ホーム | 日系社会ニュース | 小泉元首相、お帰りなさい!=「ブラジルに親近感感じる」=コロニアと〃旧交〃温める=ルーラ大統領と面談も

小泉元首相、お帰りなさい!=「ブラジルに親近感感じる」=コロニアと〃旧交〃温める=ルーラ大統領と面談も

ニッケイ新聞 2010年3月6日付け

 国際公共政策研究センター(CIPPS、田中直毅理事長)ミッションの一員としてブラジル滞在中の小泉純一郎元内閣総理大臣が4日午後、日系団体との懇談会に出席するためサンパウロ市の文協ビルを訪れた。首相時代の2004年9月以来、約5年半ぶりのブラジル訪問。懇談会の席上、小泉元総理は「先人の苦労を永遠に忘れてはならない」と思いを語った。

 CIPPS顧問を務める小泉元総理は先月28日にブラジルへ到着。ルーラ大統領とも面談し、ブラジリア、リオで関係機関などと意見交換した後、サンパウロを訪れた。
 同懇談会は小泉元総理と文協、援協、県連、日伯文化連盟の共催により開催。当日は日系団体の関係者や前回の来伯時に訪れたサンパウロ州グァタパラ移住地の代表、従兄弟でブラジル在住の井料堅治さんなど約100人が訪れた。
 午後4時20分ごろ文協ビルに到着した小泉元総理は、敷地内の日本庭園にある記念碑を訪問。自身が揮毫した「日日新 新天地」の文字が刻まれた碑の前で大部一秋総領事夫妻、飯星ワルテル連邦下議(伯日議員連盟会長)、日系4団体会長とともに記念撮影し、同ビル貴賓室へ向かった。
 拍手で迎える出席者に、おなじみの片手を挙げるあいさつで返礼。約30人の文協婦人コーラスが「アミーゴス」の合唱で元総理を歓迎し、記念の花束が贈られた。
 日系団体を代表して木多喜八郎文協会長が歓迎の辞。元総理の来伯が「ブラジル社会における日系人の存在感、信頼関係をさらに強固に築き上げる原動力になった」と振り返るとともに、首脳合意で日伯交流年と定められた移民百周年の式典が「移住者、子弟の功績を称え、日系の枠を超えてブラジル社会の祭典となった」と感謝の意を表した。
 「6年ぶりに帰ってきました」――。
 「ようこそお帰りになりました」と書かれた横断幕に迎えられ、小泉元総理があいさつに立った。
 5年5カ月の総理在任中、49カ国を訪問したという小泉氏。「その中で最も感動的で印象に残ったのがブラジル、グァタパラの訪問だった」と振り返った。
 中学時代に出場した弁論大会で草稿の指導を受けるなど「一番慕った」親戚の井料さんが在住していることもあり、「親近感を感じていた」というブラジル。「疎遠な時期もあったが、日伯はパートナーとして、両国だけでなく国際社会の様々な問題に対応していく必要がある。現在活発化の機運が盛り上がっていることは喜ばしい限り」と述べ、さらに「約束を守る、安心といった日系社会に対する高い評価は、血のにじむ汗と涙の努力で先人たちが高い信頼を築いたから。先人の苦労は永遠に忘れてはならない」と功績を称えた。
 その後は、上原幸啓百周年協会理事長の発声で乾杯。小泉元総理は5時半ごろまで写真撮影に気さくに応じるなど出席者と懇談した。
 「この日初めて会った」という井料さんによれば、この日の懇談会は当初予定されていなかったそうだ。小泉氏との会食という話もあったが、井料さんが「それならコロニアの人に会ってほしい」と提案、実現したという。「皆さんが会えてよかった」と話す。
 グァタパラから訪れた川上淳文協会長、新田築さん、脇山俊吾さんはこの日にあわせ、小泉元総理から贈られた「感動」と書かれた掛け軸を持参した。「相変わらず明るそうな人」と川上会長。新田さんが「(掛け軸を)宝物にします」と話すと、元総理は「おっ」と片手を挙げて答えたそうだ。
 コーラス部では先週この懇談会の話を聞き、特別に練習して備えたという。式典後、元総理は一人一人と握手していた。「とてもシンパチコな人。皆喜んでいました」とメンバーの坂本益美さん(二世)。花束を渡した野村孝子さん(鹿児島)は「これからも日本のため、日伯交流のためにがんばってほしい」と話していた。

image_print