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《サンパウロ市》シネマテッカでまた火災=連邦が放置、貴重な資料焼失

シネマテッカの火災現場(PMESP)

 29日、サンパウロ市西部にある連邦政府の映像資料保管施設「シネマテッカ」で火災が発生した。出火場所は映画関連の貴重な資料4トンが保管されていた保管庫で、南米最大級ともいわれる映画資料が焼失または破損した恐れがある。同施設は近年、管理上の問題がたびたび指摘されていた。29、30日付現地紙、サイトが報じている。
 映画の保管庫があるのはサンパウロ市西部ヴィラ・レオポルジーナで、火災発生は29日18時頃だ。
 火の手が上ったのは外部業者がメインテナンスの作業をしていたときで、映画の保存庫がある2階のエアコンから出火したという。消防隊がかけつけて消火にあたり、19時45分には鎮火したが、火の手は一時、6メートルに及び、建物の屋根が焼け落ちたという。消防によると、運営団体の職員らは南部ヴィラ・クレメンチーノにある本部におり、負傷者などは出なかった。今回の火災で焼失した映像資料の中には、ブラジルを代表する映画監督で、俳優、作家でもあったグラウベル・ロッシャらの作品や、報道関係の写真やビデオ、既に廃業した映画会社の作品、映画や写真の旧式の機材、ブラジルの映画史に関する文献資料などが含まれていた。
 シネマテッカは1946年に設立された、ブラジルの貴重な映像資料を管理する団体で、フィルムにして25万巻にも及ぶ映像資料の多さは南米最大級だった。

 シネマテッカが火災などの被害にあうのはこれがはじめてではない。2016年2月にはヴィラ・クレメンチーノの資料館で火災が発生し、1940年代の作品約500本が焼失している。また、今回火災にあった建物は1957年~2016年に5回、火災が起きており、2020年2月に起きた洪水では、11万枚余りのDVDが損なわれた。
 また、今回の火災現場となったヴィラ・レオポルジーナの保管庫は昨年から放置され、問題となっていた。シネマテッカの管理責任者は連邦政府で、2019年まではロケット・ピント通信教育協会(ACERP―TVE)という団体に管理・運営を委託していたが、その契約は2019年12月31日で切れており、その後は、運営に関する入札なども行われていなかった。
 それ以降の運営は有志の団体が給与などの支払いもない状態で続けており、同団体の職員や研究者、映画監督らは1年以上、火災が起きる可能性を案じ、対策の必要を訴えていた。
2020年からは連邦検察庁もシネマテッカの放置を問題視しはじめており、今月20日には、火災が起きる可能性を指摘していた。
 この火災を多くの映画人が悲しんでいる。ブラジルを代表する映画監督のクレベール・メンドンサ・フィーリョも、審査員として参加した今年のカンヌ映画祭の記者会見でシネマテッカの危機に警鐘を鳴らしていた。

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 南米最大規模の映画資料を誇るサンパウロ市のシネマテッカの火災は国内の映画、文化関係者に衝撃と悲しみを与えているが、ここ数年、ブラジルを代表する文化施設が次々と火災に見舞われている点は見逃せない。2015年12月にはサンパウロ市のポルトガル語博物館、2018年9月にはリオの国立博物館で火災が発生。歴史的な保存価値の極めて高い文化財が失われてきていた。今回の火災でも問題にされたように、連邦政府の管理の杜撰さが指摘されることが少ないのも気になるところ。連邦政府のマリオ・フリアス文化局長は現在ローマ滞在中。「愛国者」として知られるフリアス氏がブラジル文化の喪失にどう対応するか気になるところ。

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★2021年7月14日《サンパウロ市》ポルトガル語博物館が再開=火災被害から5年半を経て

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