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《ブラジル》看護師のハグで恐怖心消える=ダウン症の感染者に転院の道も

看護師のノゲイラ氏と酸素吸入を受けるロウレイロ氏(26日付G1サイトの記事の一部)

 州都マナウス中心に新型コロナの感染拡大が著しいアマゾナス州で、ダウン症のコロナ感染症患者が看護師のハグによって恐怖心を取り去られ、酸素吸入などの措置を受ける事ができた上、マナウス市の病院の集中治療室への道も開かれるという出来事が起きた。
 この患者は、マナウス市から134キロのカアピランガ市在住のエメルソン・ジュニオル・ロウレイロ氏(30)だ。ロウレイロ氏は新型コロナに感染後、酸素吸入が必要な状態となって病院に運ばれたが、ダウン症で異なった環境に置かれる事が苦手な同氏は、酸素吸入用のマスクをつけるのを嫌がり、家族の手を焼かせていた。
 だが、同伴していた姉のエリアネ氏が席を外そうとした時、看護師のライムンド・ノゲイラ氏が「僕に任せて。僕が世話をするから」と言ってロウレイロ氏に近づき、彼をそっと抱きしめた。
 ハグによって恐怖心が取り去られたロウレイロ氏が落ち着きを取り戻したため、ノゲイラ氏は彼に酸素吸入を施す事ができた。また、それによって呼吸が楽になったロウレイロ氏も、酸素吸入は治療の一部だという事を理解できたという。
 この出来事が起きたのは23日で、同じ病室にいたコロナ感染症患者の一人が、ノゲイラ氏がロウレイロ氏に寄り添って酸素吸入を施している写真を撮り、ソーシャルネットワークサービスに掲載してもよいかと家族に訊ねた。
 ロウレイロ氏の家族はこの写真がどれほど大きな反響を呼ぶかも想像せず、看護師への顕彰の意味で掲載を認めたが、この写真は多くの人の心を動かし、様々な形の支援の手が差し伸べられた。その一つは、内陸部では望めない集中治療室での治療だ。

 エリアネ氏によると、ロウレイロ氏の家族は彼も含む7人が新型コロナに感染。70歳の母親は自宅療養中だ。だが、ロウレイロ氏の場合はダウン症ゆえの脆弱さが加わり、入院しなければ死ぬと宣言された。同氏の感染が判明してからの3週間、一家は様々な困難を覚えてきたという。
 だが、たった1枚の写真が掲載された事で状況は一変し、金銭面での援助だけでなく、マナウス市の病院の集中治療室に転院する道も開かれた。
 ノゲイラ氏は8カ月間もコロナ感染症患者に対峙しており、患者に密着してハグする事が感染の危険を伴う事を熟知していたが、ロウレイロ氏がダウン症という特別な状況にある事を考えると、それ以外の方法は考えつかなかったという。
 ロウレイロ氏と家族は25日、モーターボートでマナカプル市に到着。ロウレイロ氏は同市の病院で人工呼吸器を装着された後、マナウス市のデルフィナ・アジスニ病院に移送された。
 エリアネ氏によると、末っ子で家族の宝だというロウレイロ氏の世話ができるのは同氏ともう一人の姉妹だけだったが、カアピランガ市は、病院のスタッフをはじめ、必要な援助を全て提供してくれたという。
 アマゾナス州では医療崩壊も起きているが、ロウレイロ氏の家族は、同氏が回復して帰ってくるのを心待ちにしている。(26日付G1サイトより)

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