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日本の国宝をブラジルに=百周年事業第1号か?=〃在野〃有志が立案=在聖総領事館が受諾

7月12日(土)

 二〇〇八年の移民百周年に、サンパウロで日本の国宝・重要文化財展が開催される、とのうわさが実現味を帯びてきた。匿名希望の有志が提出した嘆願書をサンパウロ総領事館(赤阪清隆総領事)が受諾、すでに外務省との間で検討段階に入っている模様だ。開催会場として有力視されるサンパウロ美術館(MASP)との交渉もスムーズに運んでおり、総領事館では「いったん企画が滑り出せば、後は進むだけ。MASPのイニシアチブはありがたい」としている。ただ、経費の全額を日本政府が負担する可能性は少ない見込み。ブラジル側との折半が実現の向けての必要条件となるが、このまま順調に行けば、百周年事業の決定第一号となりそうだ。

  
 「ブラジル国民の記憶に残る貴重な展示にしたい。八万九千点あまりを保管する東京国立博物館の収蔵品を希望する」
 この有志は嘆願書でそう書く。時代は縄文から近代まで、絵画や版画、彫刻だけでなく、屏風、陶器、刀などを含めた総括的な展示内容を視野に入れている。
 念頭にはこれまで欧米で開かれてきた国宝展があるようだ。「一九八六年にパリで開かれた『十二世紀から十七世紀の日本絵画の至宝展』及び、一九八九年に大英博物館で開かれた『日本の美術工芸展』のような優れたものを」と、文面で熱い思いを募らせる。
 総領事館では嘆願書に対し、初めから前向きな姿勢をみせた。有志が「こうした展示を迎えるための設備が整っている」としたサンパウロ州立美術館(PINACOTECA)と、サンパウロ美術館(MASP)を視察。「両方とも申し分のない会場」と認識した。
 ただ、現段階では過去に富士美術館所蔵の国宝展を実施しているサンパウロ美術館が有力だ。同館でも開催希望を表明する方針を固めているものとみられている。
 総領事と文化担当領事はイタリアで、日本の国宝展の開催準備に携わった経験から、「大きな文化事業は五年前から着手しても早くない」(総領事)とみている。それだけに今回、ゆとりあるスタートを切れたことを評価する。
 ただ、記念事業を一本化できないままに時間をやり過ごす文協など日系団体が出遅れ、〃在野〃からの要望がまず動き出した格好となった。
 文化担当領事によると、二〇〇八年は日米修好通商条約締結から百五十年に当たり、「アメリカでも大きな日本文化事業が予想される。これはブラジルにとっても都合がいい」。巡回展となれば、より実現の見通しが立ちやすいという。
 同年はまた、ブラジル・コネクツが日本で大規模なブラジル美術展を企画している。当初来年の開催予定が先送りになった企画で、実現はまず間違いなさそうだ。となれば、引き換えに、日本側がサンパウロでの国宝展にゴーサインを出す可能性が高まるものとみられる。
 さらに、日本移民百周年は、ポルトガル王室がブラジルに移遷して二百年目にも重なり、ポルトガルからの美術展も考えられる。サンパウロ市民の関心を「日本」の方へ向けるためにも、国宝あるいは重要文化財クラスの作品の来伯が望まれるだろう。
 先にイビラプエラ公園のOCAで開かれた中国展は七十三万人以上を動員した。百周年だけに、百万人とは洒落でなくぜひ実現したいところだ。

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