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知られざる鳥居大国ブラジル=全伯に68基以上が判明=日系のシンボルとして=昨年一気に35基増=過半数を聖州占める

 ブラジルは日本以外で最多の鳥居大国――。本紙では三月十日付けで少なくとも四十六基の鳥居が全伯にあることを報じたが、その後の読者からの情報提供や独自調査により、さらに二十基以上が判明し、全部で六十八基もあることが分かった。過半数を占める聖州の四十基を筆頭に、パラナ州に十三基、六州一直轄区(聖州、パラナ州、南麻州、ブラジリア、ミナス州、サンタカタリーナ州、アマゾナス州)に散らばっており、日系人集住地区には欠かせないシンボルとなりつつある。中でも昨年の百周年を記念してイナウグラソンされたものは、なんと三十五基を数え、一気に倍加する勢いだったことが分かった。

写真(左から)=パラナ州ローランジャ市にある移民センターの鳥居。移民70周年を記念して出来た、聖州以外では唯一のもの/昨年、纐纈俊夫汎ソロ連合会長らのリーダーシップのもと、聖州プレジデンテ・プルデンテの桜公園が市役所によって改修され、造園師の水川昇さんが設計して日本庭園にになった。そこにたかさ約4メートルの鳥居が建てられた/ソロカバ市の笠戸丸公園(写真提供=Iharabras S.A Industrias Quimicas)

全伯に散らばる鳥居の一覧表

サンパウロ州

市町村名 設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
サンパウロ市 リベルダーデ区 1 1974年
サンパウロ市 南米大神宮(クレメンチノ区) (2009年予定)
スザノ市 スザノ石鎚神社遥拝所 1
スザノ市 文協入り口 1 2008年 1
リベイロン・ピーレス市 市役所前 2 2009年6月 1
アルジャー市 ニッポン・カントリークラブ 1 1950年頃
アルジャー市 ブラジル大神宮 1
バウルー市 パウリスタ神社 2 1973年
ソロカバ市 プラッサ・デ・カサトマル 1 2008年6月 1
カッポン・ボニート市 1 2008年11月 1
パラグアスー・パウリスタ市 1
カンピーナス市 文協横の野口英世公園 1 2008年6月 1
インダイアツーバ市 1
レジストロ市 BR116からKKKKへ向かうリベイラ河沿いの遊歩道公園 1 1993年頃
イタペチニンガ市 日本移民広場 1 2008年6月21日 1
アラサツーバ市 市内ロータリー広場 1 2008年6月29日 1
サンジョゼ・ドス・カンポス市 小島隆治広場 2 2008年6月28日 1
サンジョゼ・ドス・カンポス市 アベニーダ・アフォンソ・ペーナの真ん中ごろの大きなプラッサ 1 1998年
カンポス・ド・ジョルドン市 セントロのプラッサ 1 2008年 1
カサパーバ市 (仮設)
ピニャール移住地 移住地への入り口 1 2008年6月22日 1
モジ・ダス・クルーゼス 百周年公園 1 2008年6月28日 1
モジ・ダス・クルーゼス ズットラ街道 1 2008年4月25日 1
モジ・ダス・クルーゼス モジ文協カンペストレ内
リンス市 市中心部 1 2008年9月20日 1
ピラール・ド・スル市 文協入り口 1 2008年8月30日 1
プロミッソン市 上塚周平公園 1 2008年12月 1
サントアンドレー市 高崎公園 1 2001年
プレジデンテ・プルデンテ市 桜公園 1 2008年2月 1
ウバツーバ市 1 1
ボツカツ市 セントロにある日伯広場 3 1993年ごろ
スマレー市 文協会館入り口 1 2008年頃
パウメイラ・オエステ市 広場 1 1992年
ツッパン市 百周年庭園 3 2008年 3
ジュンケイロポリス市 百周年公園 1 2008年6月 1
ボツポランガ市 サンベント公園 1 2008年6月18日 1
サンパウロ州小計 40

パラナ州

市町村名 設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
ロンドリーナ市 中川トミ公園 4 2008年6月22日 4
ローランジア市 ローランジャ移民センター(パラナ開拓神社) 1
アサイ市 市入り口 1 2004年
アサイ市 池田公園 3
アサイ市 市中心部 1 2008年9月19日 1
パラナグア市 市内日本庭園 2 2007年7月1日 1
パルマス市 1 2008年6月 1
マリンガ市 日本公園 (2009年予定)
パラナ州小計 13

南麻州

市町村名 設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
ドウラードス市 片山利宣通り 1 2008年6月15日 1
カンポ・グランデ市 フェイラの入り口 1
カンポ・グランデ市 知花アルマンド総合運動場の入口 1

ブラジリアDF

設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
西本願寺前の日本庭園 2 2008年6月頃 2
日系DFの笠戸丸日本庭園 1 2008年12月

サンタカタリーナ州

市町村名 設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
フレイ・ロジェリオ市 ラモス移住地にある長崎平和の鐘公園 1
イタジャイー市 袖ヶ浦通り 1 2003年9月1日

アマゾナス州

市町村名 設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
マナウス市 エドゥアルド・ゴメス・マナウス国際空港入口 1 2008年6月1日 1

ミナス州

市町村名 設置場所 鳥居の数 開所式 百周年で建立した数
ベロ・オリゾンテ市 市内動植物公園内の日本庭園 1 2008年6月16日 1
サンロレンソ市 日本庭園 5
全伯総計 68 百周年で建立した数 35

 

 これだけの鳥居が全伯にあることは、読者の協力により初めて分かった。
 特徴的なのは、古いものは神社などに併設されているが、大半を占めるのは二〇〇〇年以降に建設された新しい鳥居で、まるで知られざる建設ラッシュだったようだ。
 一九五〇年頃に聖州サントアンドレー市の日本荘に建築され、後に日本カントリークラブに移築されたものが最古。バウルー市のパウリスタ神社が鳥居と共に一九七三年に建立されるなど、七〇年代には基本的に社(やしろ)、もしくは祠(ほこら)と一緒に建設され、一様に宗教色があった。そしてほぼ聖州内に限られていた。
 今のように広がるきっかけとなったのは、七四年に建設された東洋街のガルボン・ブエノ街にある鳥居だ。「社なき鳥居」というスタイルが、その後の「日系のシンボル」としてのイメージを作ったようだ。
 このイメージをブラジル社会に広く一般化したのは、伯国の大手メディアの働きだろう。東洋街で行われる日本文化イベント、聖市仙台七夕祭りや東洋祭り、餅つきなどを取材するたびに鳥居を写し、「日系のシンボル」であると解釈して報道したことだ。
 従来、コロニアの中では「社のない鳥居」に関しては議論が分かれていた。しかし、九〇年代から日系団体幹部は二世層に徐々に入れ替わり、伯国の報道に接して、そのイメージを素直に受け取っていた彼らは、躊躇せずにそれを進めるようになったようだ。
 聖州以外で先鞭を切ったのは、北パラナのローランジアにある移民センター入口の鳥居だ。移民七十年祭(一九七八年)を記念して建設された。
 設置場所としては文協の入り口、日本庭園や移民広場の中に建てられている。
 二〇〇〇年以降、市役所などが日本移民顕彰の一環として、費用を負担して建設しているものが急増し、それに伴って聖州以外の地域にも一気に広がっている。
 さらに今年中に完成が予想されているものとして、聖市の南米大神宮や今年八十周年を迎えるアマゾンのトメアスー移住地もあり、まだまだ増えることは間違いない。
 なお、ここで紹介したものは、全て誰でも出入りできる場所に常設された鳥居のみ。自宅の庭などの私有地や商業施設にあるものは入っていない。もし、その種のものや可動式の鳥居を加えれば八十は下らないだろう。

 

百周年で爆発的に=隠れた建設ラッシュ

 特に昨年の百周年だけで三十五基がイナウグラソンされているが、虚子句大会を市共催で行うなど日本文化関連に理解の深いリベイロン・ピーレス市では市役所前に公費で建設するなど、圧倒的多数が市役所などの負担で建てられている。
 モジでは、安部順二市長(当時)が百周年公園のシンボルの一つとして、笠戸丸の形をした建物とともに作ったのみならず、ヅットラ街道を跨いで、市の入り口にも建立したことは記憶に新しい。
 その他、プロミッソン市の上塚周平公園、リンス市、アラサツーバ市などのノロエステも、奥ソロのプレジデンテ・プルデンテの桜公園なども市役所が百周年を顕彰して建設した。
 また、南麻州ドウラードスの片山利宣通り、ブラジリア連邦直轄区の笠戸丸日本庭園、ミナス州の日本庭園など、聖州で作られたスタイルが爆発的に他州に広がったことは特筆に値する。
 パラナ州のパラナグアやサンタカタリーナ州イタジャイなども日本との姉妹都市提携を記念して、百周年に作った。このように鳥居は、日本庭園や広場の中にシンボルとして建てることが多く、公園全体の建築費用などを考えると、かなりの公費が注ぎ込まれている。
 さらに、このような公共の場所に鳥居が建てられ、一般ブラジル人が身近な存在と感じて憩うことで、日本へのイメージがさらに親しみのあるものになるに違いない。
 変わったところでは、昨年六月にイナウグラソンされたマナウス国際空港入口の鳥居があげられる。これは地元のアマゾナス日系商工会議所が建立し、今年から同地の憩いの園(老人ホーム)にある慰霊碑前に移設されるという。
 これが可能になったのは、地元市民と日系団体が良好な関係を保っているからに他ならない。準二世や二世が日系団体を支えるようになった成果の一つといえそうだ。

ジュンケイロポリス=市役所が作った鳥居=百周年広場に堂々と

 南麻州にほど近いパウリスタ線の奥地、聖州ジュンケイロポリス市のバスターミナル前にも昨年六月、市役所が百周年広場を建設した。
 元々あった広場を、百周年を記念して日本庭園に改修したもの。六十メートル四方ある公園には、高さ三・五メートル、幅四メートルの鳥居のほかに、太鼓橋も建設され、地元のジュンケイロポリス文協がヒマラヤ桜の苗六十本を購入して植えた。
 同文協の片山章(あきら)さんによれば、同団体は創立約六十年になり、会員は百家族を数えるという。「市役所が自主的に作ってくれた。みんな喜びましたよ。それだけ日本人が市に尽くしてきたことが認められたということでしょう。きっとブラジル全体でそうだったんだと思いますよ」と電話の向こうで声を弾ませた。

サンジョゼ=偉容誇る鋼鉄の大鳥居=ハイテク駆使した特別製

 ボツポランガ市広報によれば、市の日本移民百周年記念行事の目玉行事として二〇〇八年六月十八日に現地日系社会の代表者等の参列の元、鳥居の落成式を盛大に行った。
 建築をした市役所は、鳥居は「世界で最も有名な日本のシンボルの一つ」であり、「聖地の入り口にあって悪霊を追い払う門」と認識しており、「新しい観光名所」として期待しているという。
 鳥居建設は、現地日系社会の要請を受けて市役所が行った。建設を担当したエスクアドリアス・マテリカス・バンデイラス社は、地表から三メートル掘り下げてコンクリートで基礎を固め、鳥居の両脇上部に電灯を設置したのが特徴だという。
 建設委員会のフラビオ・リエーバナ委員長は「特別な形で日系社会に敬意を示したかった。それが鳥居建設だ。市中心部にある、市民の憩いの場である公園に、鳥居が建設されることでさらに美観が冴える」と語った。

サンジョゼ=偉容誇る鋼鉄の大鳥居=ハイテク駆使した特別製

 聖州サンジョゼ・ドス・カンポス市に百周年を記念して建設された小島隆治広場の鋼鉄製の大鳥居は、ひときわ目をひくデザインで、高さも十八メートルという偉容を誇る。汎パライーバ地方日系団体連合会の菅野鉄夫会長に、出来るまでの経緯を聞いてみた。
 〇六年にサンジョゼ百周年委員会が発足したときから、市長と相談し、「日本らしい」「海外にほとんどない」などの理由で鳥居を建設することが決まっていたという。
 菅野氏によれば、約一万人の日系人が住んでおり、ITAを卒業してそのままエンブラエルに就職したような近来の若い日系人が多いという。
 子供が悪さをしないような場所で、市が管理しているところが候補地として挙げられ、高級住宅街に隣接した現在の場所が決まった。全部で一万五千平米の土地のうち、約三千平米を小島隆治広場に割り当てた。
 「去年の四月に始まって二カ月半の突貫工事で作りあげたんですよ」。同地の建設委員会は一人十レアル運動を展開した。大人から子供まで十レアルずつ約四千人から集めたという。
 鳥居だけで六十五万レアルを費やした。資金面で足りない分は、エンブラエルやGMなどの地元企業が負担してくれた。
 池を掘るなどの土木工事の人夫は市が手配し、設計は空軍総司令部技術センターが仕事の一部として技師に無償で設計させた。内部は空洞になっており、上部に上って清掃ができる凝った設計になっている。同センターの口利きで鳥居の材料となる鋼鉄も原価で購入できた。
 地元の西本エリオ市議(今年から聖州議)がプロジェクトを市議会に通し、地元挙げての全面的な支援体制を組んだ。
 地元日系人も出来ることを一生懸命にやった。黒松二十本、その他の樹木も多数植えてある。庭師も移住者で、日本の造園業で八年ほど働いて戻った人が、手弁当で手伝った。日系人が作ったコンクリート製灯籠(高さ一メートル弱)も二十基設置され、祠(ほこら)の前にももう一基の鳥居がある。
 菅野さんは「本当にありがたい。日系、非日系関係なく、みんな志で手伝ってくれたおかげで完成しました」と感謝した。

写真=サンジョゼ・ドス・カンポス市の鋼鉄製の大鳥居

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