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会長候補演説=4時間半、熱気に包まれ=満場2百人が詰め掛ける

4月12日(火)

 「私に清き一票をお願いします―――」。サンパウロ新聞、ニッケイ新聞共催の文協会長選挙の立候補者による「立会い演説会」が九日午後一時から開催された。候補者の声を聞こうと詰め掛けたのは一世を中心とした約二百人。異例の満場となった文協ビル小講堂は、熱気に包まれ、コロニア巷間を賑わせている文協初の直接投票選挙への関心の深さを伺わせた。
 壇上には上原幸啓、下本八郎、谷広海の三候補。サンパウロ新聞社の鈴木雅夫、本紙の深沢正雪両編集長が司会を務めた。
 立会い演説会では、各候補者に所信表明のための立候補演説が二十分与えられた。主催者側が文協と百周年記念事業、それぞれが抱える問題を三つずつ挙げ、各候補に回答してもらうスタイルをとった。
 開始前に会場に配られた質問用紙に対しては、五十人以上が用紙を提出。重複しているものや注目度が高いものについて、司会者側から質問がなされた。 
 ◎日伯学園問題をどう考えるか
 「文協内にある日伯学園検討委員会で副会長を務めており、報告書もすでに提出したが、祭典協会には取り上げられなかった。日本語センターでも同様の委員会を作っているが、コロニアに教育なくして日本人なしと思っている。セカセギ子弟の問題も重要。教育関係には日本政府からの援助を受けやすい。百周年ではどうか分からないが、教育の灯は消さないように努力していきたい」と谷候補。
 下本候補は橋本元総理が来伯した際、日伯学園問題に興味を持った経緯を話し、「四百の学校が傘下にある日本語センターが取り扱う問題だろう」とその考えを述べた。
 自身が長年、教育に携わってきた上原候補は、「賛成だが、どう経営していくのかが問題。専門家と検討すべきだろう。いい教師陣とメインテナンスが大事。レベルの低い学生を出しては意味がない」とした。
◎地方文協との連携方法を具体的に。
 「文協が長年頭を痛めている問題だ。個人としてはUNENのような連合会ではなく、別の大きな団体が必要だと思う」(下本)
 「多くの団体をまとめるのは難しいが、現在出来つつある文協ネットで地方文協の情報が分かる。インターネットで日系人同士の交流ができると確信している」(上原)
 「上原氏と似ているが、踊り、民謡、短歌など様々な催しの日付や説明をHPなどで知らせることが考えられる。共に目的を達成できるような仕事を始めることもいいだろう」(谷)
◎UNENをどうするか。 「いらない」(下本)
 「考えとしてはいい。今のところ睡眠状態にあるが、話し合うべき問題だ」(上原)
 「やめた方がいい。費用もかかるし、無理。日本側は文協を日系団体の代表だと思っている」(谷)
 【上原候補への質問】
◎何故、移民の日にサンパウロで行事を行えないのか
 「〇八年は日伯政府により、日伯友好年と決められており、これは政府間の問題だ」
【谷候補への質問】
◎何百人という新会員を増やしたことについて、モラルの問題を指摘されているが―。
「こういう質問がくるだろうと思っていた。そういう見方は新会員に失礼。様々な団体に千六百人の非会員に手紙を送り、パンフレットを四百部配布するといった選挙活動を行ってきた。決起集会でも八十六人が文協改革のため、入会してくれた。天に恥じることはないと思っている」
【三候補への質問】 
 当落に関係なく、文協のためにお互い助け合っていくのか。
 「当選後、組閣をし直すという意見もあるが、それなら何のための選挙なのかということになる。しかし、メンバーの入れ替えは必要になってくるだろう」(上原)
 「今のシャッパの半数は辞めてもらう話になっており、当選後に他シャッパに入っている二世にも入ってもらい再組閣する考えだ」(谷)
 「上原氏と十時間ほど話したが、結局、こういう形になった。今は選挙しかない」(下本)
【深沢編集長から、上原候補への質問】
 文協に一世の声が反映されてないことがいわれるが。
 「そういう考えはない。シャッパに戦後移民も入っている。反対する人がいるのは当然。(世代間の)パイプが良くないのなら、直すだけのこと」
【深沢編集長から、谷候補への質問】
二世たちとどういう形で折り合いをつけていくのか。
 「当選後は落ちたグループのメンバーに当たって、若い人中心の特別委員会を作り、会合を続けていきたい。定款改正以降は、現シャッパから半数は〃サヨナラ〃と考えている」
 鈴木編集長の「レオポルジーナ案に反対の人は挙手をお願いしたい」呼びかけにはほぼ全員が手を挙げ、「絶対反対!」との声もあった。
 谷候補が「どういう会社に世論調査を依頼し、予算はいくらなのか」と上原候補に質問。総会で話し合う必要を繰り返す上原候補を下本候補が制し、「四時間以上もこの暑いなか、座っている皆のほとんどが手を挙げた。これ以上の調査はない!」との発言に会場は沸き上がった。
 開始時には照りつけていた日差しがかげり始めた五時過ぎ、四時間半を越えた「立会い演説会」に耳を傾け続けた来場者に三候補者からあいさつがあった。
 「委任状でも、選挙に参加してほしい。それがコロニアのためになります。清き一票を下本にお願いします!」
 「ここに来るまで見世物になるのでは、と心配していた」と上原候補。「お互い泥をかけることなく、真剣な議論ができたことを嬉しく思う」と安堵した表情で頭を下げた。
「今回の出馬は天の使命」と谷候補。「コロニアのために一生懸命働く。それ以外ない。次の世代にバトンタッチする最後の使命を受けた」と最後のメッセージを送った。

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