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群馬県大泉町=「最後の悪あがきを見せたい」=ブラジル人学校経営の高野さん=昨年には文化庁長官表彰も

取材に応じた高野さん

取材に応じた高野さん

 【群馬県発=國分雪月記者】群馬県邑楽郡大泉町のブラジル人学校「日伯学園」の設立者であり、NPO理事長を務めている高野祥子さん(75)が昨年12月、文化庁長官表彰を受けていた。同学園で行ってきた在日ブラジル人への教育が国際的な活動に貢献したと評価された。

 高野さんは中国天津生まれ。戦後、日本へ帰国するも、1958年に一家でブラジル移住。現地で学校に通い、ポ語を習得。結婚して自身の子弟教育を通じ、日本学校などへの見識を広めた。
 1989年に日本での旅行を目的に訪日した時、デカセギが日本語の問題に苦しんでいることを知って日本語学校を立ち上げることを決意し、1991年に「大泉日伯センター」として、大泉町初の日本語学校を立ち上げた。96年には語学教室を発展させて「日伯学園」を開園した。
 つまり、大泉日伯センター時代から数えて今年で設立30年。在日ブラジル人子弟にポルトガル語の教育をはじめてから25年となる。同学園は2003年にブラジル教育省認可を受け、本国と同等のカリキュラムを実践している。現在は2歳から高校生までの100人弱が在籍しており、大学進学後に大手広告代理店へ就職した卒業生もいるという。2008年には国際交流基金の「地球市民賞」も受賞した。
 日ポ両語に特化した教育のほか、精力的に様々な活動を行っている。2000年からは日本の高等学校に通う日系ブラジル人の生徒が日本語を教える教室を開き、「麻薬撲滅」をテーマに2002年からはじめた「ブラジル青少年フェスティバル」は、在日ブラジル人子弟の伯人アイデンティティ確立と日ブラジル間の文化交流を目的として毎年開催されている。
 県内四つのブラジル人学校の生徒による歌や踊りの発表や、日本の大学に通う日系ブラジル人の先輩や起業家などを招き講演を行っている。そのほかにも、日本の公立学校に通う日系ブラジル人子弟向けにポルトガル語の授業や公立学校で出された宿題を見る教室も行っていた。
 「レベルがバラバラな子供達への教育を諦めてしまう先生も多く、私の体調不良もあり中止してしまったが、日本の大学教授から高野さんはいつも一歩前を進んでいると言われた」と語った。
 近隣の大学生が日本語の授業のボランティアや外国人集住地域の視察のために訪問するなど、日本人側にとっても「現場」を体験する重要な場所になっている。
 今後の課題としては「各種学校」の認可が下りていないことを挙げ、「学校として認めていられないため、自治体などからの支援を受けることができない」と明かした。学園に訪問した文化庁から県の学事法制課への後押しもあったが、いまだに達成されていない。
 今回の受賞に関し、群馬県議会議員や太田市長、新宿日本語学校の江副隆秀校長などから祝いの連絡を受けたという。「最後の悪あがきを見せたいと思います」と笑顔を見せた。(日伯学園住所=群馬県邑楽郡邑楽町篠塚3272、電話080・3715・1451)

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