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コラム 樹海

 「役不足」「確信犯」といった語句の理解度を調べたところ、正しい答えが少なかったそうだ。文化庁が十六歳以上の人々を対象にしての調べであり、まさかのほどに嘘と偽りはあるまい。語彙の説明は省くけれども、「役不足」の正解は二七%。「確信犯」になると一六%となり、誤った答えの人が五八%近い▼どうしてこんな結果になるのか不明だけれども、基本的には本を読まないからではないか。新聞や雑誌ではよく指摘されるのだが「活字離れ」が生んだ悲喜劇と見てもいいのではないか。見るものと言えばテレビと漫画。高校生ともなれば、よくは理解できなくても、難しい思想的な本や小説の類いに興味を示し読み漁るのが学生の勉強であり仕事のようなものだったのに今は事情が変わったらしい▼書物と接する事の良さは、物の考え方を身につけるに尽きる。古典に目を通せば、昔の視点や物の捕らえ方・見方もわかってくるし、東洋人であっても西欧の哲人が説く話にも理解が届く。いろんな語句や難しい語彙も、こうした広い読書から学び自分のものにする例は真に多い。この調査で判明した事の一つに「流れに棹さす」を「傾向に逆らって、ある事柄の勢いを失わせるような行為をすること」と答えた人が約六四%ほどあったのにも驚く▼朝から晩まで喋ったり読んだりしている言葉なのに、事程左様に難しい。そのくせ「ら抜き」とか、勝手に「明日はやすまさせていただきます」と「さ」を入れての変な日本語も流行なのだから始末の悪さも夥しい。(遯)

03/07/08

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