上には腰掛と抹茶や茶菓子を置くテーブルが設置され、椅子に座る形式の立礼式(りゅうれいしき)式で数回にわけて、しめやかに茶の提供が行われた。入れ替わりの際にはテーブルのアルコール消毒が行われた。
「何だか食べるのが勿体無いですね」。そんな声が、干菓子をみた茶席の参加者から上がった。干菓子は煎餅と落雁で、一センチほどの梅型の落雁には、よく目を凝らすと、今年の干支の牛が浮き彫りで施されている。
マナウスから取り寄せたクイアの茶器で提供し、飲んだ後の器はお土産に持ち帰れるようになっている。同センターの林宗一会長は「コロナ禍の感染拡大防止策のひとつとして茶器を持って帰れるようにしました」と趣旨を説明する。
同会のために、抹茶を入れる容器「棗」はアフガニスタンから取り寄せられ、南米にはブラジルにしかないという「和親棚」を使用している。
「和親棚」は茶を点てる際に使う道具を置くもの。現家元の16代目千宗室(斎号・坐忘斎)宗匠が考案した、洋間にも合う現代の生活様式にあわせて考案した立礼式向けの棚だ。
林代表は日本語とポルトガル語を交互に交え挨拶、「お茶会の楽しみの一つは共に集い無事を確認すること」と挙げ、コロナ禍で集まりづらい時勢だが「皆様の元気な姿にお会いすることでき幸甚です」と開催の喜びを表した。
エリソン・トンプソン・デ・リマ副理事長も日本語で、干支にちなんで「牛歩は遅くとも着実な歩みというように堅実さと誠実さの象徴です」と説明し、「新年が持つ不思議なエネルギーによって、喜びが溢れる事を願っています」と新年を祝った。
抹茶席の後は許状(きょじょう)引継ぎ式が行われ、壇上に16人が登壇し、許状が渡された。茶道にも級が設けられているが、許状を受けると次の段階の稽古を受ける事が可能となる。
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当日の参加者の中には、駐在員の子ども向けスポーツ教室「アレグリア・スポーツ・アカデミー」で講師をしている古庄亨さんも許状引継ぎ式のため参加。初の日本人ゴールキーパーとしてバスコ・ダ・ガマ(リオ)にも所属していた経歴を持つ古庄さんは、一昨年から稽古をはじめたという。以前はスポーツ教室と並行してカフェを経営しており、京都出身というのもあって茶道について聞かれる機会が多く「日本人として説明できないと」と思い至り参加したのが切っ掛けだという。