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コラム 樹海

 「出稼ぎ」の言葉が使われ出したのは、東北の青森県などの農民が冬場で仕事がないときに東京の建築現場などに働きに行くのを指して言い始めたものらしい。一九六〇年代初めにはもうあったそうだし、農家にとっても現金収入につながり結構な人気に―。農村人口の都市流入ということのようだが、つまるところは経済的な格差が生んだ悲喜劇にも見える▼ブラジルから日本へ働きに行く人々が増えているのも同じ理屈であり経済的な理由であるのはコロニアの誰でもが知っている。今、日本で働いている日系人は約二十七万人。群馬県や愛知県・静岡県・岐阜と広島県などの工場で仕事をしている人々が多い。単純な労働ながら日本の高給は世界的なものだし、サンパウロよりは遥かに有利なのは間違いない。これら「出稼ぎ人」がブラジルに送金するのは一年で二十億ドルにも超すとも▼こうし現象を「ポロロッカ」と呼ぶ人もいるが、将にブラジルから日本への移民逆流でありアマゾン河へ海から押し寄せる潮の流れとそっくりなのである。これと同じような風潮がアルゼンチンでも顕著だそうだ。治安悪化と不況が続き失業率は二一%を超えて仕事もない▼ブエノスの街でも海外へ雇用を求める市民が激増している。スペイン人気が高く領事館には毎日一五〇〇人が国籍やパスポートを取得したいと列を作っているけれども、それもこれも経済不安がなせる不条理と見ていい。社会的な不安と経済の不振・苦境が「移民を生む」の理論は今も昔も同じだし変わらない。そんな気もする。    (遯)

03/11/06

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