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安慶名栄子著『篤成』(17)

 大きくなったら必ず父を幸せにしようと、その時に私の夢が生まれました。
 父のおかげで私たちは健全で、遊ぶのに一日では足りないくらいでした。縄跳びは、私たち3人には最適でした。
 二人が縄を振り、一人が飛ぶ。その一人が間違うと交換したりして、一日中でも楽しく遊ぶのでした。
 でも父は、もはやいつもの父ではなかった。
 あの手紙以来、父は悲しみに明け暮れ、長い間そんな状態が続きました。
 再び外界が父を悲惨の極みへと引きずり込んでいくのでした。人生の激流が再び父の夢を飲み込んでしまうのでした。いつか、必ずブラジル生まれの4人の子供を連れて沖縄へ戻り、沖縄に残っていた2人の子供と一緒に暮らすんだ。故郷でみんな一緒になるんだ。これが父の最大の夢だったのです。
 だが、運命は再度父の願望を粉々にしてしまったのです。沖縄の子供たちとの再会は完全に不可能になってしまいました。
 南米の大地ブラジルは物質的に多くの賜物を提供してくれた反面、冷酷な、苦い試練の果実をも噛み締めさせたのです。疑う余地もなく、そして文字通りの肥沃な土地。私たちがその大地を引き裂き、種を植えると同じように、私たちの魂、父の魂が運命の鉄の犂(すき)で引き裂かれてしまいました。
 今はただ神様がその引き裂かれた溝に力強い、逞しい種を蒔き、明るい将来、愛情たっぷりの果実が実りますように、と願うばかりでした。
 やがて父は、少しずつ元気を取り戻してきました。
 恵まれた大地よ。神に与えられた宝物、4人の子供とその大地に全力を尽くした。
 時が経つとまたもや土地の質が落ち、古谷さんの土地の別の部分をも賃借しました。
 新しい家がまだ完成していなかったので、まだまだ毎日姉妹3人をトラジリオの背中に乗せてもらい、父は歩いて約4キロの畑まで通っていました。よし子姉さんは魚釣りが好きで、ある日釣り竿を持っていきました。
 夕方家へ帰るときに皆トラジリオの背中に乗り、彼が歩き出した途端、よし子の竿がコツンとトラジリオのお尻に当ってしまい、トラジリオはびっくりして突っ走ってしまいました。3人とも、一人また一人と馬の上から落っこちてしまいましたが、けがはありませんでした。そしておとなしいトラジリオもすぐに止まり、私たちもまた彼の背中に乗り、旅を続けたのでした。
 さて、このように三人とも馬の背中に乗って、夜の帰り道を毎日同じように、もうしばらく続きました。そしてようやく新しい家が出来上がりました。
 新しいお家は広く、中でホップスコッチまでできるような広さでした。そこは私たちの憩いの場所になるすべてが整っていました。
 でも、ガスパール家の人たちがやっぱり恋しかったのです。
 そこである日突然、ガスパール氏が訪れました。私たちが彼の土地から引っ越して以来、初めて会うのでしたが、大きな白い袋を肩に乗せていました。その袋の中には新築祝いのしるしとして牡牛一頭分のお肉が入っていました。

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